女神と一緒に暮らすのは楽じゃない
あおっぽい
1stステージ 出会い
女神が家にやってきた
それは突然やってきた。
「こんちゃーっすwww女神でーすwwwww」
玄関を開けると、そこにはビールの売り子が立っていた。
野球場で見かけるアレだ。
何でビールの売り子が家に?女神って何を言ってるの?というか、このふざけた口調の女の子は何者なの?
色々な疑問が頭に浮かんで消化しきれなかった俺は、そっと扉を閉じた。
「ちょwwwいきなり閉めるってwwwwおまっwwwww」
「何を無理やり入ろうとしてるんですか。出てってください」
「いやいやいやwww女神だからwwwwマジ神だからwwwww」
女神を自称する彼女は、扉をこじ開けて玄関に入ってきてしまった。何て強引な。
それに、聞いていると彼女の言葉は何故かネットスラングなんだろうなと思わせる。そのしゃべり方がやけに鼻につくけれども、そう認識させるしゃべり方を実際にできるだなんて、少し関心すらしてしまった。
そんなことを考えながら、俺はポケットの中からスマホを取り出した。
「待って待って。通報はやめてください。私の話を聞いて」
あれ?普通の言葉でしゃべっているぞ。
そう思って少し対応に困っていると、いきなり目の前が真っ暗になって叫んでしまった。
「目が。目があああああああああ」
痛い痛い。何をされたんだ。
しばらくしてぼんやりと視界が回復してくると、彼女は口笛を吹きつつ、背負った樽から伸びるホースをぶんぶん振って、その先からビームのように泡を噴出していた。
「滅びの言葉wwwwwww」
嬉しそうに例の言葉を何度も繰り返す彼女を見て、あの泡が目に入ったことを理解した。色々と突っ込みたいことがある。しかし俺はその中でもどうでも良いことを選んでしまった。
「普通はそんなビームみたいに泡が出ないでしょ!」
「うはwwwそこが気になりました?さすがwwwwこれは女神仕様ですwwwww」
そう言いながら彼女はニコニコして顔を近づけてきた。いや近い。凄く近い。
良く見るとめちゃめちゃ可愛い子だ。そう意識してしまったら、ドキドキが止まらなくなった。顔が凄く熱い。赤面してしまっているのが鏡を見なくても分かるくらいだ。
すると、さっきの痛みがまたやってきた。
「目が。目があああああああああ」
また泡ビーム攻撃をくらってしまった。
「あっはっは。また引っかかるんですね。顔が熱そうだったから消火活動です」
目の前が真っ暗な中、彼女の笑い声が鳴り響く。少しずつ回復してきた視界には、笑い転げる彼女がいた。いや笑い転げるという表現でなく、大笑いしながら本当に床をゴロゴロと転げまわっていた。これが本当の笑い転げるなんだな。
「あー面白かった」
彼女の目から笑いすぎて涙がこぼれていた。そんな顔も可愛らしいのが悔しい。
「そんなところに突っ立ってないで、こっちに来てくださいよ。一緒に話しましょうよ」
彼女は床を転げまわっていつの間にか部屋の中に入っていた。廊下の先に続いている部屋に勝手に入りやがったのだ。そして当たり前のように座布団に座って言い放った。
「早くお茶でも持ってきてください。お客様が来てるんですよ!」
そう言われて素直に冷蔵庫からペットボトルを取り出し、グラスにお茶を入れている俺も俺だ。しっかりと冷えたお茶をちゃぶ台に2つ置き、彼女の正面に座って話す態勢を整えた。
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