頑張り屋秀のキャンパスライフ

@izakayatikatra

第1話 キス魔

俺の名前は 島崎 秀 今年憧れのH大学に入学した

もう少し努力すれば あの東大も夢では 無かったが浪人は嫌なので案全策を選んだ

俺には 二つ年上の姉がいる 芽衣だ 

彼女は 将来デザイナーになりたいのでゼザイナーの専門職大学に通っている

入学式のこの日は 芽衣にコーディネートしてもらった まるで俺は 着せ替え人形だった


『スーツで決めるより紺のジャケットにチェックのスラックスの方がいいわね』

「そうお ばしっとスーツで決めた方がいいんじゃない?」

『みんなきっとスーツよ じゃが芋の寄せ集めみたいになるから こっちの方がいいの』


そう芽衣が話しているうちに 今日の俺のキャンパスデビュースタイルが完成した

姿見に写る俺の姿は いかにもアイビーファッションを意識した優等生スタイルになっていた

芽衣は コーディネートすると満足げに 鼻から息を吐きしげしげと俺を見つめた


『うーん いいんじゃない じゃ私学校行くから 似合っているわよ』


芽衣のお墨付きをもらった俺は H大学の講堂に意気揚々と出かけた

案の定 みんなスーツ姿だった それでもみんなと並ぶと結局俺も じゃが芋状態だった


入学式も終わると いろんなサークルや同好会 運動部の勧誘が待ち受けていた

その中でも一際目立つ 綺麗な女性がビラを配っていた そそる

俺は 花に群がる蜜蜂の様にその女性に吸い込まれてしまった


『君 イケメン君じゃない どう 私達のワンダーフォーゲル同好会に入会しない 初めに入った子は 歓迎会無料なのよ ワンダーフォーゲルって言っても山に登ったりしないの

自然の中でバーベキューしたり 居酒屋巡りしたりするのよ どうを?』

そう綺麗なお姉さんが説明しているが しっかり腕を組み 足は 同好会室に向かっていた


『白井会長 同好会第1号の入会者連れて来ました』

「でかした おうおう 可愛いイケメンじゃないか 君は ラッキーだ 歓迎会無料だぜ」

髪の毛を肩まで伸ばした背の高い 強面の会長さんが喜んだ

「ちょっと待って下さい 俺入るなんて言ってないですけど」

『いいのいいの この申し込み書に学部 携帯番号 住所書いてね いい子ねー』


あまりに綺麗なお姉さんが言うので ついつい申し込み書を記入してしまった

『文学部なんだ 私3年生の中野可憐 経済学部だから よろしくね』


そんな時だった 同好会室のドアがまた開いた


『あのー ワンダーフォーゲル同好会入りたいんですけど』

『あらー 可愛い子 じゃぁこの申し込み書に 学部 携帯番号 住所記入してね』


俺は 驚いた 高校時代付き合っていた 一之瀬ひかるだったからだ

無論 俺の童貞を捧げた 彼女の処女もいただいた

だが3年生になった春に俺は 一之瀬から別れを告げられたのだ


「一之瀬 お前もこの同好会に入会するのか?」

『あ 秀 あなたも ここの同好会は 最高よ みんなで酒で語らい出来るしね それに先輩

達もいい人ばかりだし 入学前から決めていたの』


確かに行動的な一之瀬なら H大学の情報は ある程度掴んでいただろう

彼女は 好奇心旺盛な女だ 卑屈になるがまさに小悪魔的な存在なのだ

そして彼女は 酒豪だ 入学早々嫌な予感が走る

その後も可憐さんの魅力に引っ張られたのか6人の男子が入会した


「ようしー 今日は これまでや これからみんな仲良く頼むで 1年生は 講義が終わったら必ず同好会室掃除や これは 日課やからなー ほな解散!」



翌日の朝 埼京線に乗ると一之瀬ひかるが乗っていた

同じ車両になったのでいろいろと話した 俺と別れた後も塾は 一緒だった

一之瀬は 将来小説家になりたくて 文学部にしたらしい 俺と一緒の学部だ

安西教授の講義を必修にしてる 安西教授の元では いろんな作家が輩出されていた

この日も満員電車で 時折揺れる度に一之瀬の胸が俺の肘にあたる 懐かしい感触だ

電車の中は みんなスマホを弄くり回していた 

車窓からは ピンクの桜の景色も見える 暖かい光が車窓からこだまして来る


お昼になった

H大学の学食は 有名だ 美味しい物がずらりと並ぶ 特に日替わりランチは 豪勢だ

一之瀬と一緒に学食に行くと会長の白井裕也さんや中野可憐さんや他にも何人か一緒にランチを食べていた 白井会長は 王道の日替わりランチAを食べている

俺は カレーにした 一之瀬は カルボナーラだ


「イケメンよ 名前は 何つった?」

白井会長が俺に話しかけた

「島崎秀です」

「秀か 秀才タイプだな 麻雀出来るか?」

「いえ やった事ありませんけど」

「じゃぁ この本読んどけ [初心者でも分かる麻雀]だ 最低10回読めよ」

『ちょっと会長 いくら何でもギャンブルは いけないわ』

可憐さんが それを阻止しようとした

「ギャンブルじゃない 俺と一緒ならバイトやで 女には 分からん それとな今度の日曜日新入会員の歓迎会やるから 夕方7時池袋[どんまい]集合じゃ いいな 良しコーヒー飲も」

そう言うと白井会長は お盆をさげ 熱いコーヒーを持って来た

俺もカレーを食べたので熱いコーヒーを持って来た そしてミルクを3個入れた

「秀 お前乳離れしとらんのか?」

「いえ クリーミーなのが好きなので」

「可愛いやっちゃ 気に入った 俺の舎弟になれ あははは」

一之瀬は アイスコーヒーにガムシロを一つ入れた

可憐さんは すっと姿を消した



その次の日曜日 ワンダーフォーゲル同好会の新入会員歓迎会が池袋で行われた

俺は ひたすらノンアルコールを飲んだ 一之瀬は がんがん瓶ビールを飲む

総勢27名 楽しい宴だった 一之瀬は 完全にいかれていた

白井会長も可憐さんも喜んでいた これが大人の世界なのだろう


帰り道 俺は 板橋 一之瀬は 赤羽

同じ電車だった 一之瀬は 千鳥足だった 俺は 一之瀬を家まで送った


『秀 ありがとう ね キスしようよ いいでしょ?』

「酔い過ぎだよ もうじき家だよ』

『私達 またつき合おうよ 駄目?』


突然の告白に俺は 焦った

今でも一之瀬に未練が残っている 嘘じゃない

俺は 一之瀬の唇に俺の唇を重ねた 舌が絡まった

久々の感触だった 俺は 興奮した

一之瀬を無事家まで送り届けた 

新しい恋が始まった





次の日 同じ車両に乗る一之瀬と出会った 


『秀 二日酔い 頭痛ーい』


その後は 会話にならなかった

付き合ってるはずなんだけど・・

一之瀬の友達 綾乃ちゃんから訊いたら 

一之瀬は 酒で泥酔すると誰とでもキスをするらしいとの事だった

勿論付き合おうと言ったのも記憶に無いのだ


まさに非情の酒 夢の飲み会は こうして幕を閉じた


眩い光が教室に差し込む







 














 








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