第2話

 僕は夢を見ていた。

 そして夢の中から現実を見ていた。

 次第に夢と現実の境界線がごっちゃになりどんな名前なのかわからない色になって消えた。

 何度か起きそうになったけど眠くなって無い瞼を閉じた。

 不快だった。早くここから逃げ出したい。

 何百年ももがき苦しんでいるようだった。

 アナコンダに丸呑みされた小動物の様に、ゆっくりとそして着実に締め付け。消化していく。

 今ある記憶が現実で起こったのか夢で起こった出来事なのかわからない。

 そして目が冷めた。


 視界が眩しい。

 全くピントが合わなくて痛くなっている眼球をよそに目の前に立ってる人影を凝視する。

 その人影は何か話しかけている様だけど何を言っているかわからない。


 次第に視界が晴れて聴覚もクリアに聞こえてくる。

 眼の前にはボサボサの髪に死んだ目の身長が高い女がいた。


 相変わらず女は何か話しているけど外国語か何かで全く分からない。

 ぼーっとして彼女を眺めてると、業を煮やした彼女はヘッドホンの片方だけに針をつけたような物を取り出しいきなり僕の耳に刺す。


 その途端激痛が走り鼓膜を貫いたその針はどこか突き抜けちゃいけないところまで突き

抜けた気がした。


 とっさに声を出そうとしたが「おうぇ おうぇ」としか声が出ない、やばい。

 軽く痙攣している僕の体を彼女は押さえつけてゆっくりと話しかけてくる。

 そして段々彼女が言ってることが理解し始めてきた。


「落ち着いてよく聞いて。 あなたは事故の後遺症で言語野にダメージを受けた、左耳に繋がってるデバイスは死滅した言語野の代わりに演算処理してる。脳味噌に繋がってるから決して触らないで」


 一体彼女は何を言っているんだ?

 事故? 言語野? デバイス?

 寝ぼけた脳で必死に記憶を辿る。


 そうだ僕はトラックに引かれたんだった。

 そして… そして?


「え…と ここはどこですか?」

 涙を浮かべて震える声で尋ねる


「ここは軍の輸送機の中。ちなみに私がハイジャックした」

 よく見ると迷彩柄の戦闘服を着た人たちが倒れてる。


「え…ちょと待ってください」

「安心して殺すつもりはない ちょっと過激な空の旅に同行してもらうだけだから」


 彼女は無線機を口元に近づけ

「ケビン、高度3000mまで下げて」



「相変わらず先輩は人使い荒いなー」

 すると軽快な声が無線機に返されて飛行機が降下する。


「うわぁぁ!」

 急に体が浮き上がるギリギリの速度で僕の三半規管を刺激されて猛烈な吐き気が僕を襲う。

「ううぇぇぇぇ」

 吐きたくても胃に中身がなくて吐けないたすけて。


 そんないかにも具合が悪い重病人みたいな僕に躊躇なくハーネスをパチパチとつけていく。

「な…何するんですか?」

「飛び降りる」

 彼女はそっけなく答えて彼女自身もモモンガみたいなスーツに着替えた。


「先輩着いたよ」

 無線から声が聞こえると同時に猛烈なGで床に押し付けられる。

 どうやら降下を停止したみたいだ。


 彼女は彼女自身のスーツと僕のハーネスをつなげた。

 丁度僕がおんぶされてるみたいになってる。


 輸送機のハッチが空いた。

 転がってた死体と一緒に空へ投げ出される。

「寒っ」

 風切り音と寒さの中、僕はまた気絶した。

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