第3話 新宿東口ビル崩落

「5月7日17:30頃、新宿東口にあるヤマダ電機新宿東店ビルが崩落し、死者11人、重軽傷者23人を出す大惨事となりました。」

「崩落事故現場にいた多くの人が、『巨大なロボットがビルを壊した』と話している事がわかりました」



日本中この不思議な事件で大騒ぎになって、私もニュースを映すテレビに釘付けになった。

私が見てた一番の理由は、私が見た夢の答え合わせだけど。


目撃者の一人が西武新宿駅辺りからスマホで撮った映像が繰り返しニュースで使われてた。


ヤマダ電機のビル全体が殆どカメラに入り、その真ん中辺りに大きな人型の影がビルに寄りかかって止まってる様に見える。

カメラは足元に向いて瓦礫と騒然となった通行人を撮って、再びヤマダ電機を映す。

黒い巨大な人影はボカされてるかの様にハッキリ見えなくて、初めはどんな姿なのかわからない。

人影は背中をカメラに向けてて、両膝を折って、ヤマダ電機の下から三分の一位の高さに右肩をめり込ませてる格好だった。


スマホのカメラは鮮明で、ガラス張りのビル側面のめり込んだ部分が凹み、そこだけガラスが無くなってる所まで良くわかる。

でも何故かロボットだけは黒い靄につつまれて良く解らない。

映像に詳しいという大学教授が、撮影後に映像を加工した形跡はないとワイドショーで話してた。


やっと動き出して立ち上がろうとした黒い人影。

めり込んだ亀裂は動き出したせいで上へ伸びて行き、ガラスと瓦礫を飛び散らした。

全ての動作は恐ろしくゆっくり。

寄りかかった姿勢を正そうと右手が掴む所を探し、ビルは破片を吐き出してゆく。

ふいにヤマダ電機正面に向き、両手で殴り始め、瓦礫はすっかり靖国通りを埋めた。


事件が不思議と言われる理由のひとつは、あの20メートル程の巨体が忽然と現れ、忽然と姿を消した事。


もうひとつは、映像の黒い人影。

スマホで撮影した人は沢山いて、

「撮影中液晶にはロボットの姿はちゃんと映っていたが、再生すると影になっていた」

と話してるインタビュー映像が流れてた。

肉眼では見えて映像には映らない。

その他多数の目撃者の肉眼でもやっぱりロボットの姿が見えていて、

外殻は金属でおおわれ、光沢で丸みを帯びた形状がわかり、手の指の関節一つ一つまでわかったと言う。


私の目にも見えた。

その時私がいた高校は遠く離れた福島で、しかも事件の二時間前の事なのに。

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