インターローグ
暗闇があたりを支配している。
おそらくどこかの部屋だと思われる。
「夏の事件によって、彼の能力はJ研の報告の通り証明されたということで良さそうだな」
しわがれた老人の声が部屋に響く。声だけが聞こえるだけで、姿はわからない。
「はい、J研の報告の通り彼は千年に一人の逸材で間違いないでしょう」
若い男の声がする。こちらも声だけで姿はわからない。
「これで計画が一つ進められるということになるな」
くぐもった男の声がする。この声も前二人同様である。
「はい、問題はないと思います」
若い男の声が返事をした時だった。この若い男は、現場を見てきたかのように的確に答える。
「ちょっと待て」としわがれた声がいった。
「このままでもいいのかもしれんが、一〇〇パーセント力を発揮するかわからんだろ。もう一人ほど人柱をこちらから提供しようではないか」
若い男が、「それは無茶なのでは?」といった。戸惑ったような受け答えをした。
「無茶? 無茶なのは、今の状態で我々の願いを彼に託すことなのではないのか? せっかくJ研が見つけた青年でも一〇〇パーセントの力を使えなかったら意味がないんだ。君たちは若いからわからないかもしれないが、我々からしたら時間がない。わかるな」
「ちっ、だから、老人は」と小声でくぐもった声がいった。それはだれの耳にも届いていない。
「もう手配は済んでると?」と若い男がいった。
「もちろんだ。もうすぐ彼と出会うことになっている。安心したまえ。ただし、今回は、前の三人と違って、普通の女性だ。彼女たちは、彼の能力を覚醒するためのものだった。しかし、今回は彼の能力を増幅するためのものだ。三人みたいな劇薬を使う必要はない。それに三人はこの計画の鍵なのだから、最後まで残ってもらわなくて困るしな」
「了解しました」
「あとは、こちらのシナリオ通りになる」
部屋が明るくなる。
そこは廃校の職員室だった。
人形が十二体転がっていた。
「計画か。老人たちが一番無理を強いているんじゃないか。まぁ、我々は、我々の計画でやらせてもらおうとするか」
男はタバコを一本吸い始めた。そして、人形を一体持ち上げ少し歩き、壁に叩きつけた。
「面白くなってきたな」
吸いかけのタバコを人形に刺した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます