紫音と犯人の抵抗

坂道の終わりでピックアップトラックがピョンッと軽く飛んだので、僕は対応出来ずに荷台の底に叩き付けられてしまった。


「グエッ!?」


「大園くんっ!?」


「大丈夫、荷台に叩き付けられただけですからぁ」


痛いと思いつつも追い掛けて来るミニクーパーに照準を定めてフルオートをフロントボディーに叩き込むと、向こうはヤバイと感じたのかピックアップトラックから距離を取った。


「天野さん大変です!」


「どうした紫音?」


「もう30発もフロントボディーに撃ち込んでいるにの、一行に停まる気配がありません!」


フロントボディーがひしゃげるほど撃ったのに、クーパーは普通に走行しているのだ。


「あの車、改造車かしら?」


「かもしれないよ。だってこの車に追い付いている時点でおかしいし」


「そうだとしたら厄介だなぁ〜。紫音のサブマシンガンじゃ対応し切れないないか?」


そんなやり取りをしていたら、向こうがこっちに向かって撃って来た。


「わわわっ!?」


「シオンくん、向こうに撃たせないで!」


「りょ、了解です!」


そう返事をしてから今度は運転席を狙いを定めてフルオート撃ち込むと、ミニクーパーのフロントガラスが歪に凹み破片が飛び散るが、普通に走行しているので森下に当たってないのが一目でわかる。


「やっぱり、フロントガラスまでは防弾使用じゃないな。そのままフロントガラスを撃ち続けろ!」


「了解っ!」


そのまま撃ち続けるが弾切れを起こしてしまったので、身を隠してリロードをしていると森下が撃ち返して来た。その1発が荷台のボディーに当たった。


「キャアッ!?」


「防弾だから安心して」


リトアさんが怯えている筒城先生にそう語り掛ける。


「シオンくんマズイ! 右横に並びそう!」


「えっ!?」


荷台から顔を出して見ると、追い越し車線から迫って来ている。


「シオンくん、近づけさせないで!」


「わかってます!」


そう返事をしてから H&K UMP45 で運転席を狙ってフルオートを叩き込むが、ミニクーパーはスピードを上げてピックアップトラックに並ぼうとして来る。


「弾が無くなりました!」


UMP45を置き、ホルスターにしまっている M&P M327 R8 を引き抜き構えたところで、ある事に気付いた。


今ならタイヤを狙える。


「紫音! 早く撃ち返・・・・・・紫音?」


天野さんは僕がタイヤを狙っている僕に気が付いたのか、リュークの方に顔を向ける。


「リューク、一定速度に保ったまま真っ直ぐ走れ!」


「わかった!」


そう話している2人を無視して、前輪の左側に狙いを定める。


「もう少し近づけば・・・・・・」


ミニクーパーが10mぐらいまで近づいたところで迫るのを止めたので、チャンスと思い引き金を引いた。


バアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!?


「リボルバー でタイヤをパンクさせたのっ!?」


「ナイス、シオンくん!」


「やるな紫音!」


天野達は紫音にそう言うが、その左側の前輪をパンクさせたクーパーは、ガードレールや他の車に当たってスリップ状態から持ち直したのだ。


「嘘でしょ?」


「ヤバイやり方で持ち直したね」


「ああ、そうだな。しかし執念深いにも程があるだろう」


全くその通りかもしれない。


「ま、まだ追って来ているんですか?」


「ええ、でも安心して」


筒城とリトアがそう言っている中、森下のミニクーパーからギャァァァアアアアアアッッッ!? とホイールがアスファルトと擦れる嫌な音がしている上に、左前輪のホイールから火花が散っているのにも関わらず、エンジンを吹かして追って来る。


「あれ、危険じゃないんですか?」


「危険ね。下手したら炎上するかもしれないわ」


諦めずに追って来るなんて、一体何があの人を突き動かしているのだろうか?


「紫音、吉報だ! この先のインターチェンジで警察車両とオズマ達が待機している! そこまで持たせるんだ!」


「了解です!」


R8 の弾はまだあるから大丈夫。


また運転席を狙おうと顔を出した時に、ある事に気付いた。


「天野さん!」


「どうした紫音!? 何かあったのか?」


「今ならもう片方のタイヤを狙えそうです!」


「本当か!?」


天野さんはそう言って僕を見つめて来るので、頷いて返事をする。


「さっきガードレールとか車にぶつけた影響で、バンパー部分が取れちゃってぇぇぇええええええっ!?」


大きなカーブに差し掛かった影響で、大きく体勢を崩してしまった。


「・・・・・・本当だ。紫音、狙えるな?」


「イタタタタ。はい、可能です!」


そう返事をしてから、 M&P M327 R8 をまたミニクーパーに向かって構える。


「リューク!」


「わかってる!」


彼はそう言うと先程と同じく一定のスピードで真っ直ぐ走り出したが、向こうも何をやろうとしているのか察したのか、ピックアップトラックから離れた。


「チッ!? 向こうも察しているか。紫音、タイヤを狙うのを・・・・・・」


パァンッ!?


紫音が撃った弾はフロントガラスを突き破り、犯人に当たった。その影響からか車が蛇行運転した後に、右に回転しながら滑って後部をガードレールにぶつかって、ようやく停まった。


「あ、アマノくん」


「やりやがったよ、コイツ」


2人が感心している中、 M&P M327 R8 の弾を入れ替える。


「それよりも2人共、様子を見に行かないと!」


リトアさんの言葉に2人は ハッ!? と我に返る。


「そうだな。リューク、バックしてくれ。俺は連絡をオズマ達と取る」


「あ、うん。安全な一番左側に行くから、ちょっと待ってて」


「ああ、そうしてくれ。紫音はそのまま荷台で警戒するんだ」


「了解です!」


何時でも撃てようになるべく姿勢を低くしたまま S&W M327 R8 を構える。


「・・・・・・見えて来ました」


「見てるからわかる」


壁にぶつかった影響からか、左側のホイールが変色していてボンネットの隙間から煙が出ていてシュー・・・・・・。と音を立てている。


「リトア降りるぞ」


「ええ」


2人は車を降りると、ピックアップトラックのボンネット側へと移動する。


「リューク、ゆっくり近づいて行け!」


「了解」


クーパーにゆっくりと近づいていると、サイレンの音が聞こえて来た。


「あっ!? 警察車両!」


「ようやくお出ましか」


道路の向こう側から警察車両が道路を塞ぐようにして来ていて、少し離れた場所から黒い服装した人達が H&K MP5J を構えながら降りて来た。


特殊急襲部隊SATの連中もやって来たか」


「ねぇ、それいいけど。モリシタだっけ? 生きているの?」


「わからないから確かめに行くんじゃねぇか」


「それもそうね」


そのやり取りをした後も、ジリジリと近づいて行く。


「ッ!?」


「どうしたの、シオンくん?」


「今、車の中から音が・・・・・・ん!? ドアを開けようとしているかもしれません!」


僕がそう言った瞬間、運転席側のドアが開け放たれた。


「リューク、ストップ!」


「わかった!」


僕達は銃を構えて警戒していると、運転席側から手が伸びて森下が出て来た。


「生きていたみたいだな。ホント運がいいというか、執念深いと言うか・・・・・・」


「気を付けて、何をして来るかわからないわ!」


そう会話をしている間にも森下がAK47uを左手に持ちながらミニクーパーから降りて来たが、右胸は僕に撃たれているせいで血を流している上に、足も怪我もしているのか足取りが覚束ない。


『動くなっ!?』


警察車両の方から声が聞こえて来た。


『銃を捨てて、両手を頭の後ろに置くんだ!』


「・・・・・・ハァ?」


『もう一度言う! 銃を捨てて、両手を頭の後ろに置くんだ! 従わない場合は撃つぞ!』


SATはそう語り掛けるが森下は聞こえてないのか、そのまま三車線の真ん中に立った。


『聞こえなかったのか? 銃を捨てて、両手を・・・・・・』


「うるせぇんだよチクショウがぁっ!? テメェら警察だろ! アイツらばかり守って俺を犯罪者扱いしやがって! アイツらとお前らのせいで俺は、俺はこんな生活を強いられているんだぞっ!!」


森下は怒りの形相でSATに向かって銃を構えた。


「国民の為に働いているくせして、俺を守らなかったクズ共がぁぁぁああああああああああああっ!!?」


雄叫びを上げてAK47uを乱射をする森下だったが、僕と天野さん達が無防備な背中に向かって銃を撃ち込まれてしまう。


「ぐあっ!? クソ、がぁ」


膝を着きながらも反撃しようと振り向くが僕達の弾幕に押されてしまい、そのままアスファルトへと沈んでいった。


「撃ち方止めっ!! 撃ち方止めっ!!」


天野さんのその言葉を聞き、撃つのを止める。


「・・・・・・タンゴー・ダウン。繰り返す、タンゴー・ダウン」


こうして、容疑者 森下 純雄 が心に宿した復讐の炎は命と共に消えたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る