ガンショップで準備をするシオン達
銃に弾に服に弾倉。それにプレートキャリアやチェストリグと言った商品が店内にズラリと並んでいる。
そう、僕は天野さん達にガンショップに連れて来られたのだ。しかも天野さんは、店員さんとカウンター越しに話しをしている。
「SS109の30発入りのカートが3つに、7.62×39mmロシアンショートの弾が30発入りのカートが3つに、5.45×39mmの30発入りのカートが3つにホローポイントの357マグナムのムーンクリップ入りのカート5つつ、合計で58058円です」
「ご、5万っ!? 高い!」
たった14個のカートだけで5万円もするなんて思いもしなかった。そんなに高い物をダニエル教官の訓練で値段を気にせずに撃ち続けてたのを後悔してしまう。
「ん? 何を言ってるんだシオン。安いだろう?」
「え!? でも、僕のお小遣いで考えたら、半年分だからぁ〜・・・・・・」
「ああなるほど、レートがわからないのか」
天野さんは店員さんにお金を渡した後に呆れた様な顔をしながら、僕に身体を向けると話し始める。
「一応言っておくが、PMCのガンショップ以外で買おうとしたら倍近くなるぞ」
「ば、倍っ!?」
58058円の倍だから、ざっくり計算すると約11万円も掛かる計算になる。
「日本で売られている弾のほとんどが、輸入品だから関税やら輸送費やらのせいで値段が高くなっちまうんだ」
「アメリカだともっと安いのよね。確かシオンくんが使う357マグナムの弾が50発で2200円だった気がする。ターゲットタイプかディフェンスタイプか忘れちゃったけど」
357マグナムの弾が50発で2200円程度って、日本と比べると差が大きい。
「PMC協会は独自の輸入ルートを確保しているから、通常よりも安く弾を販売出来のよ」
「へぇ〜、そうなんですかぁ〜・・・・・・」
その独自の輸入ルートは、犯罪を犯してないよね? ちゃんとした正規のルートですよね?
「お待たせしました!」
「・・・・・・あんがとさん」
天野さんはそう言ってさっき買った弾が入ったビニール袋を受け取ると、そのまま店内の隅っこに向かって歩き出したので慌てて追いかける。
「あ、天野さん? どこに行くんですか?」
「ああ・・・・・・そこにマガジンローダーが無料で貸し出しているから、使おうしているんだ。
一応言っておくが、持ち出し禁止だから気をつけろよ」
「あ、そうだったんですか」
テーブルの上に9mmパラベラムから12.7×99mmまで色々なマガジンローダーが置いてあったが、その中で一際目立つ物が壁際に置いてあった。
「・・・・・・これ、12.7×99mmのベルトリンクを作る為のやつですよね?」
「そうだな」
「使ってる人がいるんですか?」
「あぁ〜・・・・・・職員以外は使ったところを見た事ねぇな」
ですよねぇ〜・・・・・・これを使う銃は限られていますもんねぇ〜。
「それよりもほれ!」
天野さんが何かを投げて来たので わわっ!? と言いながら受け取り、確認をして見るとマガジンとさっき買った5.45×39mmロシアンショートと357マグナムのカートがあった。
「自分の分は自分で用意してくれ。まさか訓練で習ってない訳がないよな?」
「あ、いえ! 使い方を教わっているので大丈夫です!」
そう言って慌てて5.45×39mm弾の入ったカートを開いてから、中の弾薬を出すとマガジンローダーの中へ弾薬を詰めていく。そして、マガジンローダーに詰め終わるとマガジンに流し込む様にして弾薬を入れていく。
天野さんが用意してくれたマガジンが後2本あるので、その作業を後2回繰り返していく。
「・・・・・・ところで、何でマガジン3本しかないんですか?」
タクティカルベストに付いているマガジンポーチは3つあるのなら、銃に差し込む分を考えて4つ渡すと思うんだけど・・・・・・。
「ん? ああ。戦闘をするんだったら5本ぐらい持たせていたけど、今回はただの人を探しだからな。
そんなに弾はいらないだろう?」
「そうね。場所もわかってるんだから、すぐに終わりそうね。スマートウォッチをちょうだい」
リトアさんが天野さんに向かって手を差し出すと、天野さんはその上に置く様にして手渡した。
「シオンくん。東京に行く時は、このスマートウォッチを付けてね。それから、付けたらここに戻るまで絶対に外さない様にしてね」
リトアさんはそう言いながらスマートウォッチを腕に着けようとしている。そんな姿を見つめながら、僕は疑問を抱たのだ。
「何でスマートウォッチを外したらダメなんですか?」
「このスマートウォッチが私達が東京に出入りする為に必要な物なのよ。身分証みたいな物だから」
スマートとウォッチが身分証?
「言い方が悪かったなぁ。PMC協会が使うスマートウォッチには独自の改良しているんだ」
「独自の改良ですか?」
「そうだ。東京に向かう時に、このスマートウォッチを端末をかざさなきゃいけない。その端末にかざすと、今東京に入った。 と連絡が行くんだ。
そしてGPSも常に起動しているから、俺達がどこにいるかを本部が把握出来る」
それって普通のスマートウォッチでも内蔵されてる機能だと思うんですけどぉ〜・・・・・・。
「それに腕の動脈血の音を感知してるの。心拍数が止まった瞬間に本部に緊急連絡が行く様になってるの。
で、本人が付けているスマートウォッチに通信が入るか、私達が持っているスマートフォンに電話が掛かってくるわ」
「通信、電話にも出ないと・・・・・・」
「で、出ないと?」
「山岸達の様に死んだ認定される。ほら、お前の分だ」
天野さんはそう言ってスマートウォッチを渡して来たので、キョトンとした顔で受け取った。
「で、でも! まだ山岸さん達が死んだと決まった訳じゃぁ・・・・・・」
「本部はもう既に山岸達に何度か連絡を取ろうとしたんじゃないか?」
「会議室で 救助しに行って下さい。 って言わなかったでしょ? 本部がどうなっているか把握していると思わない?」
「・・・・・・」
そうだよね。本部がその人達がどうなっているのか、把握していない訳ないよね。
「ほら、準備が出来てるんなら行くぞ」
天野さんはそう言うと振り返って歩き出したので、僕は慌てて後を追いながらスマートウォッチを腕に付ける。
すると、スマートウォッチの画面に緑の線が出てきて脈を図る機械の様に画面に凹凸が出て来た。
「ああ、そうだ言い忘れてたな。今スマートウォッチを外したら、死んだと勘違いして本部に連絡が行くからな。怒られたくなけりゃ外すなよ」
「へ? あ、そっか! わかりました!」
天野さんは僕のが面白かったのか、ニヤニヤした顔をしながら見つめていた。
「そう言えばサジマが死んじゃマズイんじゃないの?」
「何がマズイんだ?」
「だってヤマギシはともかく、サジマは色んなところからお金を借りてたんでしょ? アマノも確か、金を貸してくれ。ってせがまれてたわよね?」
「ああ・・・・・・俺は無理だって言って断ったから大丈夫だ」
「フゥ〜〜〜ン・・・・・・」
リトアさんはそう聞くと、つまらなそうな顔をした。多分、天野さんが佐島さんにお金を貸したのを期待していたのだと思う。
「因みに、その時いくら要求したの?」
「20万円」
「20万!? さすに度が過ぎてるわねぇ〜」
「ああ、断ったのに そこをなんとか。 ってしつこく言って来たんだ。
聞いている内に、だんだん面倒くさくなって来たから何も言わずに帰ろうとしたら、道を塞いで来やがったんだ」
そこまでするって事は、多分切羽詰まっていたんだろうなぁ。
「何度も何度も塞いで来るからイラって来てな。だから俺は・・・・・・」
「「俺は?」」
「佐島を石野のところに連れてって、 コイツの使える部分を取って使ってくれ。もちろん、コイツはお金がいるみたいだから適正価格で渡してくれ。 って言った」
「ブッ!? ギャハハハハハハハハハハハハッッッ!!?」
リトアさんはお腹に手を当てて笑っているけど、僕はキョトンとした顔で天野さんを見つめていた。
「あの、石野さんって誰ですか?」
「石野ってのは、闇医者をやっているヤツの事だ」
「や、闇医者!? 医療免許が必要な怪我とか病気に対して、医療免許を持たずに治療している人達の事ですよね?」
「そうだ」
闇医者って、本当に実在してたんだぁ・・・・・・。
僕がそんな事を思っている中、リトアさんは息を切らしながら天野さんに話し掛ける。
「そ、それで・・・・・・サジマはどうしたの?」
「ああ、真っ青な顔になって逃げてったな。それと嬉しそうに準備していた石野は、逃げたと知ったらガッカリしていたな」
「でしょうね。あの人サイコパスですものね」
サイコパス!? そんな危ない人が医者をやってるの? その人に絶対にお世話になりたくないよ。怖いから。
「そのサイコパスに治療して貰ってるヤツが言うなよ」
「むしろ彼女は怪我人なら喜ぶんじゃないの? 症状によって度合いが変わるけど」
「そうだな。っと、こんな事言ってたら着いちまったな。お前ら、車に乗ってくれ」
「はい!」
「は〜い!」
僕達は天野さんに返事をするとピックアップトラックに乗り込む。
天野さんは僕達が乗った事を確認すると、エンジンを掛けてピックアップトラックを発進させた。
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