第11話
”アカネコ”はとっさに動こうとするが、警部の拳銃が向けられて動きが止まる。
「そうだ。いい子だ。そのまま動くなよ」
「なんで警部が……」
「いや、あいつは警部じゃない」
「え?」
「あいつがムシなんだよ。いつ入れ替わったのかはわからんがね。僅かだが、マルを燻した特有の匂いがする」
「ハッハッハ。そのとおりだ……と言いたいところだが、キミの推理には少々ミスがある」
”アオカラス”に正体を見破られたにもかかわらず、警部の姿をしたムシは余裕だ。
「私はずっと私だったのだよ。今日はじめて君たちと会ったときからね」
「それじゃあ、渡したとのことをすべて知っていて呼んだと?」
「んー、まあそう言うことになるがそれはあくまで結果に過ぎない。いろいろと便利なのだよ。このガワの立場はね。事件に最も近づきやすく、こんなものも扱えるのだから」
言うが早いか、ムシの拳銃から弾丸が解き放たれた。
「なっ……」
だが、その弾丸は”アカネコ”と”アオカラス”の横をかすめ、背後のクサに当たった。
「なん……で……」
「キミは失敗した。もう用済みだ。最後にせいぜい、私の役に立ちたまえ」
心臓を貫かれたクサは倒れ……そして即座に起き上がった。
魔法を使うためには魔道具が必要だ。それは通常、処理された死体の一部を用いる。だが、ただ魔法を使うためであれば、死体の鮮度は問われない。
「禁術を使いやがったか!」
魔道具にするための殺人は、魔術協会で禁じられている。だが、はぐれの魔法使いのムシには、そんなことは関係ない。
「ぐおおおお!」
今や戦闘傀儡となったクサが、人間とは思えない咆哮を上げる!その声に意識を持っていかれた”アカネコ”と”アオカラス”が、一瞬だがムシから目を離した。
「ハーハッハッハッ!どうかね、私の特製弾は!たっぷりと味わってくれたまえ!」
「しまった!」
”アカネコ”が気づいたときにはもう遅かった。ムシはいつの間にか姿を消し、声だけが残っていた。
「くそ!逃げられた!」
ムシ取りボーナスを逃した”アカネコ”は悔しがる。
「悔しがってる場合じゃない!来るぞ!」
”アオカラス”の声に呼ばれるかのように、クサが二人に襲いかかった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます