第8話

”アカネコ”に声をかけたのは、”アオカラス”だった。

「やれやれ。ここにたどり着くのはなかなか骨が折れたぞ」

かなり無理矢理に藪をかき分けてきたのか、”アオカラス”の体や頭や顔には、枯れた葉っぱがいくつもついている。


「相当厄介なムシがついたようだ。結界を貼るとはな」

「結界?そんなのありました?」

”アカネコ”には何のことかさっぱりわからなかった。


「いいか?この小屋にはな、人よけの結界がはられている。小屋の位置を正確に理解していない限りたどり着けないようになっているんだ。だが、こんな結界、俺にとっては造作もない」


「へえ……。どうやって来たんですか?」

「簡単なことだ。森を飛び回ってその経路を確認すれば、不自然に通らない場所ができる。あとはその中心部を目指してまっすぐ進めば、小屋にたどり着くというわけだ。」

”アオカラス”は葉っぱを落としながら得意げに説明した。


「まあ、君は偶然たどり着いたのだろうと思うが……」

「いや、探索魔法使えばいいじゃないですか」

”アカネコ”の鋭い指摘に、”アオカラス”は目を丸くする。


「……その手があったか」

「いや、その手も何も当たり前のことじゃないですか!」

「フフッ、俺ほどの天才ともなると、常に新たな発見を見いだせずにはいられないのだよ」

どうにかごまかそうとする”アオカラス”を、”カナネコ”がじーっと睨む。


「とにかく、クサを追わないと……」

「まあ待て、まずはマルの回収だ。小屋の奥にあるのだろう?」

駆け出そうとする”アカネコ”に、”アオカラス”がストップをかける。


「今回の俺たちの仕事はマルの回収だ。草刈りと虫取りはボーナス報酬だが、どうする?」

「当然、やるに決まってますよ!」

「フッ、そう言うだろうと思ったよ」


”アオカラス”は1本の黒い羽を取り出し、手のひらの上に乗せてみせる。それはひとりでに回転し、1つの方向を指して止まった。この魔法が有効な限り、クサがどこに逃げたのかは絶対にわかる。

「すでに俺の魔法が飛んでいる。ついでに、ムシのところにも案内して貰おうじゃないか」


ムシも捕まえれば更にボーナスだ。”アカネコ”にとって、これは喜ばしいことだ。

「そーし!それじゃあ、さっさと回収して追いますよ!」

”アカネコ”は、足早に小屋に入っていく。”アオカラス”もそれに続いた。

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