第6話自分の愚かさに僕は気づく
コンテスト当日、僕はとても緊張していた。
当然だと思う。久しぶりのコンテスト、母と妹も見に来るらしい。
緊張している僕に水野あかりは「頑張れ!」と言って来た。
「まぁ頑張るよ…」
緊張のせいか満足に会話ができなかった。
そんな僕を見てか彼女は「観客はみんなほしだとおもえばいいーよ!それで君は一番大きな星になった気持ちで演奏する!」
相変わらず独特なセンスだなと思ったがそんな彼女と話しているとホッとした。
10分ぐらいどうでもいい話をして、彼女は「こんなこと言ったらまた緊張しちゃうかもだけど君の演奏楽しみにしてる!」
指でピースサインしながら彼女は言った。
「頑張れ!」
それだけ行って彼女は観客席にいった。
僕も控室に向かおうとした時、沢山のスーツの着た大人たちがいる中に一人の男の子を見た。その子は男の割には髪が長く、色は茶髪、肌は白く身長はそれほど高くない、だが大人たちと話していても態度はとても堂々としていた。
会話が聞こえて来た。
スーツの大人の一人が「神谷君、今回の優勝の自信は?」と行っていたので彼が神谷君だというのがわかった。
「当然優勝しますよ!センスのない地味な演奏する水野と同じ優勝の回数じゃあ、俺のほうがすごいということが周囲の人たちには、わからないだろうからこのコンクールで証明しますよ!」自信満々に彼は、そう言った。
周りのスーツの大人たちもそのセリフを待っていましたみたいな反応をしていた。
だけど僕は彼が言ったそのセリフに黙っていることができず、彼の前まで行き「君より彼女がすごいよ」と言った。
「はあ?何言ってんの?つーかまず誰?」
「僕は彼女の代わりにこのコンクールに出る七瀬翔だ、それよりも、さっきの言葉取り消せよ君は彼女を何も知らないだろ。」
驚いた顔で神谷言った。
「七瀬ってあのプロピアニスト七瀬の息子かよお前?」
「そうだけど、今そんなの関係ないだろ?」
スーツの大人たちがビックリした顔でこちらを見ているのがわかった。
笑いながら彼は「へえ〜、またピアノ弾きに戻ってきたのか、親の顔潰し君!親があんなにすげーのに息子のお前は一度も優勝できない出来損ないになに言われても、何にも思わねーな!それに本当に地味な演奏するやつに地味って言って何が悪の?なぁ?それに、このコンクールでてないってことは、俺に負けるのが怖くて出てねーってことだろ?その時点で俺の方があいつより上なんだよ!わかったか?顔潰し君!」
「僕がバカにされるのはいい。僕は平凡で、途中でピアノから逃げた人間だ。でも彼女は、本物の天才だ。彼女はピアノに君よりも真剣に向き合っている!それを僕が君に勝って証明する!このコンクールで優勝するのはこの僕だ!」
「へぇー、ならやってみろよ」
僕は神谷君に、僕が優勝宣言して。控室に向かった。そのあと、控室で優勝宣言してしまったことに、後悔することになったのは言うまでもなかった。
そしてどれほど愚かなことかと彼の演奏を見たときに気づくことになる事をまだ知らなかった。
コンクールが始まり、しばらく経った。
僕の演奏の順番は神谷君よりも、後だったので、神谷君の演奏を見るために映像で観れる部屋に行った。
ちょうど彼が演奏するとろだった。
「十四番神谷透君」っというアナウスが流れた。彼はアナウンスの後にピアノの前の椅子に座り、一息つきブレザーのボタンを一つ開けた。その仕草の一つ一つがとてもかっこよかったと、不覚にも思ってしまった。
彼の選択した曲はショパン、スケルツォ二番だった。
演奏し出した、彼はとても生き生きしていて、映像越しから見ている僕も彼の音楽に直接触れているような気がした。
「すごい…」
思わず言葉が出てしまった。
繊細かつ大胆に、彼の感情がダイレクトに音に乗せられていた。
観客の視線が全て彼だけに注がれているのが、画面越しの僕にもわかった。
何より彼の演奏している姿は音と踊っているみたいだった。
彼もまた僕が憧れていた特別な人間なんだなと思った。
見に来ている人を盛り上げ、コンクールなのにライブのようなテンションにされる演奏だった。
彼の演奏が終わり、今まで一番大きい盛大な拍手が起きた。
彼は全てを出し切った顔をしていた。
圧巻の演奏だった…
彼の演奏を見て僕は彼を超えて優勝できるのだろうか、その疑問だけが頭をよぎった…
そのイメージが僕にはできなかった。
これほど自分の演奏が来てほしく無いと思ったのは初めてかもしれない…
けど時間は待ってくれない…
僕の番は必ず来る…
今それがとても嫌だった…
僕の全てをさらけ出すのが怖くなった…
だけどコンクールは順序よく進んでいく…
そしてその時が来た…
「18《《》》番七瀬翔君準備してください」
コンクールの人に名前を言われ、僕の番が来た。
そして、僕の運命が変わる演奏が始まるのであった…
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