第2話

いくらなんでもそんなはずはない。


見間違いだ。


そう思い、もう一度見直してみたが、やはり右腕がないように見える。


半そで男が立ち止まり、右後方を見た。


つられて見てみると、そこには人間の右腕にしか見えないものが転がっていた。


「ええっ!」


男はおもわず声が出そうになったが、半そで男のほうが先に大きな声を出したので、出しそびれてしまった。


「えっ、なんで、なんで?」


半そで男は左手で自分の右手を拾い上げ、固まったまま凝視している。


やはりどうみても、落ちた右腕を拾ってみていると言う構図にしか見えない。


――それにしても……。


男は思った。


痛くないのだろうか。


半そで男は有り余るほどの驚愕のオーラをその身体全体から発してはいたが、痛がっているという空気はまるで漂っていなかった。


男が戸惑いながらも半そで男を見ていると。


「次は首」


唐突に声がした。


男にはそれは幼い少女の声に聞こえた。


慌てて周りを見渡したが、少女に似つかわしくないこんな時間のこんな場所に、やはり少女の姿はなかった。


半そで男にも声が聞こえたのか、男と同じように周りを見渡した。

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