第14話 みずがしやさん


 祖父母の家の近くにあるくだものだけを売っているお店のことを、家族はみずがしやさんと呼んでいた。昔はわりと、くだもののことを水菓子とよんでいたからだろうか。

店先には、色とりどりのおいしそうなくだものがたくさん売られていた。奥にはくだものを入れる立派な籠や、缶詰なんかも並んでいたと思う。

 くだもののおいしさはもちろんだが、そこで買うと、くだものの絵が大きくプリントしている包装紙で包んでくれていた。その包装紙をきれいにはがしてもらい、はさみで切って、バナナ、リンゴ、ぶどうなど、それぞれを大事におままごとの道具の一つにしていた。が、いつも次に祖父母の家に行くと、なくなっていたような気がする。

 そのプリントは若干シアンがづれていたのか、またはシアンが強かったのか、青っぽいイメージがある。でも絵のサイズ的に好きな大きさだった。

 もちろんくだものは美味しい。その昔はバナナは今のような安価ではなく割と高級な部類だったが、たくさん房のついが状態で買って、大勢の親戚達ともぐもぐ食べた。またデラウエアもおいしく、いとこは皮ごと食べていた。地域としては大きい病院も近くにあり、人気のあるお店だったのではと思う。が、今はもうなくなってしまった。でもその前を通るたびに、思い出す、心に残るお店だった。


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