あお色ユメ世界

第1話 あお色の世界の続き

「関係ナイデス、あおくてもお友達デス」


「そうだよ、どんなに見た目が違っても友達だよ。」


「指切りしようよみんなで」


「そうですね、それが良いです」


僕達は指切りした。


「髪の毛のオマモリをツクリましょう」


そう言って僕は髪の毛のお守りを作り4人に渡した。


この、あお色の夢の様な時間が続くように願って。


********************


世界は不平等と理不尽で出来ている、僕のように少し人と違うだけで皆から嫌われる…


僕はただあお色のせかいを眺めたいだけなのに、そう思いながら街を歩いていると目の前から女の子が走ってくる。


「追われてるの助けて!」


後ろには黒服が走って来ており銃を抜いていた。


「止まりなさい!」


ただ事でないことは僕にでも分かる、僕は女の子の手を引っ張り裏道を通っていく。


昔住んでいた街で殆ど道が変わっていない事はさっき確認した。


「こっち!」


金色の髪の女の子の手を引っ張り裏道を走る。


ここの街は第二次世界大戦の戦火から逃れた街で古い道が多く、裏道が自然と多い。


黒服は数が多い為裏道を通るには不自由であり、またここら辺は地元民でなければ地図があっても迷ってしまうのだ。


「ここは…止まって」


女の子に止められたのは古い神社の前だ、昔はよく来ていた所で、稲荷神社である。


「お稲荷さんだよ、どこか行きた場所は?」


逃げて来たと言うことは警察に連れて行った方がいいんだろうけど、神社を見る目がキラキラしており少し連れ回してあげたくなった。


「ふふ、ありがとう。あら蒼い髪、珍しいわね!」


そりゃ世界に僕一人しか居ないらしいから珍しいよね。


本来遺伝子的に蒼い髪はあり得ないらしい。


だけど僕はエラーで髪と瞳が日本人なのに生れながら蒼いのだ。


そのせいで色々と不利益、理不尽を被っているけど


「みんなとは…違うからね」


彼女は立ち上がり僕の髪の毛に触れる。


「綺麗な蒼色、汚されない澄んだ…」


そう言われると嬉しい、この髪が褒められることは滅多にないからだ。


「あの子もこんな色の髪を…」


小さな声で聞こえない、それよりも


「僕は氷月雹霞ヒョウゲツヒョウカ


「私はマリア」


僕は立ち上がり彼女の手を取る


「どこへ行く?」


「ふふ、帰らないといけないから案内して欲しいの」


しばらく雑談をしながら歩いて行くと見覚えのある、いや、この街の住民なら知っている場所につく、私立天ヶ峰学園、世界一のお嬢様学校…


お、おう


「姫様を見失っただと!お前ら後で説教だ!」


門から出てくるプレートアーマーの、女性がそう大きな声で怒鳴りながら出てくる。


「時無殿に連絡して協力を仰げ」


「どうしたのルナ」


「姫様、姫様が行方不明になったらしく、我々ガーディアンが…」


騎士とみられる女性の方は黙ってしまった。


しばらく無言が続くと携帯をもち電話する


「クリス、姫様は、学園前だ。時無殿への協力の取り下げとお前らは後で私の所に来るように」


そう言うと携帯を切り俺の方へやって来る。


「この誘拐犯がー!!!」


首筋に痛みを感じて俺は気を失った。


蒼い空が最後に見えた気がした。


********************


「やーいやーい蒼い子ー、親に捨てられた蒼い子ー」


「お前は皆と違う子ー、化け物だーはっはっはー」


子供というのは無邪気という名前の残酷さで自分とは違うものを差別してしまう。


そして受ける側も残酷な事に無邪気なためまた受けてしまう。


僕はみんなとは違う、僕は人とは違う、僕は人じゃあない。


一人部屋で篭る日が増えていった。


あの日感じたあお色の世界は夢物語となって…


********************


短い間僕は気を失って居たようだ、お陰で嫌な事を思い出してしまった。


「起きましたか、氷月雹霞ヒョウゲツヒョウカ殿」


体はかの有名な日本の三人の神々の一人スサノオが高天原から追い出されるときにされた格好、つまり縄で簀巻きにされている訳だ。


気絶していた時に縛られていたよう


「貴方は今、窮地に立っています。貴方が誘拐未遂をした相手をどなたか心得ていますか?」


金色の綺麗な女の子でしょ?金持ちの


「シュムシャル王国の第四王女、マリア・ル・ヴィシャール・シャムシャル王女と知ってのことか?」


そういえば二つの国の王女が日本に留学をしに来ているとかニュースでやっていたような気がする。


顔写真とか乗ってなくて知らなかった。


「いいえ、知りませんでした。名前くらいはニュースで知ってますけど」


目の前に剣を突き立てられる。


「さて、どちらがいいですか?首を落とすのと四肢を落とすは、我々の国では王族の誘拐は重罪ですし、我々は超法的な存在ですからね」


あー、日本の法律は適応されないということか。


この黒服の数は逃げれないし、逃げても状況を悪化させるだけであろう。


「もしこちらで何もしない場合、貴方は公安に捕まり多分一生刑務所暮らしですね。」


それはそれで嫌だな、てか、僕は追われているから助けてと言われて連れて逃げたのにこの有様か…


その三つの答えなら僕の答えは一つだけ、悲しむ人も居ないしこれがベストな答えだろう。


「首でお願いします。お願いとしたら布をかけて燃やして処分して下さい。この蒼い髪はいらないものですから」


この言葉に女王様やガーディアンの女性は驚いて居た。


「ねぇ、雹霞、なんでそうキッパリ言えるの?命は大切だよ?」


王女様には分からないかも知れない、でもこの世は生きて居ない方がいいと思えることの方が多い。


僕は死んだらあのあお色の夢の世界に行けるのかな、生きている間無理なら僕はそちらを望む。


「…予測外の答えですね。」


命乞いをするのかと思っていたようで少し眉間にしわを寄せる。


「多分情報が流れていますよね?僕には家族もいませんしだったらこのまま死んであお色の夢の世界を夢見て死んだ方が良いです。」


多分死んだ目をしていたのだろう、黒服さんたちもガーディアンの女性も姫様も黙ってしまう。


またやってしまった。


僕は人では無いんだ、僕は普通では無いんだ、やっぱり生きていては、外に出てあお色の世界を夢見てはいけなかった…


「ルナ、雹霞は私が助けてって言ったから助けたのよ?見てたよね?」


「それはええ」


渋い答えを出す黒服さんたち、そうは行かないのでしょう


「ですが姫様、これは国際問題一歩手前です。こちらとしてもそれを困っていまして」


そんな話を割って入るかのように目の前に刺さっている剣が轟音と共に吹き飛んだ。


剣を持っていた人は手が痺れたようで剣を持っていた手を押さえている。


「落ち着け、解決方法ならある。」


茶色い髪に茶色い瞳の人が銃っぽいものを懐に収めると僕の目の前にやってくる。


「綺麗な瞳と髪をしているな」


ニッコリと笑顔で僕の頭をくしゃりと撫でて縄を解いてくれた


「時無殿、これはこちらの問題で」


彼はため息をつく


「悪いな、実はずっとマリアちゃんの後ろを付けていたんだ。」


その言葉に周りがどよめき始める


「えー、時継くん本当?ストーカー?」


姫様の場所はずれな言葉が響く


「姫様はしたない、本当ですか時無殿、貴殿の話が本当なら貴殿も裁く対象になりますが?」


「俺は昼から暇で外でランチしてたんだ、そうしたらマリアちゃんとそいつが逃避行していたから後ろを付けて行ってな、特に危険も無かったらからこの学園まで来るのを見張っていたのさ。もし誘拐だったら手を出している。」


全く気が付かなかった、本当に付いてきていたのだろうか?


「…ではどうされるつもりで?」


男の人は手帳と銃を僕に渡してくる、いきなりの事で僕は驚いてしまい銃を落としそうになる。


「こうすれば良い、コイツは俺の部下で新入りだ、俺が色々伝える前に姫様と会い誘拐犯が誘拐しようとしていると間違い連れていた、俺が始末書を書けば良いだけの話になるだろ?コイツには天ヶ峰に通って貰うことになるが。いいな?」


「え、でも…」


なんで僕の、化け物の僕の為にこの人はこんなことをしようとしてくれているのか?


僕は死んだ方が良いのに


そう思っているともう一度くしゃりと頭を撫でられる。


「お前は人間だよ、誰よりも綺麗な蒼い色の、天の、空色のね。今日今から俺の部下、国連軍怪奇調査課日本支部氷月雹霞だ、胸を張れ」


この人の笑顔は偽物じゃあない、僕に微笑みかけてくれている優しい笑顔、人生で2回目の優しい笑顔…信じて良いのかなもう一度あお色の世界を


********************


あの人は始末書を書かないといけないということで僕とは別れ、姫様は午後の授業へと向かった。


「失礼しました、国連軍の方でかの英雄の部下となればあのような行いはあたりまえですね。」


僕は黙って頭をさげる、僕の意図を察したのかにこやかに笑う


「礼儀正しいですね荷物はありますか?」


荷物は元々無いしすべて処分した、このお守り以外は


三人とのあお色の記憶、その大切のキーだから


「天ヶ峰学園は前の事件から完全にICカード制になりロボット警備兵になりました、寮へ暮らすようにしましたので」


僕としてはここまでされるとすこし気が引けてしまう。


「彼は誰ですか?」


「最近国連に入った人なのに活躍して英雄ヒーローになった方、名前は時無時継トキナシトキツグよあなたの上司になる人」


英雄か僕ともっとも離れた人だな、僕を倒すほうの人だろう


「後の手続きはこちらでしておきます。」


黒服の女の人は去っていった。


一人残された僕はどうしよう


「雹霞くんこっちに来てくれ。」


時無さんと思われる人が手招きをしていた。


英雄と呼ばれる男か…


そこは校長室と書いてあり学生が入るのが一番嫌な部屋だろう


「失礼します」


中には若い女性と共に時無さんがお茶を飲んでいた。


「君が時無くんの弟子ね、私は校長の黄泉比良坂ヨモツヒラサカイザナイよろしくね」


「え?校長そんなに名前だったのか」


時無さんが驚いた顔をしてお茶をすする、知らなかったんだ、知らないでここでくつろいでいるんだ。


こう見ると英雄には見えない…


「お前…コイツは世間では英雄扱いだけど本人は何も思っていないからね。」


それなら納得できる、だけど英雄はみんなそう言うよね多分…


「雹霞、お前仕事内容わからないだろうから説明をしてやる。」


「あ、よろしくお願いしますえーと、時無さん」


「時無はやめろ、せめて時継か先輩にしとけ」


苗字で呼ばれるのが嫌いなのかな?


「師匠でいいんじゃあない、弟子みたいなものでしょう」


校長先生が口を挟んでくる。


師匠、ちょっと言ってみたいかも、なんか響きが良いし、この人なら師匠って感じだよね。


「師匠?」


僕は控えめに言うとニッコリ笑いながら


「なんだ雹霞」と頭をくしゃりと撫でてくれる。


無骨な撫で方だけど優しく暖かい。


僕は涙をこぼしてしまう、撫でられただけなのに。


だけどこんなに暖かいのは人生で2回目だった。


昨日会った初めての人にここまでしてもらうのは初めてだ


「泣いて良いぞ、泣けるのは良い事だと」


僕が泣き止むまでずっと撫でてくれていた、この人は僕を受け入れてくれている。


握っているお守りのあの子たちの様に


しばらく泣いて僕は落ち着いて涙を拭く


「師匠、みっともないところを見せました!大丈夫です」


師匠は「そうか」と言うと僕に紙を渡してきた、同意書である。


「お前の仕事はマリアちゃん、さっきの姫さんの護衛だ。先程国連から俺向けに辞令が降りてな、俺とお前であの子の警護に当たることにした。」


一応国連の所属となった僕の初めての仕事は物凄く重大な物らしい。


「…僕力も頭もありませんよ?」


その言葉に師匠はニヤリとする。


「鍛えてやる、ただお前自身を護れる程度にな。大体あのマリアちゃんにはガーディアンが付いてきているから警護は必要ないのだが、今回の行動でこうしとけば後後処理が楽に済む」


そこまで考えてこの人は今日の行動を取っていたんだ、頭も相当いいみたい、この人の弟子になるんだ、頑張らないと。


あお色の世界の続きを僕はみたい。


あの時みたいな…


********************


〜ルナ〜


姫様を授業へと送り私は本国への今回の事情の説明のため書類を作る。


時無殿が作った資料を見ながらこちら側の視点で書くだけなので楽ではある。


かの英雄、アキバのカゲモノ事件、この街、天ヶ峰の人狼事件を解決した最大の功労者である時無時継殿、彼は謎の多い人物だ。


生まれは一般家庭で両親を早くに亡くしその後は知り合いに引き取られ育てられていたらしい。


だがあれだけの力を持っていれば世界の情報機関が欲しがらないはずはない。


なのに国連軍に所属するまでニートをしていたのだから驚きである。


蒼い髪の少年、氷月雹霞…


あの子と同じ髪の色、でもあの子はもっと明るく活発な男の子だったはず。


「…」


私はお守りを握り祈る様に目をつぶった。

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