0x0009 周りが女の子だけって本当に疲れる

 僕は一人でDHAの前に立っている。

 どうしてこうなったのかだって? 

 正直な所、僕が聞きたい。


 おさらいをしよう。

 ジネヴラ一行が根源サーバーを起動して、 管理者root権限をしていたら、その内一つにDHAのユーザー名が登録されていた。


 根源サーバーに関する魔法統制庁令に、”起動された根源サーバーは魔法統制庁に根源サーバー登録申請をすること”、とあるらしい。DHAに登録申請されたかもしれないと、ジネヴラ一行は根源サーバー登録申請の為に、魔法統制庁に行くことになった。


「僕も行こうかな」

 と、言ってみた。

「いいえ……ウーヤはちょっと。囚人服とか……ないわー……とか思いませんか……」

 デアドラって僕に対して悪意があるのか時々わからなくなる。

「ユウヤは今回はちょっと。囚人服はちょっとないかも」

 わかってるよ、ジネヴラ。でも、視線を床に向けるのやめてくれないかな。結構、それって傷つくんだよ。


 好きで囚人服着てるわけがない。ここはデオドラの屋敷で、どうしたって女物しかないわけで。金があるわけでもないので、服を誰かから借りることになる。


 こっちの世界での男の知り合いって、ガシュヌア、ドラカン、ラルカン、ファンバーだけ。DOGのガシュヌア、ドラカンって、近づきにくそうな雰囲気あるから、仲良くなりたくないんだよね。

 そしたら、消去法でDHAですよ、この野郎。

 恨み言の一つも言ってやろうかなと。


 DHAの事務所はデアドラの家からちょっと離れた、ダーナ街にあるらしかった。そこでは魔法ギルドが数件集まっているらしく、ディアン・ケヒト通りに面した所にあるのだそうだ。


 でも、ダーナ街って、行ってみて初めてわかったけど、魔法ギルドだけじゃなく、鍛冶ギルド、化学ギルドが軒を並べていて、職人達の大半はここに来るのだそうだ。人通りは結構あるし、露天がひしめきあっていた。

 石造りの家屋は頑丈そうだけど、鍛冶ギルドと思われる家屋からは金属音が聞こえてくるし、占星ギルドからは鶏の断末魔が聞こえてきたりと、何とも騒がしい。


 しかし、職人の姿もちょっとおかしい。煤で真っ黒になっているのやら、爆発に巻き込まれたのか、髪が逆立っている奴もいる。かなりマッドな場所だ、というのが最初の印象だ。


 僕は囚人服を着ているから、行き交う人の視線がかなり痛かった。絶え間なく、サバイバルナイフを刺されている気分。


 ひそひそ話が聞こえてくるので、顔を向けたら、皆、目を逸らすんだよ。あからさまに。そして、私、見てませんでしたって顔をする。

 鍛冶ギルドの連中とか、化学ギルドの連中も大概な格好をしていると思うけれど。囚人服は異常らしい。服装や姿形にカーストがあるのだとしたら、僕は最底辺にいるようだ。


 DHAの看板を見つけた。書体は男らしさを強調したいのか、太い飾り文字で書いてあった。”Dynamic Hexagon Association”。意味は「動的な16進数連合」。


 はあ?

 全くもって意味がわからねえ。何考えてんだ、ラルカン、ファンバー?

 脳みその存在を疑うネーミング。そうは言っても厨二病患者Edgeloadsは嫌いじゃないから、正直言うとウケたよ。


 ドアノブは看板と相反して粗末なものだった。看板に金遣いすぎたのかもしれない。

 扉を開けると、魔法ギルドだけあって、本があちこちに散らばっていた。ただ、男所帯の宿命なのか、余りにも汚い部屋だった。積み上げられた本で、窓が塞がれ日差しが悪い。昼食後なのだろうか、食べ物の匂いがした。


 僕を見つけてラルカンは驚いた顔をしてみせた。

「お前!」

 そういや、こいつは呪いをかけたとかで、僕を刑事告訴したんだった。でも、ラルカンの表情の中に少し恐れがあるのを僕は見逃さなかった。ちょっと脅かしたらどうなるのかな。

「よお、ラルカン。久しぶりじゃねえかよ。お前のおかげで散々な目にあったよ。探したぜ」

 正確に言うと、デオドラに住所を聞いただけ。探してはいない。


「あれは仕方ねえだろ。それはお前が公共の場で呪いかけたからだろ」

 ラルカンは少しドモりながらそう言った。目を見ようとすると、彼が目線を避けているのがわかった。

 それにしても汚い床だな。掃除とかしてないだろう。パンの残りかすがあちらこちらに飛び散ったままじゃないか。


 さて、どう説明したものやら。

 DOGから言われたことは ”落ち人”であると言わなきゃいいんでしょ。

 でも、高圧的な態度って気分いいよね。こっちの世界に来てから被害者になりっぱなしだから、加害者側にもなってみたい。

 この世は所詮しょせん、弱肉強食。

 つまり、弱者は自分より弱い者をいじめてもいい。


「言ったろう? あれは太古の魔法で、現行法には適用されねえんだよ」

 嘘です。

 でも、ラルカンはビビりまくっている。

 かなり楽しい。何ていうのか格闘ゲームでハメ技入ったみたいな。

「つかよ。僕の顔つきみてわかるだろ? 東洋から来たんだよ。魔法体系からして違うってことがわからないかな? ええ、ラルカン?」


 そういやガシュヌアも東洋系だった気がしたけれど、どうせDHAとDOGって接点ないだろうぐらいに考えて適当に言った。

「えっ、ガシュヌアはそんなこと言ってなかったが、そうなのか?」


 DHAとDOGって接点あるんだ! 魔法ギルドって横の繋がりあるのかな?

 思ってもみなかった反応にこちらが焦る。

「まあ、ガシュヌアとは流派が違うからな」

 僕は何を言っているのだろう。

 嘘つきは墓穴の始まり、と誰かに言われたことがあるけれど、まさしく、そんな感じ。

「そうなのか? OSは何使ってるんだ?」


 ラルカンが思いの外、食いついてきた。これはとんだ誤算。そりゃそうか、魔法ギルドとか設立しちゃうぐらいだもんな。

「Linux」

「マジ? それサーバーのOSじゃん。サーバー動かせんじゃん」

「Wi-Fi接続してるPCでサーバーとか頭悪すぎだろ。ねーわ」

「確かにないわ。てか、個人で有線とかかなり無理だもんな。行政機関ならともかく、高すぎ。どんだけーって感じだよ。でも、Linuxだったら、魔法使えないんじゃね?」

 これには僕が驚いた。魔法はクライアントプログラムとかドライバをインストールしなきゃいけないはずで、Windows系しかないってことなの?


「マジで? Win用しかねえの? うぞー。用意しとけよLinux用」

「俺に言われても知らねえし」

「あっ、でも僕の場合、VMだからイメージさえ有れば、Win使えるかも」

「ん? 何だVMって?」


 しまった。喋りすぎた。何が落ち人の基準になるかわかったものじゃない。

 でも、案外、ラルカンって話しやすいかもしれない。出会いは最悪だったけど、悪い奴でもない感じがしている。適当にごまかそう。


「いや、何でもねえ。忘れてくれ。呪いの一種っていうか。色々あってさ」

 ボソリと適当なことを小さく呟くと、何を察したのか知らないが、ラルカンは頭を掻いて謝った。

「すまなかったな。何か知らんが色々あるんだな。悪かったよ」


 ラルカンちょろすぎ。

 てか、こいつ人を信じすぎじゃないだろうか?

 呪いの一種とか言っちゃったけど、自分でも何を言ってるのか意味不明だったよ。ラルカンが勝手に解釈してくれたみたいで助かった。掘り下げられると実はヤバかった。


「まあ、いいけどよ。お前、何しにココに来たんだよ?」

 すっかり、本題を忘れてた。みすぼらしい囚人服をラルカンに見せて言った。


「男服貸してくれ」

 ラルカンは何を言い出すのかと顔をしかめた。

「何言ってんだ、お前?」

 心なしか口調が砕けてきた。


「いや、お前らのおかげで囚人服しかないんだよ。ジネヴラたちが男物持ってるわけねえじゃん。女しかいないんだよ」

 口調を合わせることにする。やはり、威張り散らすのは疲れる。


「えっ、何それ。自慢なの?」

 “女しかいない”ということに反応するなよ。しかも、視線に嫉妬が混じっている。

「ちげー。お前、全然わかってねえ。女しかいないって、地獄だからな」

「自慢にしか聞こえねえ」

 半信半疑のラルカン。恨めしそうな顔をしている。

 両手で全力で被害者アピールしなくては。

 僕がリア充疑惑とか、今までからすれば考えられない状態だ。いわれのない非難を浴びている。抗弁しなくては。


「あのさ。男社会と女社会って根本的に違うんだって。最初は僕だって、変態扱いされてたし最悪だったつーの。というわけで、今は二十四時間耐久ジェントルマンとかやってる。正直死ねるわ。というか既に百回死んだわ」


「二十四時間耐久ジェントルマンとか、かなり意味不明すぎだろ。ウケたわ。つか、話変わるけど、マルティナってやっぱ好きな奴いんの?」


 どんだけマルティナ好きなんだよ。ストーキングとかやめてくれよ。

 ラルカンの視線が絡みつくようにネチこい。

「知らねえよ。俺もついこの間まで変態扱いされてたって言ったろ? あー、でも言ってたわ、マルティナ。お前タイプじゃないって」


「マジかよ。どんなのが好みなんだよ?」

 ラルカンが顔を寄せてくる。

 僕は思わず仰け反った。必死過ぎたろ。


「少なくともガツガツしているのは駄目っぽい。昔からナンパされてたみたいで嫌いなんだって、そんなこと言ってたわ」

「普通だろ? 男らしいってそういうことじゃねえの?」

 何だろう、コイツ。初対面とはヒドく印象が変わってきた。

 表情が素直で裏表がない。気兼ねせずに話せる奴らしく、茶色の瞳は好奇で開かれていた。


「わかってねえな。少なくともジネヴラ達は男女は平等であるべきだと考えてるから、男らしい、女らしいって、トラブルの元になるだけと思うけど」

「何だそりゃ? 男女平等とか聞いたことねえわ」

 ラルカンが嘆息した。両手を上げて、意味がわからないと頭を振っている。


「僕の所はそうだった。そんな所だと、昔の考え方だと嫌われる。これだけは確かだ」

「えっ、東洋ってそうなのかよ。男女平等だったの?」

「正確に言うと、その過程にあるんだけれどな。僕はお前の為を思って言っているよ。男らしい、女らしいを求めると、必ず嫌われる」


 ラルカンは両手を組んで、床を見下ろす。カールした黒毛の髪は、鳩の巣にしか見えない。

 彼は顔を上げた。

「マジかよ」

「マジマジ」


 そういや、この間はマルティナの様子が変だったような……

 まあ、いいか。


「というか、マルティナの近く居て、よくお前、平気でいられるよな。ええと、名前なんだっけ?」

「ユウヤだよ。言ってなかったっけ?」

「ウウヤか。言いにくいな。もうちょっと、覚えやすい名前にしろよ」

 僕は頭を振った。どうにも英語圏だと僕の名前が覚えにくいらしい。デアドラとか、マルティナとか間違ったままだし……


「あのさ。いい覚え方があるんだよ。僕を指さして」

「こうか?」

 ラルカンは僕に向かって指を指す。爪の間が黒くなっているけれど、そこは無視する。

「そうそう。その後、両手でサムズアップ」

「こうか?」

 こいつおもしれえ。割と真面目にやってくれている。

「You, Yeahって感じ」

「えー、何だよソレ。ユーヤーかよ!」

 ラルカンはバカバカしいと思いながらも気に入ったようだった。


「スラングだよ。スラング。ユーヤーじゃなくて、ユウヤ。これで覚えたろ」

「はーん、なるほどね。覚えた、覚えた。でもさ、ユウヤだって、自然と目が行ってしまうだろう、胸とか尻とか。本能レベルでさ」

 ラルカンは割と音感がいいらしい。ガシュヌアといいドラカンといい。男性陣の方が音感は良いらしい。

 僕はラルカンに返事をすることにした。


「無理して見ないようにしてんだよ。目が動くのを必死で阻止してる。何なんだろうな、あれ? 嫌いな女でも豊かなバストが側を通ると、見てしまって、クソ-ッとかならねえ?」

「あるわー。何だろな、あれ?」


 でも、僕は別にそんな話をしに来た訳じゃない。本題から逸れすぎだ。

「てか、そんなのどうでもいいから、服貸してくれよ、ラルカン」

「あっ、そうか。それで来たのか。どうしようもねえな。服無し、金無しかよ」

「服無し、金無しだよ。僕だって好きでそうなったわけじゃない」

「追い剥ぎにでも遭ったのか。最近、物騒になってるからな。セル民族自治区とかキナ臭いらしいし。イングランド人はクソだし」


 そうか。ここでも「イングランド人はクソ」なのか。

 民族的な因縁とかありそう。正直、民族紛争とか巻き込まれたくない。


「イングランド人がクソなのはわかったから、服くれ、服。囚人服とかだと皆見るんだよ」

「そりゃそうだろ。適当でいいよな。ほれ」

 ランバーから投げ渡された服は白シャツ、ジャケット、パンツ。繊維の質がイマイチ良くないけれど仕方ない。ジャケットは渋めのタータンチェック、普段着にはいいかも。ただ、ちょっと埃っぽい。スーツのメンテはちゃんとしとけよ、とか思う。

「靴もないかな?」

「厚かましいな、お前。金が入ったら返せよな」

「わかったよ。でも、スーツのメンテぐらいちゃんとしとけよ」

「なんだよ、それ?」

 嫌そうな顔をするラルカン。彼はどうも整理整頓とか苦手そう。


「ブラッシングだよ。この程度の繊維だと馬毛ブラシでいいから」

「えー、貸してやるのに文句かよ」

 呆れたような物言いで、足を机に放り上げた。靴底を見ると、革底がメンテナンスされていない。どうも、自分の道具をメンテナンスをなおざりにしているようだ。

 

「いいや。お前の為に言ってる。清潔感は大切だって」

「そうなの?」

 疑わしい顔つきをしながら、ラルカンは僕に視線を向ける。


「着ない時はサイズの合ったハンガーにかけとけって。型崩れしないから」

「何か面倒くせえなあ」

「靴も油分がとんでるし。シューキット買わなきゃなあ。ああ、金がねえ」

「お前も面倒くせえな」

「ま、どちらにしても助かったわ。ありがと」


 お礼を言った後、そういやDHAが根源サーバーの一つを乗っ取っていたのを思い出した。裁判だとか言いだしそうだし、ややこしくなる前に話した方が良さそう。

「そうだ。ラルカン。お前、ジネヴラの見つけた根源サーバー、乗っ取ったろ?」


 驚いた顔をするラルカン。腰が浮いていた。

「えっ、何のこと」

 本人はとぼけてるつもりらしい。目線が散々泳いだあげく、上を向いた。

「いや、わかってるんだよ。管理者root権限取得したらから」

「えっ、あのパスワードをクリアしたのかよ?」

 やはりラルカンがrootのパスワード変更したみたい。最後の一台でパスワード・クラックに時間がかかったのはそのせいか。嫌がらせなのかな?


 確かにパスを割ったけど、正規な方法ではないけどね。でも、スクリプト使える奴ならそんなに難しいことでもないだろ。と軽い気分で言った。

「Python使ったら案外と簡単に」

「マジかよ。結構長いパスワードだったんだがなあ。ちなみにPython2派、3派?」

「Python3がメインかな。Python2の方が慣れてんだけどな。AIのライブラリとかあるし。つか、ラルカンは主にどっち?」

「AIって何だ?」

 ヤバい。嘘がバレる。

「何でもない。独り言だと思って。それよか、何使ってんだよ?」

「俺はPerl。Perl最強」

「ないわ。Perlはないわ」

「Perlは最強なんだって。使い勝手いいし、Python使う意味がわからん。でも、PerlにしてもPythonにしてもよく破れたよな」

「辞書にあるような文字は使っちゃダメだろ」

「ちょっと捻ったつもりだったんだけどな。辞書の組み合わせだけで割れるか?」

「この稼業してると、本人は捻ったつもりでも、パターンはあるわけで」

「確かにパス割りで、単語のパターンは考えてなかったな。しかし、マジでよく割れたよな」

「運も良かったし」


 詳しく話しすると脆弱性を利用したことがバレる。

 それにしても、ラルカンにはソフトウェアについてはそこそこ知識があるらしい。


 でも、個人的にPerlはないと思っている。

 ただ、言語でイケてる、イケてないという議論はハッカーの間では日常会話みたいなものだから、この議論は永久に平行線をたどることになる。

 

「てか、ラルカン。何で自分のユーザー登録までしてんだよ」

「えっ、そこまでバレてんの?」

「そりゃまあ、バレてるよ」

 ラルカンのアカウントパスワードまで割った、というのは言ってない。彼がこのパスワードを使い回している可能性があるからだ。

「マジで? 管理者root権限取得したらできないでもないか。いや、夜中にやっちゃったから。テンション上がっちゃって。パス割ってやったぜみたいなノリで」


 あー夜中にやったら、そういうのやっちゃうよね。


「ラルカンが言うのも一理ある。夜中だとスイッチ入りやすいから」

「だろ?」

「あるある」

「ユウヤって、スキルあるのな。俺達のギルドに入らねえ? 面白い奴だってわかったし」

「うーん、拾ってもらった義理があるからな。ジネヴラの所で下働きするわ」

「このリア充normalfagめ。マジ氏ねよKill YourSelf

「お前本当にわかってねえ。二十四時間耐久ジェントルマンやってみろ。本当に死ぬから」

「女ばかりってのも、確かにしんどいかもな。でもまあ、管理者root権限パス書き換えたのは悪かった。数日経ったら、ジネヴラ達が俺の所に頼りに来ると思ったんだけどなあ」


 ラルカン。マルティナの気を引きたいという気持ちはわかるが、そういう所がダメだと思う。

 ジネヴラは絶対にDHAや他ギルドを頼ったりしない。放っておいたら、十年ぐらい徹夜するよ、彼女達。


「ジネヴラには悪気はなかったって言っとくよ。セルジアとか訴えるとか言ってたし」

「ちょっと待てよ! そんな大事になってるのかよ!」

「よく知らないけど、セルジアはちょっと過激そうだし」

「セルジアって?」

「知らねえの? ジネヴラの友達で弁護士なんだって。ありゃ、ヤバいわ」

「何とかならねえ?」


 あの場所で僕の発言権があるようには思えない。好意的に僕の話を聞いてくれるのはジネヴラだけな気がする。

「期待はしないで欲しいけど」

「頼むわ。弁護士とか知り合いにいねえし」

「僕も監獄に入れられた時って、途方に暮れたもんな。もうな、昼か夜かわからなくて、地味にクレイジーになっていく、みたいな」

「えー、監獄入りたくねえ。あ、いい情報がある。お前らのギルド設立に反対している連中について。多分、根源サーバー立ち上げてギルド設立申請後、実技試験あるんだけど、何か仕掛けてくると思うぜ」


 やはり、こっちの世界も色々あるんだなあ。

 人間はどこまでいっても人間か。グレーな部分はいつまでも残るものだ。


「具体的にどこが邪魔しようとしているの?」

「俺が言ったって言うなよ?」

「いやいやいや。お前がコッソリ教えてくれたということにしとかなきゃ、お前、セルジアから訴えられかねないってば」

「そうか。でも、他に口外とか絶対にするなよ」

「わかったよ。で、誰?」


「OMGのダルシー」

 ここに来てOMG。僕はこう言わなくちゃいけないらしい。


 なんてこったいOh My God

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