”ありがとう”の心を一輪

カゲトモ

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「いや、別にいいって。まだ沢山あるし。困ってねぇから。あぁ、うん、はいはい。そっちもな、気を付けて行って来てよ。土産はいいから、写真でも送ってよ。うん、うん、父さんにも伝えておいて。ん、じゃ」

 耳から外した四角い画面に浮かぶ、赤いボタンを押して一息つく。まったく、俺は無口キャラで売って行きたいと思っていたのに、店に立つと意外とおしゃべりになるのはきっと母親からの遺伝なんだろう。父親は無口なのに。

「今年も喜んでくれるといいけど」

 今日は五月の第二日曜。世間一般では母の日と呼ばれる日だ。年に二回くらいしか親の顔を見ない親不孝者の俺でも、一応そう言う日はちゃんと贈り物をするわけで。

 まぁ恋人もいないし、自分の為だけに金を使うってなんだし。それに、年に二回くらいは親に感謝してもいいと思うんだよな。自分の誕生日と母の日くらいは。もちろん、父親のにも同じように感謝をしてるんだけど、ついつい母の日がメインになってしまっている感じはある。母の日、父の日合同で旅行をプレゼントしているからかもしれないけど。

宿泊券にもちゃんとカーネーションと黄色いバラを付けて贈ってはいるけどさ・・・ま、父親はそんなこと気にしてなさそうだからいいか。

「俺もインフィニティバス、入りたかったな」

 まるで温泉と海が繋がっているかのようなインフィニティバスが自慢の旅館。以前お客様が結婚一周年記念の旅行で行かれたところを今年のプレゼントにした。

本当は俺が行くつもりでメモしておいたのだけれど、なかなか行く機会もないし、行く相手もいないし・・・それに何か物をプレゼントするよりも最近は旅行とかのプレゼントの方が喜ぶしね。温泉に入って美味しいものを食べて喜んでもらえたら本望だ。一人息子なのにこうやって自由にさせてもらっているし。

「あぁ温泉行きたい」

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