第7話 オタクのクリスマス
12月。師匠が走ると書いて師走。
様々な個人又は企業などはせわしなく多忙となる月でもあった。
無論、我が家も例外ではなく…
「うう、今年の原稿…オワタぁ…」
そう言いながらボクは椅子の背もたれにその身を預ける様に腰と背中を伸ばし自由にする。
目の前のPCの中にはおっぱいマニアの彼女からの依頼で作成していた今年の冬コミ用の原稿がびっしりと書き綴ってあり、先程その作業を終わらせたのである。
ちなみにちゃんと保存とバックアップをしており、データは残しているので問題ナシ。
年末、しかも平成最後のコミケということもあってかヨメも知り合いのサークルも大張り切り。
自分はサークル参加はしなかったもののヨメたちの同人誌に作品を載せてくれと(半ば脅されて)参加し、先程まで作品制作に没頭していたのだ。
「はあ、以前は他人事の様に思ってたけども…うん、ホント辛い…」
徹夜、とはいかなくとも連日缶詰の様な状態は流石に堪えた。
もう一度背伸びをした後、椅子から立ち上がり、コーヒーを飲む為にリビングへと向かう。
リビングで一服しているとボクはふとヨメの姿を今日はまだ見てないことに気づいた。
ヨメは商業も含めて月初めから作業に没頭していたのだがそれでも食事の際は共にしていただけに今日一度も姿を見てないことに今更気づいた。
ふと時計を見やると正午も半分を過ぎており、まだ昼食もまだだったことに気づいたボクはヨメの部屋の前へと足を運ぶとドアにノックをして彼女の反応を待つ。
「…な~に~…」
しばらくしてやや元気のない声をドアの向こうから出す。
お昼どうする?と聞いたらしばしの沈黙の後
「適当になんか食べといて~ちょっと今手が離させないの~」
そう言って再び作業に入ったのかドアの向こうで音がする。
少し寂しい感じを抱きながらも邪魔をするのもアレなのでその場を後にし、昼食を済ませたボクはクリスマスに向けての準備をする為に買い物へと出かけるのであった。
それからなんだかんだで準備を行ってクリスマスの当日。
ケーキを用意し、プレゼントも用意できている(中身は彼女が欲しがってたゲームソフト)。
がヨメはクリスマスの当日でもその姿を見せていないのであった。
前日には入ってた仕事が全部終わってあとはコミケへの参加のみとなったらしいけどももしかして過労で倒れたんじゃないのか?と途端に不安が募り始める。
(まさか…昨日は疲れた様子見てたけども、「元気元気、だいじょうぶ~」と言ってたけども…)
いや今思えばあの表情で大丈夫というのが無理あるだろ!!
思ってても仕方ないと慌てて彼女の部屋へと急ぐ。
ドンドンとドアを激しく叩くなどいつもより慌てる感じになっているが当のボクは
そんなことまったく気づいておらず、只々ヨメの心配だけが心を支配していた。
激しくドアを叩いても反応がしない。
(ま、まさか…!?)
一抹の不安と想像が自分の頭を過る。
カギが掛かっていないことも確認しないままドアノブをおもっいきり捻ってドアを激しく開く。
反動もあってかボクはそのまま体勢を大きく崩してそのまま前のめりに部屋の中に突っ込んでしまった。
その時、柔らかに感触が顔に当たると「きゃっ」とヨメの声も重なったのだが確認できないまま共に倒れてしまう。
気づくとボクはヨメの胸に顔を埋もれている感じに倒れたことがわかる。
だがそれ以上にボクは彼女の恰好に驚いて思考がそっちに向いていた。
彼女の恰好はサンタクロースを意識した服装だったのだ。
「ご、ごめん。反応しようと思ったんだけどもこの衣装がバレるのはちょっと早いなと思って声出そうか迷っちゃって」
頬を赤らめながらそういう彼女。
だがそんな言葉含めてボクとヨメは今の状態のまま、3分ほど膠着していた。
「アハハ、ごめんね~忙しかったのもあってかプレゼント用意できなかったから」
場所をリビングに変えてヨメから事情を聴くボク。
衣装のサンタは昔クリスマスの時に作ったものらしかったのだが若干サイズが変わったらしくそれを黙々と直していた模様でボクの急なドア叩きにびっくりして我に返ったそうだ
「…」
そのことを黙って聞いていたボクを見てヨメは若干バツが悪そうな表情をして
「もしかして…怒ってる?」
「怒ろうと思ったけども同時に安心してる」
「え?」
意外な反応に虚を突かれた様な反応をした。
「キミがとても疲れてるのに大丈夫と鵜呑みにしたからもしキミに何かあったらと思うよ。自分を責めてたからさ」
ボクの言葉を聞いたヨメは照れながらもとても嬉しそうな表情を浮かべてボクの方へと移動し、優しく抱きしめた。
「ホント、キミと一緒になれてよかったと思ってる。ありがとね」
「…うん。…さあ、クリスマスパーティを始めようか!!」
ヨメの感謝を受けてボクも笑顔を出して少し慌ただしかったが平成最後のクリスマスパーティを始めるのであった。
「メリークリスマス」
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