縷々と
宵
くるひつき
さらら、さららと、虚空の一点。
桂樹に斧を振るひ続くる男の
或いは、不死の妙藥煎ずる玉兎のけわひ、だらうか。
ふと、足を止む。
丹塗りの橋の欄干が、黒々と冷えて凝る。
――昔々、此処で何某かと云ふ女が、血を吐いて倒れた。
其れは、白い肌で。
其の頬は、濡れたるやうに輝いて居つたとか。
聲が。
わたくしの耳元に。
目を転じたれば、一人の娘が、橋の袂に座して居つた。
睨むやうに、懼るるやうに、見た。この、わたくしを。
ささら、ささらと、風のやうに。
濡れて居つたのは、わたくしの手だつたらうか。
彼の
或いは……
月は、「憑き」。
魅入られた、わたくしにも、
何かが、憑いて居つただらうか。
……紅いのは……、
……今宵の月だつたらうか。
或いは、
わたくしの、手だつたらうか……
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