La Mort

藤枝志野

0.ある雑誌記者の家にて

 その話は私が書くことになったよ。見出しはこうだ。『怪奇 有望なる青年画家、変死す』――どうだい、目を通さずにはいられないだろう? もう取材を始めたんだが、これがなかなか面白い事件でね。


 先月の半ば頃、西通りのアパートで若い男が死んだ。名前はマルユス・ロアンツェン。左胸にナイフが刺さったまま、窓際で倒れていたそうだ。傷は一カ所だが、それがかなり深くて心臓に達していたらしい。部屋の中は、パレットやら本やらが床にごろごろ転がっていた――ちょうど、被害者が下手人に向かって投げつけた後のようにな。


 しかしそれほど抵抗しながら、なぜ一突きで殺されたと思う? 取っ組み合いにでもなったら、ふつう下手人にも被害者にも、小さな傷の一つや二つできるところだ。――うん? ――そうだ。この事件、まだ犯人が分かっていない。それどころか、実は自殺か他殺かさえはっきりしない。どうだ、なんとも好奇心をくすぐる話じゃあないか。


 とにかく、被害者と関係のある何人かに話を聞いてみたんだ。これがその聞き書きさ。しかし皆、言っていることがばらばらだ。もう少し聞き出せば何か見えてきそうなんだが……おい、こいつはかなり貴重な代物だ。特別に見せるんだぞ。誰にも漏らさないって信じてのことだからな。

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