スウィートソウルプリンセス

 ひと思いに終わらせてしまおうなんて、自分勝手も甚だしいと思わないかしら。私たちにとってここまでの道のりが、どれほど大切なことなのか、忘れてしまったわけではないでしょうに。


 橘かなでは哀しそうに、私に手を差し出した。

 その真意は本当に純粋で、あの人たちのようなものではないとわかっていたけれど、私は易々とその手をつかむことはできないと思った。それは、誰かに頼りたくないという私自身のプライドでもあるし、同時に彼女を巻き込む覚悟がなかったからだった。

「あなたにそう言ってもらえるのは本当に嬉しいわ。私だって同じ気持ちでいるのだもの。けれど、現実は希望でできているわけじゃない。想いとはかけ離れたことが起こりうるし、きっと私の結末は幸福なものにならないわ。だから……」

 私がそこまで言うと、彼女はぐいと私の手を強引につかんだ。

「だから、私たち一緒にいなければいけないのでしょう」

 彼女は今にも涙がこぼれ落ちそうに笑った。力を込めた手はとても強くて、私は思わず「いいの?」と聞いた。

「なにがいけないと思うのか、言ってごらんなさい」

 彼女は言った。

 そのひとことがなによりも輝いて、私は自分が向かうべき道が強く強く照らされたのがわかった。

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