帰宅と出会いと神様と。

「ただいまー」

家に帰って、荷物を置いた。

「あっつーい!」

「明日も暑いみたいよ~?」

「げっ、勘弁してよー」

キッチンで夕飯の支度をする母親と話してから、私はお風呂場へ行って、シャワーを浴びた。

 入浴を終えて、服を着て。髪を拭きながらリビングでテレビをつける。

 キッチンに母親はいない。買い忘れを思い出したようで買い物に行ったようだ。

 そうメモに書かれていた。

「え、なに!?」

私は思わず叫んだ。

 私がテレビのリモコンの電源ボタンを押すと、リモコンの電源ボタンが急に光りだしたのだ。

 その光はどんどん大きくなっていく。

 私はその光に包まれるようにして、やがて光を見続けていられなくなった。

 眩し過ぎて目を瞑る。

「わぁぁぁぁ! ミスったぁぁっ! すまんんんんん!」

声がして、再び目を開けるとそこには、おじさんが立っていた。

 辺りを見渡すと、それ以外には何の変化も無いようだった。

 私が立っているのは、自分の家のリビング。しかもテレビの前。

「わあああぁぁぁぁぁ!」

私は叫んだ。当然だ。

 ――え、何? 不法侵入!? いつの間に!? いやいや、そんなことより、通報?  母さんに電話するか?

「ちょっと、落ち着いてくれないか」

おじさん……いや、白髪に白髭。おじいさんだ、うん。

 おじいさんの言葉に、真っ白だった頭が冷静になる。

 よく見ると、そのおじいさんはちょっと宙に浮いていた。

 ――浮いてるっ!?

 地に足着けずにいるおじいさん。何? もしかして幽霊!? 私、霊感とか無いと思い込んでたんだけど!?

「私は神じゃよ?」

私の心を読んだかのようなタイミング。え、ナニコレ。

「私は君に謝らんといかんことがあるんだが、聞いてくれるか?」

優しいおじいさん――神様の言葉に大分落ち着いていた私は、こくりと頷いて、神様の話を聞くことにした。彼の年老いた見た目と若いお兄さんのような声は噛み合わなくて、現実味が無い。それがまた、そのおじいさんを神だと思わせる雰囲気を作り出していた。

 ひとまず、今現在、ここに母親が居なくて良かった。

 家には私一人。落ち着いて話も聞けるだろう。

 第一、私の家はマンションの七階。不法侵入なんて、玄関の鍵も閉まっているし不可能だ。

 あんな一瞬で私の前に現れるのだって不可能だろうし、心を読んでいるかのような会話。宙に浮いてるし、何より、優しそうなおじいさんの格好が、私の想像通りの神様で、私はこのおじいさんが神様だと、ひとまず信じることにした。

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