恋が訪れ?
カゲトモ
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恋、と辞書で引くと異性に愛情を寄せる事、と書いてある。これは今の時代にはいささか沿っていない表現だろう。だって恋とは本来、とても自由なものなのだから。
「おや、いらっしゃい。ここでははじめましてだね」
かろん、と控えめに扉を開けたのは良く知った人物だった。
「こんばんは、おじゃまします」
「こんばんは、どうぞこちらへ」
小さく頭を下げてカウンターに座ったのはいつもとは雰囲気が違う、と言っても先日偶然見た時と同じような女の子らしいふわふわとしたワンピース姿のイツキちゃんだ。黒ポロシャツに黒パンツのいつもの居酒屋でのバイト姿とは全然違う。ボーイッシュだと思っていたけれど、短い黒髪もとても女の子らしい。
「ふふ、突然すみません」
照れたように肩を上げてイツキちゃんは視線を外した。
「いえいえとんでもない。少し、驚いたけれどね」
「そうですよね。いつもと違う服装だし。私、こういうお店は初めてなんですけど、どうしても入ってみたくて」
「そうなんだ、初めてに選んでもらえて光栄だな。いつもお世話になっているし、今日はゆっくりして行ってね」
イツキちゃんのバイト先であるムギローブには何度と行っているし。てかそれよりも、イツキちゃん成人してたんだ。てっきり高校生くらいかと。
「童顔とはよく言われますけれど、これでも一応成人しています。大学でもバイトでもつい、面倒くさがって簡単なメイクしかしないから」
そう続けたイツキちゃん。今日は雰囲気が違うと思ったのは、メイクをしっかりしているからかもしれない。どことなく大人っぽくも見えるし。
「いいじゃない。若いうちは濃いメイクなんてしなくても。イツキちゃんはお化粧しなくても可愛いしね」
「や、そんなこと」
あるんだなー、それが。中世的な美人さんだから。
「それに、ミケに比べたら大概の人はメイクは薄い方だと思うよ?」
と、話しの流れでミケの話題を振ると、目の前の彼女の表情が一瞬として変わった。
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