世界を何回も飛び回る奴どう思います?

風鈴ラムネ

第1話 こんなはずじゃなかった。

朝、目が覚めた。

何もない部屋、誰もいない我が家。

我が家といっても自分で苦労して手に入れた家でもない。

「一体…なんなんだよ…」

「なんなんだよぉーーー!!!」



_______一昨日、それは起こった。


~12月31日 朝~


「い…お…なさい…おきなさい!!」

「あと、3時間…」

「べたな寝言言うなら5分にしとけゴラァ!!」

ドスン!!


「いってぇなこの暴力女!!!」

「だったらさっさと起きろこのバカ野郎!!」


彼女は東雲ユリ。

俺たちは親に捨てられた者同士、二人で暮らしていた。

親の名前も顔も知らない。

そして、孤児として施設にいるときにユリに出会った。

そこで仲良くなって。偶然同じ人に引き取られることになった。

だけど、そいつは俺たちを捨てた。

そいつの名前はもう覚えてない。

それからいろいろ苦労もあったけど何とか乗り越えてきて

二人とも16歳になった。

今は近くのパン屋で二人でバイトして、生活はなんとかできている。


「……」

「おい!!これ運べって言ってるでしょ!!」

「お、おう!!ごめんごめん」

「しっかりしてよね。まだ寝ぼけてるの?」

「ちょっとぼーっとしてただけだ。大丈夫」

「そう、ならいいけど。あっ、こっちも運んで」

「わかった。」


言葉遣いが少し荒いがちゃんと俺を心配してくれる。

こいつには本当に感謝してる。


「今日ってユリって、パン屋の手伝いあるっけ?」

「いや、今日はケイだけだよ?」

「そっか。よし、今日も頑張るかぁ…」

「頼んだよぉ?今日はカレーね♪」

「俄然やる気でてきたわ!行ってくる!」

「いってらっしゃーい」


自己紹介が遅れてすまない。

俺は東雲ケイ。

まぁ、特に説明するような奴じゃない。


「さて…仕事頑張るかぁ」


~12月31日 夜~


「ただいまー」

「おかえりー、カレーできてるよー」

「いいねぇ、さっそく食おうかな」

「ちゃんと手ぇ洗えってーの」

「はいはい」

「はいはい?」

「はい。」

「よろしい。」

こわっ。こいつこわっ。



「ごちそうさま」

「はい、お粗末様」

「美味かった。ほんと美味かった…」

「いつもと味付けは変わらないんだけどね」

「それがいい。」

「…そう。」

照れてる。かわいいところがあるじゃないか。

これからも、こんな風に一緒に過ごしていきたい。


そんなことを考えていた時だった。

明日からもこんな生活が続くはずだった。続いてほしかった。

「ねぇ。ケイ……ケイ?」

「あれ、どこいったんだろう。トイレかな」


~1月1日? 朝~


______目が覚めた。

いつも通りの天井…じゃない。

「どこだ…ここ…」

「おーい、だれかー!!」

「…だれもいないのか…?」


一日中歩き回った。足が痛くて歩けなくなるまで歩いた。

違う。違った。住んでたところじゃなかったなんてものじゃなかった。



「世界が…違うのか…?」





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