第25話 仕掛け ②
「それで、僕は島田さんがミスコンに出場するので、良いと思います」
「えぇ~っ! わ、私って、ほら、運動部入っているから髪はボサボサだし、日焼けだってしてるし、ミスコンなんてガラじゃないから!」
大慌てになっている今日子を、右手で制して徳井は話を続けた。
「島田さんはこう言ってますけど、僕の見立てでは元々の顔立ちが良いですし、髪もちゃんとケアすればOKです。僕専属のメイクさんがいるので任せてください」
「だとよ。どうする? 徹?」
「え~っ! 俺に話を振られても……どうする? 今日子?」
昌に話を振られて、俺は今日子に問いかけた。
「……徹がやれっていうなら…………やる」
「え~っ! やっぱり俺が決めるの!!」
うーん、どうする?
今日子を岡田生徒会長に近づけるという事は、今日子に危険が及ばないとも限らない。しかし、岡田生徒会長の不正も暴かなければいけない。
となると、方法はひとつっていうか、簡単な話、これしかないよな。
「今日子! やってくれ!! 今日子のことは俺が守る」
俺が意を決して言った言葉に、今日子は目を見開いて固まっている。そんな様子を見て、昌は少し頭を掻きながら話した。
「徹! お前すげーかっこいいんだけどさ! (いろいろ誤解されそうな発言だったけど)俺たちもいるのを忘れないでくれよ。今日子ちゃん! 徹だけじゃなくて、俺たちも今日子ちゃんを守るから!」
昌は話終えると、にかっと笑い、それに応じて凛先輩、真美ちゃん、徳井が柔かに微笑んだ。
「ありがとうみんな! わかった! がんばる!」
今日子は満面の笑顔で答えた。
このような過程を経て、昌の作戦が進行している真っ只中である。
「あっ! 徳井が帰ってきた」
爽やかな笑顔で徳井が教室に入ってきた。教室にいた女子生徒らがいっせいに徳井の方に歩み出したが、徳井は彼女らを手で制して、俺と昌がいる席へ近づいてきた。
「作戦は成功です! 今、岡田生徒会長から電話があって今日の放課後、生徒会室で僕と島田さんに直接会いたいって言ってきました」
徳井は話しながら、隣の席の椅子を出して俺の机に向けて座った。その間も、徳井に手で制止された女子生徒たちの視線が俺と昌に突き刺さっていた。
「とりあえずは第一段階完了かな」
昌は女子生徒らの視線も気にせず、話を続けた。
「ところで、岡田先輩を納得させる程の今日子ちゃんの写真ってどんなんだ?」
「見たいですか? びっくりしますよ!」
徳井は自信有り気に、鞄から写真を取り出し俺たちに見せた。
「えっ! これ今日子なのか!?」
俺は驚いて思わず声が出てしまった。
昌も驚いてるようで、写真をジッと見たまま固まっている。
それもそうだ、写真に写っているのは確かに今日子なのだが、いつもとは違う別人みたいな今日子がいたからだ。いつものポニーテールにしている髪は、ストレートに下ろして光に当たってキラキラ輝き、顔は綺麗に化粧が施され、目は元々二重で大きいのだが、よりいっそう強調され、周りの光が瞳に映り込んでいる。
唇は薄いピンク色のリップで彩り、可愛らしい色気が感じられ、そこいらにいるアイドルグループのメンバーにも、負けないくらいの美少女に変わっていた。
「すごいな! これ本当に修正して無いのか?」
昌は驚きのあまり、岡田先輩と同じ質問を徳井にしていた。
「だから僕言ったでしょう。島田さんは美人だって」
確かに、これだと凛先輩にも引けを取らない美少女である。凛先輩がクールな美人なのに対して、今日子は光の中から飛び出してきたかのような、キラキラした美少女なのも好対照で面白い。
「どうだ? 惚れ直したか?」
昌がニヤけながら俺に聞いてくる。またかと思いながら、昌の言葉を受け流す。
「だから、家族みたいなもんだって言ってるだろ」
「相変わらずだなあ……そんな事言ってると、誰かに今日子ちゃんを取られて後悔する事になるんだぜ」
やれやれといった感じで昌は呟いていた。
「何か言ったか?」
「いや、何も…………」
そんな俺たちの横で、同じように呟いている徳井がいる。
「羽多野君と島田さんは付き合っていないんだ………………」
妙にテンション高めで、嬉しそうにしている姿が怖い。
そうこうしてるうちに、午後の授業のベルが鳴り、昌と徳井は自分の席に戻って行った。
その戻り際、昌が俺に思いもしなかった衝撃的な一言を残していった。
「白石先輩には気をつけろ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます