僕のハーレム要員として国から押し付けられた美少女達が軒並み僕の親友に惚れてるけど、特に問題はない件
朝霧
予想外だったのは僕の親友が僕のハーレム要員になるはずだった美少女たち全員に惚れこまれたことだろう
魔王の根城まであと少しというところで僕ら勇者一行はその町に立ち寄ったのだった。
ここまで来るのに結構な道のりがあったが、総括すると大したことはなかった。
だけど。おそらくもっと人数が少なかったら、具体的に言うと僕と親友だけだったらとっくの昔に魔王をぶっ殺せていただろう。
だけど余計なのが6人もくっついているから移動が面倒くさいうえにそいつらが怪我すればいちいちその場で立ち止まらなければならなかったため、ひどく面倒でイライラした。
だから最初に言ったのだ、僕一人で十分すぎると。
歴代の勇者とやらも一人で魔王と戦って余裕で帰還しているらしいし、僕も自身、創生神とやらの加護を受ける前だってそこそこ強かったのだ。
まあ、下町でそこそこ強いレベルだったから世界的にみると大したことはなかったのだろうけど。
それでも加護とやらが付いた僕はめっちゃ強くなった、具体的に言うと加護を受けたその直後にワンパンで世界で5番目くらいに強い魔物である邪竜をぶっ飛ばせるレベルには。
加護の力は鍛えれば強くなる力でもあるらしいのでこれなら魔王とやらも余裕でぶっ飛ばせるだろうと確信した。
基本的に一人でステゴロが基本的で、周囲に全く気を使わない戦闘方法をとっている僕にとって、ともに戦う仲間はいるとかえって面倒なことになる。
馬鹿な僕でもそのくらいのことは分かった。
だから仲間はいらない、と僕はあの日王様に言ったのだ。
むしろ危険だと、地元の不良どもからも僕は味方を巻き込みかねない危なっかしい戦い方をすると恐れられているのだと。
僕の喧嘩に巻き込まれて無事でいられるのは僕の戦い方をよく知っている奴、例を挙げると姉上様と親友くらいしかいない。
僕の強さ、というか加護の強さは邪竜を倒したことで証明された、だから魔王討伐は僕一人で任せてほしいと、僕にしては珍しく丁寧に頭を下げてお願いした。
だが、あの王様はそれでもと無理矢理僕に仲間――王の息がかかった手下をよこしてきやがったのだ。
といっても、今になって分かったことだが、明確に王の息がかかっていると自覚しているのは6人のうち一人だけで、あとはほとんど無自覚だった。
それでも基本的に僕よりも王様よりの人間であることは変わらない。
しかも全員僕と同世代の美少女だった。
当時はあからさますぎて眩暈がした。
せめて一人でも男がいればあそこまでひどい眩暈を感じる事はなかったのではないかと思う。
僕は基本的に馬鹿だがそういうのは知っていた。
姉上様の友達がそういう系統の小説をよく読んでたし、姉上様からも半ば冗談で忠告されたから知ってる。
あれだろう? 美少女で懐柔させるっていう例の。
ハーレム物とかいうらしい、例のあれだ。
ふざけんな僕は女になんか興味ねえ、だからと言って男にも興味ねえ。
……待って姉上様!! 本当に男にも興味ないの、男を抱くか不細工の女を抱くかどっちか絶対に選べって言われたらためらいなく不細工の女を選ぶレベルに男には興味ないから、だから僕で妄想するのは本当にやめてくれ!!
あと僕の親友も好きな女の子いたらしいから!! もう死んじゃってるらしいけど!!
……なんで僕はここにいもしない人に必死に弁明しているのだろうか?
でもまああんな姉と姉の友人に囲まれればこんな弁明もしたくなる、妄想力の高い女どもに囲まれて育つとろくなことにならねえ。
もし万が一僕が結婚なんかしちゃったと仮定して、もしも息子とかが生まれたとしたら絶対奴らには接触させたくない、身内の姉上様は仕方ないけど、それ以外は断固として合わせたくない。
あ、息子だけじゃなく娘も合わせたくない、あいつら自分の性癖に他人を突き落とす習性をもってるから。
……なんかすさまじく話が脱線している気がするので、元の話に戻ろうか。
とにかくその美少女達が僕の懐柔のためにつけられたのは目に見えて明らかだった。
僕は突っぱねようとしたが、失敗した。
もしもあの場に姉上様がいたら口八丁手八丁でうまい事説得してくれたかもしれないが、あの場に姉上様はいなかったわけで。
僕にできたのはもう一人だけ同行者を連れていく許可を取る事だけだった。
その同行者というのが僕の従兄であり幼馴染であり親友である奴である。
やめて姉上様!! そういうんじゃないんだよ本当に何度も言っただろう!?
あんな女所帯に僕一人加わるのが嫌だったんだよ、姉上様だっていやだろう男所帯に一人放り込まれたら。
え? むしろ大歓迎? 姉上様に聞いた僕が馬鹿だった!!
とにかく嫌だったんだよ!! 僕は!!
……まあ、理由は女所帯に一人放り込まれるのが嫌だったこと以外にもいくつかあるけど。
まず、仲間として同行させられる女共は基本的に見知らぬ他人だ、簡単に信用できないし、すべてが終わった後に後ろからグサッとやられる可能性だってある。
もちろん返り討ちにできるけど、そんないつ裏切られるかわかったもんじゃない味方なのか敵なのかよくわからない連中に囲まれ続けるのは図太い僕でも神経が死にそうだ。
これが理由のひとつ目。
もう一つは、単純に奴が超優秀な治癒術師だっていう事だ。
僕は滅多に怪我をしない、怪我をしてもすぐに治ってしまう医者いらずな体質なのだが、同行させられる女共はそうではない。
なら治癒術を使える奴は必要だろう、ただでさえ危険いっぱいなのに僕みたいな周囲に気を使わず暴れるしかない危険人物と旅をするのだ、僕に医者は必要ないが、女共には必要だろう。
あとは単純に話し相手がいたほうが気が楽だとか、単純に暴走した僕を平和的に止められるのが奴か姉上様くらいしかいないとかそういう理由。
口下手なりにそんな理由を語って、奴を同行させる許可を取った。
かなり渋られたが、奴を同行させないならほかの仲間もいらんとか、いっそ魔王討伐をやめてしまおうかと臭わせたら快諾してくれた。
とにかくそんな感じで許可を取って、速攻で単身地元に戻って奴を引き連れて僕は王都に戻ったのだった。
戻った後に地元に戻らずに、もしくは地元に戻った後にそのまま魔王討伐の旅に出てしまえば万事解決だったのではと思いついたが、そう思った時点ですでに手遅れだった。
自分の馬鹿さがこういう時に心底嫌になるね、だから僕は一度も姉上様に口喧嘩で勝てないんだ。
とまあ、そんな滑り出しをした僕の魔王討伐の旅だったが、今回想してみるとこれでもそこそこの速さでここまでたどり着けたのではないかと思う。
おそらく奴をこの旅に引き込めなかったら倍以上時間がかかっていたと断言する。
それから多分4人くらい死んでたと思う。
まったく、親友様々だ。
ただ……予想外だったのは……
「ねえねえ、あっちにおいしそうなパン屋があったよ」
「あちらに素敵な外装の本屋がありましたの、付き合ってくださるかしら?」
「 服……ほつれてる……あっちに服屋あったよ……」
「 アイス屋……」
「 待て、私はこいつと剣の修業をする約束を……」
皆さん、落ち着いてください、お困りになられているじゃないですか」
「 …………」
僕の親友が僕のハーレム要員になるはずだった美少女たち全員に惚れこまれたことだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます