銀のムテ人 ＝第四幕・下＝

今までのおはなし

　銀のムテ人は滅びゆく長命魔族。

　霊山で祈りを捧げてムテを守り続ける最高神官の貴重な血を残すため、巫女として選ばれたエリザは、仕事をこなすのも子供を作るのも難しい未熟な少女だった。

　それもそのはず、彼女は最高神官サリサ・メルの「好きだから」というわがままで選ばれてしまったのだから。

　二人は、密かに愛を育んでゆくが、所詮は制度で結ばれている・いつかは永遠の別れが待っている……という現実があった。

　が、徐々に少年・少女から大人へと変わっていく間に、身も心も結ばれてゆく喜びを知り、やがて二人の初恋は苦悩と葛藤を伴うことに。

　エリザはサリサの子を身籠もるが流産、ムテに連れてこられたウーレン皇子を自分の子供と思い込み、育てることになる。

　サリサは、その子供を守るため、エリザを霊山に留めようと考えるが、霊山の気の乱れを心配する仕え人たちの訴え、サラのように新しい巫女姫を妬むだろう自分の姿、そして、「ムテのため」「最高神官のため」がんばってきた目標を失って、エリザは悩み苦しむ。

　そして、霊山を離れて生きることを決意し、山を下る。

　二人は永遠に別れたかと思われたが、子供が『人間』というムテでは受け入れられない存在だったため、エリザは危険にさらされる。

　エリザと子供・ジュエルを守るため、サリサは自分の力の及ぶ範囲である一の村に、エリザを呼び戻す。

　エリザは、そこで新しい出会いをする。

　ラウルという採石師と婚約し、サリサへの思いを断ち切ろうとするが、どうしても気持ちの整理がつかない。

　ラウルは、霊山から離れても暮らせるよう、力のある石を求めて山に入り、事故で足を失ってしまう。

　エリザは、ラウルとともに生きてゆくことを決意した。

　一方、サリサは、そうなると知っていたにも関わらず、傷ついてしまう。