第4章 彼は何処へ行った B Side

4-1 彼を探して

第41話 醜いと思うのは何故?

 これで良かったのだろう。

 そう私は思う。

 今回のお見舞いで知佳の存在は完全にクラスに周知された。

 三崎君1人の物では無くなった。

 今回のお見舞い、元々計画したのは私だ。

 ただ私が行くとは最初は言っていない。

「そう言えばGWの間の今日あたり、小島さんのお見舞いに行っておいてもいいかもね。クラスメイトだけれど顔も知らない人が多いだろうし」

 こんな話をあちこちでして、自然発火を待った訳だ。

『小島さんは結構可愛い』

 そんな情報も所々で付加して。

 朝一番から努力した甲斐あって、昼過ぎにはお見舞いの話が広がっていた。

 さあ三崎君はどう出るかな。

 一緒に行ってくれるかな。

 密かに期待していたのだけれど結果は残念。

 おばさんへの連絡を盾に1人で先行してしまった。

 まあ三崎君は元々馬久駅から自転車。

 家の方向も病院とそれほど違う訳でもない。

 私なら自転車で気軽に通う距離では無いけれども。

 それでも先発隊を案内してナースステーション着いた時、三崎君を見た時はほっとした。

 おばさんに一言告げてそのまま帰っていないかな。

 そんな不安があったから。

 あとちょっと計算外だった事が1件。

 三崎君がこのお見舞い自体をそこまで嫌がっている感じでは無かった事。

 もっと知佳に対して独占欲があるかなと思っていたのだ。

 でも今はそんな感じはしない。

 むしろ知佳にとっていいことではあるし、だから受け入れて悪い事は無い。

 そんな感じに考えているように見える。

 ちょっと罪悪感を感じて、何に対する罪悪感なのかなと自答する。

 私は何をしたいのだろう。私は何を望んでいるのだろう。

 本当は私は三崎君をよく知りたいだけ。

 それだけの筈なのに。

 今回だって三崎君の気分的負担を軽くするためだった筈。

 それなのに感じるこの罪悪感は何?

「でも骨折の方は完全に直ったし。ここで目が覚めたら入院期間が帰って短くて済むんじゃないですか」

 なんて心にもない事を言いながら、私は何を企んでいるんだろう。

 何となくわかっている。

 でも正視したくはない。

 醜いのがわかるから。

 見ないほうが醜いのかな。

 こんな私、三崎君からどう見えるかな。

 そんな事を延々と考えていたから。

「あ、糀谷さん、ごめん」

 そう三崎君に声をかけられた時はどきりとした。

 そんな自分の醜さに気づかれたかと思って。

 冷静に考えるとそんな筈はないのだけれど。

「どうしたの」

 なんとかいつも通りを装って尋ねる。

「ちょっと先にここを出る。僕の方は気にしないでおいてくれ」

「わかった」

 ちょっと考えると微妙に変な台詞。

 でも私はそれに気づく余裕がなかった。

 だから三崎君のその言葉を深く考えずに了承してしまった。

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