第35話 見舞い集団無事到着
この高校は最寄り駅まで2キロちょっと。
だから駅から来る半数はバスで、残り半数は自転車で通学している。
2キロを歩いてくる者もいるがこれはごく少数。
そんな訳でお見舞い組はまず学校の最寄り駅にて待ち合わせ。
集まったら同じ電車に乗って馬久駅に行き、そこからタクシーで行こうという話になった。
ちなみに僕は高校からはバスで、馬久駅からは自転車。
「先に行っておばさんに行く事を言っておくよ」
というのを免罪符に先の電車で先行させて貰う。
お見舞い組の1本先の電車に乗れても余裕はあまりない。
自転車とタクシーでは圧倒的にタクシーが速いから。
自転車をガシガシと全速力で漕ぎまくって。
実は昨日も来た病院に到着。
いつも通り知佳の病室へ向かう。
「あれ、今日はどうしたんですか連続で。知佳は喜ぶと思うけれど」
そういうおばさんに説明。
「クラスメイト10人ちょいがお見舞いに来るって言っているんです。まもなく着くと思うので、ちょっと先行してお知らせしようと思って」
「まあまあ。でも何か申し訳無いわね。知佳は起きないし。
ただ今日はちょうどいいかもしれないわ。この病室は知佳だけだから。GW終わりまで、ここの2人はどっちも外泊許可を取って家に帰ったし」
おっとそれは確かに運がいいかも。
少々煩くても文句が出にくい。
相変わらず寝ている知佳に軽く目で挨拶して、病室の入口で後発隊を待つ。
実際、待つほども無かった。
エレベーターから一団が降りてくるのが見える。
真っ直ぐ来そうになったので慌てて出ていって、ナースステーションに案内。
「こっち。面会者はこっちで名前を書く必要があるから」
案内して名前を書かせる。
「糀谷さんは」
案内をするはずの糀谷さんの姿が見えない。
「タクシー2台が遅れているから下で待っている」
それでこの無秩序集団が来てしまったと。
まあいい。
知佳がどう思うかはわからないが、おばさんは喜んでくれるだろう。
一通り名前を書いたところで、エレベーターがまた1団を吐き出した。
今度は糀谷さんも乗っている。
「これで全員?」
「うん。信号で結構差がでちゃって」
という事で、ここで全員揃って知佳の病室に向かう。
入口でおばさんに挨拶して、代わる代わるベッドの方へ行って対面。
「随分可愛い子を隠していたじゃないか」
小声で浦賀が僕をつつく。
こいつもある意味誰とでも話せるタイプの奴だ。
ある意味気楽でいい。
「隠していたつもりは無いけれどな」
「でも小島さんの病状を誰かが聞いた時、『わからない』って答えただろ。あれでクラスのほとんどは三崎と小島さんはあまり繋がりが無いと思ったんだぞ」
「どう聞くかは受取人の権利だ。それに病状はあの時と変わっていない。つまり『わからない』だ」
「まあ間違ってはいないけれどさ」
「いやそれは詐欺だ」
新たに馬堀慎治も僕の糾弾に加わった。
「馬堀お前は本来はたわわ派だろ」
浦賀が妙な指摘を馬堀にしている。
なおたわわ派とは巨乳派ともおっぱい星人とも言う。
「いやこういう小柄美少女もいい。今そう思った」
こらこらおばさんの前でなんという会話をしているのだ。
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