第Ⅳ篇「妖精たち」
☆☆☆☆★★★
路上で繰り広げられる
《発砲を許可するっ、脚を狙え!》御影の指示――すぐに戦術班が後輪めがけ機銃を
パン・パン・パン・パン――パンク音と共に車体がスリップ。
トレーラースィング現象――V字に折れ曲がった車両がガードレールをぶち破る。そのまま
制御を失ったトレーラーが、敷地内の線路を乗り越える→整備中の国鉄車両に突っ込む→激突=燃料に引火。
先頭の
燃える炎――俄かにその奥でトレーラーの荷台が音を立て展開――隔壁を殻のように破り、姿を現す鋼鉄のシルエット。
まるでトレーラーから孵った奇怪な化け物――球形状の装甲がガチガチと展開/その円周をグルグル周回する
《
A分隊の軍用機体×五が敵に狙いを定める=レーザー照準――四方からの十字砲火態勢。唐突に敵機体の上部がスライド=装甲が展開――球形の頂点で生ずる輝き――広がる二枚の〈羽〉。
まるで種子の萌芽――芽生えたばかりの双葉のように、左右へと展開される二枚の羽が、ヘリの
浮上――A分隊の機銃掃射に見舞われるトレーラーだけを跡に残して、空へと飛び立つ敵性機体――翼の生えた生首の巣立ち。
驚愕する御影=呆然。《と、飛んだだと……?》
水無月。《空中機動型EI兵器〈タロース〉だ。対空装備が追加された改良型で、機体上部のローター式〈
慌てて逃げ惑う地上の軍用機体に向け、〈タロース〉が頭上から機銃を
夜を切り裂く悪意の業火――それが突如、次々と爆発。
宙に生まれる火球・爆炎・黒煙――それらを貫き星空を駆ける、三つの輝き――白金・翡翠・瑠璃。「真打ち登場ですのっ!!」
天姫――身の丈ほどもある巨大な槍を携え、堂々たる気勢。
「比叡さん、春奈さん! 敵を要撃地点までエスコートして差し上げなさいっ!」
中世の女騎士のように大仰な仕草で、槍を振り下ろす――その姿を捉えた〈タロース〉が反撃開始=再び火を噴くロケット弾――十条の火矢が少女+地上の軍用機体に向け飛来。
「おっと、そうはさせないっすよ~♪」
宙を走る翡翠の輝き――比叡=瞬発力と直線加速力に優れた
空中で
両腕がくるりと展開=肘間接の先に装備された
二門の
「さっすが比叡選手! 敵のシュートを
自分の戦果を自分で解説=セルフ実況/まるでスポーツ番組のアナウンサー気取り。
〈タロース〉の探査装置がカシャカシャと目まぐるしく動く――攻撃の障害となる少女を
猛烈な砲火――比叡=先程の自己に劣らぬ敵の掃射をかわす・かわす・かわす――照準すら許さぬ、急加速・急制動・急旋回。バッタのごとく空を縦横無尽に飛び回り、敵を翻弄。
意思なき兵器が、怒りに我を忘れたかのように執拗に追随――宙で繰り広げられる、少女VS青銅生首の追いかけっこ。
おもむろに比叡が
「でた――っ! 必殺の……比叡ちゃんシュゥゥゥ――ット!!」
がこんっ! すれ違い様に、少女の痛烈なキックが炸裂。
ジェットで倍加された機械仕掛けの脚力による蹴り技が、徹甲弾よろしく敵の装甲を痛打――丸い甲殻が変形=歪む/凹む――片側のロケット弾ポットが使用不能に――特大のサッカーボールと化して宙を蹴り飛ばされる。
「比叡選手ナイスパース♪ ……そっち行ったっすよ、春奈っち」
吹っ飛ばされる〈タロース〉――市街地からドナウ運河方面へ。
敵が態勢を立て直す――ぼんっ! その装甲上で、俄かに爆発。
再びの衝撃にまたも翻弄される敵機――ぐらぐら揺れる機体/回転を上げる羽で姿勢制御=自らを攻撃する相手を探査・索敵。
全天を精査する単眼――その周囲の宵闇=何もないはずの空間が続けて爆発――ぼんっ!「キシシ……。ウチのフレンズからは逃げられないし……」
〈タロース〉の頭上で虚空が陽炎のように揺らめく――スゥ~ッと幽霊じみた陰湿な気配を漂わせ、機甲を纏った少女が出現。
「ウェヒヒ……。
春奈――その背でゆらり、ゆらりと揺れる輝き=対光学・透過防壁による
残響を残して、少女の姿が機雷群と共に幻のように掻き消える。
ぼんっ! EI兵器のすぐ側で三度目の爆発――透過被膜を付与された
亡霊じみた
幽鬼のように闇夜を漂う姿なき少女――音響探査でその羽音を捉え、敵が回転羽を唸らせて後を追う――その頭上で
機雷から散布される電波撹乱物質によって、探査装置を阻害=EI兵器の索敵力が低下した!
機雷から散布される液状金属片によって、機銃の動作を阻害=EI兵器の攻撃力が低下した!
機雷から散布される腐食性ガスによって、装甲を腐敗・浸食=EI兵器の防御力が低下した!
機雷から撒き散らされるベアリング弾によって羽が削られる=EI兵器の飛行力が低下した! なんとか反撃を試みる敵の至近でさらなる爆発――残っていた全てのロケット弾に引火・誘爆=EI兵器の発射ポットが使用不能!
繰り返される
機雷のコンボに翻弄される敵――散々にいたぶられ、いつしか市街地から完全に引き離されて、広く空けた空間――
《フヒヒ……。天姫センセー、遅れてサーセン》
「――よくってよ。お二人とも、ここまでの
天姫――その背に煌く甲殻の
手にした特大の
真っ正面から・真っ正直に・真っ向勝負を挑む少女=まるで決闘に挑む中世の誇り高き女騎士――〈タロース〉が残った機銃で迎え撃つ――
背に広がる白金の羽が輝きを帯びる――甲殻の鞘羽=羽を構成する
羽の抗磁圧サーキットが発動――内部で循環・加速された防性の抗磁圧が不可視の鎧となって、襲い来る弾丸を全て蹴散らす。
天姫=回避機動すら取らず――
重攻かつ華麗・勇猛・果敢――止める者とてない強烈な一撃が、敵の装甲を貫く!
槍の
それを逃さない白金の輝き――鳴動する四つ羽が高周波の音色を奏でる――ジェリコの
唸りをあげる
天から降り注ぐ杭に打ち付けられて、磔にされる〈タロース〉――さながら宙に縫いとめられた昆虫標本。
「これで
長槍を構え直す天姫――止めの吶喊/一条の炎となり敵を貫く。
激烈なる長槍の突撃――敵の単眼を突き破る/内部を破砕穿孔。
槍全体が上下に展開――背の羽=抗磁圧サーキット内で再び加速される攻性の抗磁圧――共鳴する穂先に集束――圧倒的な破壊の奔流が、金色の槍となって天を貫いた。
夜空を切り裂く燐光――その光に串刺しにされ、天高く打ち出された敵機体が内部から崩壊=爆発四散――爆ぜる火花/千切れ飛ぶ羽/砕ける装甲/融解する各パーツが弾け飛ぶ/煙巻く爆炎。
内部から弾け飛ぶ敵――特大の打ち上げ花火ように、火を撒く炎のオブジェとなって、
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