第17話 混沌5

 陽が上る頃藤林の屋敷から後ろ手に縛られて馬に乗った幸作の周りに、10頭の馬が囲むように街道を走る。小頭と茉緒はすでに最初の宿場町に到着している。すでに柘植からの伝令が戻ってきている。この男が抜け忍村では一番足が速い。お頭の伝令は足は遅い。これは片目の以蔵の企みが始まっている。

「ここの宿場で足止めを食らうだろう」

 彼は地図を出してきて、

「この峠に柘植の忍軍が30人ほど集められている。藤林は証人を失うわけだ。だが万が一幸作が生き延びることがあったら息の根を止める」

「証人が生きていると不味いのか?」

「柘植も服部も困る」

「抜け忍村も幸作を消さないと生きていけない」

「お頭は?」

「運が悪ければ巻き添えを食う。だから伝令を遅らせた」

 藤林の到着を確認してから小頭達は出発する。1刻も走ると峠の手前に着く。ここでもし逃げきたら幸作を殺すことになる。ここからは街道を登ってくるのもよく見える。2刻も遅れて馬を降りた藤林の忍軍が街道を登って来る。どうも服部に馬を下されたようだ。草むらから幸作の顔を見る。忍者に向かなかったと茉緒は呟く。

 峠を登りつめる手前に草むらから弓矢が飛び出した。5人がバタバタと倒れて残る5人が幸作を守るようにして下がってくる。幸作が懸命に走り抜けてくる。その時魁の頭が飛び込んでくる。8人の下忍の足が急に止まって魁だけが飛び込んできた形になった。茉緒は誰となく身構えた。

 小頭が走り出してそのまま魁の体を切り抜けていく。その足で取って返すと倒れている幸作の首をはねる。もうすでに柘植の忍軍の姿はない。下忍がゆっくりと追いついてきて魁の首を刈る。




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