異世界ガチャでスローライフ~美少女に囲まれて無双します~

クラゲん

第1話異世界転移はガチャから始める

同時に『この俺が異世界転移したならばっ!~才能スキルで異世界最強!~』も進行しています。

こちらはあまりストックがないので少しゆっくりめです


──────────


「課金ガチャってのは、本当に沼だな…はぁ…泣きそう」


 俺は目の前に並んだ諭吉の残骸、つまりプリペイドカードを見て呟く。


 最近流行りのスマホゲーム。『WウェポンGガールズWワールド』、略してG2Wだ。


 このゲームは武器と女の子が一体のゲームであり、戦うのも中心になるのは主人公ではなく、女の子なのだ。


 ガチャでは、Rレア SRスーパーレア URウルトラレア LRレジェンドレアの四種の武具が出てくるが、その中でLRの武器だけが女の子として出てくる。


 RやSR、URの武器やLRの防具は主人公の装備として排出される。


 で、だ。今日はG2Wで『一周年記念ガチャ』が開催されている。その名の通りG2Wの、一周年を記念したガチャだ。今までに出てきた限定LRキャラや新限定のLRキャラが全て現れるという伝説的なガチャだ。


 そして俺も、そんな記念ガチャという名の『沼』に沈められかけていた。


「これが俺の…最後の10連ガチャだ」


 スマホに写っている魔石の数は50個。丁度10連ガチャが引ける数だ。今までのガチャは全て爆死。100連はしているのに一回もLRは出ていないのだ。


「次こそは当てて見せるっ!絶対にっ!」


 俺の目的はただひとつ。ガチャ内容の中で異彩を放つ『???』。それは運営も言及すらしていない、LRだ。

 多分、新しいキャラクターだと思うがわざわざ『???』と記しているところを見ると、とびきりのキャラだろう。


「頼むっ!この俺の指よっ!輝けっ!!」


 10連ガチャのボタンを気合いと共に押す。

すると画面に豪華なテーブルが現れ、その中央に丸く白い宝石が置かれている。更にその下に『祈りを込めて宝石を壊すのだっ!』と書いている。


 この画面を今まで何回見ただろうか…運営はLRの確率をかなり下げていて、俺も1年間やってきているが1体しか持っていない。

 俺の運が悪いのかもしれないが、それでも1年やって1体も持ってないやつだってザラにいる。

 でも、出るかもしれないという可能性は捨てきれないのだっ!


「たとえ限りなく少ない可能性だったとしてもっ!そこに可能性があるならっ!俺は引いてやるぜぇえっ!!」


 俺はとびきりの気合いを指に集中させて宝石をタップする。


 すると宝石の色が変わっていく。黄色、青色、赤色……


「順調だぞ…R、SR、URは確実だっ!」


 そして宝石が


 …


「またかっ!?」


 壊れると画面が白く染まり、リザルト画面。つまりガチャ結果になるのだ。そこまでに赤色の上、虹色の宝石にならなければ終わりだ…終わった…俺の諭吉……


 しかし、そこには見たこともない光景が広がっていた。


「か………?」


 そう、『確定演出』。それはLRのキャラクターが必ず出てくるという演出だ。今回の一周年記念から初めて作られた演出だと聞いている。

 その演出になると、普通の虹色の宝石と違って確実に、それも必ず限定の武器キャラクターが出てくるのだ。


「き…………来たァァァァッッ!!!」


 画面には、豪華なテーブルではなく、神々しい神殿のような場所の祭壇があり、その上に虹色の宝石が鎮座している。


 確定演出はユーテューブにも投稿されていない、まだ誰も見たことのない演出だ。


「これで……『???』が手に入るっ!よっしゃぁぁぁあっ!!」


 俺は叫び、手に汗を握りながら、震える指で宝石をタップする。


 すると、宝石が光輝き、眩い光が画面を多い尽くす。いつもの白い画面よりも明るい。


 そして、光が収まり始める。


「…………」


 俺は何も言えずに、無意識に息を止めてリザルト画面を待つ。


 すると


『やったねっ!君は確定演出を引いたっ!『???』を当てたんだよっ!何億分の一の確率を君は引いたんだっ!』

「ふぇ?」


 いつものリザルト画面ではなく、薄い布を着て、頭の側面に花で作った冠のようなものをつけている少年がひとり、画面一杯に現れ、元気良さげに話しかけてくる。

 あまりの驚きに情けない声が漏れる。


『あれあれ?まだ信じられないかなっ!?まあそうだよねっ!確定演出は君が初めてだしっ!なんたって何億分の一の確率だからね!!』


 やけにハイテンションな少年が囃(はや)し立てる。

 やっぱり俺が初めてなのか…ていうか、この画面はなんだ?何億分の一?確率絞りすぎだろ運営!えっと……えーっと……どうなるんだこれ?


『まだ状況が掴めないかなぁー?まあしょうがないよねっ!時間はあるからすこし話そっか!!』


 時間がある?どういう意味だ?というか、なんだこの少年。まるで俺が見えているみたいに喋っている。新しいシステムか?


『あー…もしかして僕のこと疑ってるぅ?ま、いいやっ!話進めるよ!』


 突っ込みどころが多過ぎて、唖然としてしまう。


『えっとねー!まず説明からさせて貰うとっ!『???』の中身は、『』なんだ!簡単に言えば一定期間の間異世界で過ごせるってものだよ!』


 異世界旅行チケット…?異世界で過ごせる?


「キャラクターじゃなかったのかよぉっ!!?」

『うわっ!?急に叫ばないでよ驚くなぁ』

「それよりもっ!キャラクターじゃないのか!?なんだよ『異世界旅行チケット』って!」

「だから言ってるじゃないか、異世界に行けるって」


 また言わせるのぉ?と言わんばかりにダルそうな顔をする。


「ていうかなんで会話できてんだ!?お前はなんなんだよっ!?運営か!?」

『落ち着いて、僕についてあまり説明できないけど、ある程度の質問には答えるから、ちょっと落ち着いてよ』

「はぁー…はぁー……」


 俺は荒れた息を整えながら、考える。

 コイツは一体なんなんだ?これはゲームじゃないのか?『G2W』じゃなかったのか?こんな展開聞いたことがないぞ。

 それに、『???』の中身が異世界旅行チケット。異世界で過ごせるなんていう物らしい。なんだそれ?俺は最強のキャラクターかと思っていたのに……


『そろそろいいかなっ!』

「あ、はい」

『うんうん、じゃ、質問はあるかな!?』

「はい!先生!」

『はい!そこの君!何かな!?』

「先生の名前はなんですか?」

『うーん、名前かぁ。じゃあ適当にゴッドちゃんって呼んでいいよ』

「えらく上からだな…ゴッドちゃん…」

『他に質問はある!?』

「えっと……あっ!なんで普通に会話できてるんだ?」

『それはねー、僕がゴッドちゃんだからだよー!』


 なんか頭悪い答えが帰ってきたな。とりあえず答える気はないと。


「じゃあ異世界で過ごせるってどういうことなんだ?」

『簡単だよ、異世界で過ごせるんだ』

「だから、どんな風に?」

『どんな風に?普通に異世界で過ごすだけだけど?』

「異世界って、どこだよ?」

『異世界って言ったら異世界だよ。『G2W』の世界さ』

「なん…だと?」


 G2Wの世界。それはつまり、あのキャラクターやこんなキャラクターまで会えるっていうのかっ!?そんな素敵なことが!?


『うんうん、やっと本題に近付いてきたね!じゃあ説明するけど、異世界に行くときには、この君のスマホを持っていけるんだ!』


 ゴッドちゃんはスマホの中身を飛び回る。


『そして、異世界ではガチャが引けるんだよ!』

「マジでか!」

『そう!そしてLRをゲットした暁には!言うことをなんでも聞く女の子を手に入れられるんだ!』

「マジかぁっっつ!?」

『いいねいいね!その反応!!そうだよ!異世界に行ったらそんなことが出来るんだよ!』

「でも異世界に行ったところでLRを引けるかどうか…」

『大丈夫っ!確定演出を引いたんだからそこは確率を引き上げておくよ!それに最初に一回だけ10連ガチャをさせてあげるからそのときはLR確定にしてあげるよ!』

「最高だよゴッドちゃん!」

『ふへへ、そうかい?うふふ』


 ゴッドちゃんが気持ち悪い笑みを浮かべて喜ぶ。それにしてもマジかぁ!このG2Wは可愛い女の子だけしかいないからね!それが言いなりってそんな…ふへへ


『どうだい!?行く気になったかい!?』

「おう!でもまだ質問良い?」

『あ、うん。君意外と冷静だね』


 当たり前だ。こんなときに限って落とし穴というものはあるものだ。絶対に油断はしないぞ!


「電池はどうするんだ?スマホだから、電池は無くなる」

『そうだね!至極もっともな問いだ!それに関しては心配しないで!モンスターを倒せば、その魔力を吸いとって電池を増やせる!』

「モンスターいるの!?」

『当たり前じゃん!このゲームにもモンスター出てくるでしょ?』


 確かにそうだ。そうか、モンスターが出てくるのは当たり前か……え、ちょっと怖いなそれ……


『でも、そのためのLRじゃん!女の子に守ってもらったら良いじゃん!?』

「それはそうだが…でも女の子は守る側の方がいい…ていうのわがままかな?」

『ふぅん…』


 ゴッドちゃんはさっきとは違う雰囲気で目を細めてこちらを見る。

 何か気にさわったか?いやでも、女の子に守られるのはなんというか、プライドが許さん!


『気に入ったよ!よし!なら強くならなきゃね!』

「え?あ、うん」

『強くなるためにはやっぱり経験だよ!とりあえず異世界に行ってから考えようよ!』

「いやそれには騙されないぞ!親にもなんか言っときたいし!」

『あ、それはこっちでなんとかしとくから!ほらもう時間もないし!』

「ちょ、ちょっと待てって!」


 急に急かしてくるゴッドちゃんに戸惑う。

 しかしゴッドちゃんは問答無用といった感じで進めていく。


『じゃあとりあえず向こうの町の近くに送るから!適当に頑張ってね!期限は1年間で、帰るときに異世界に残るかどうか聞くからねー!』

「は!?ちょっと待ってくれよ!まだ質問したいことが…」


 早口でしゃべるゴッドちゃん。いつの間にか周りが光だして視界が眩む。

 そのまま意識が無くなっていき、最後にゴッドちゃんの顔だけが近くに見えた。


『楽しんできてね!ばいばーい!』


(なんて勝手なやつだ…)


 俺は意識を沈めながら心で悪態を吐く。


 俺は普通にガチャをしていたはずなのに…何故か異世界に行くことになってしまった。


 こうなったら異世界ガチャで1年間過ごしてやるぜ!

 LRの女の子と一緒にゆっくりスローライフを送って楽しんでやる!


 俺、綾小路(あやのこうじ) 裕太(ゆうた)は、そう覚悟を決めた。




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