詩集『クロハウチカソトカ』
雨月 秋
a suicide
刃のないナイフを探している、傷のつかない刃物を探している。血を見るのが苦手だから。痛いのは嫌だから。この手に確かなものを握って、その先端の輪郭のない刃で、心を突き刺したい。だけど、心がどこにあるのかわからない。ありもしない胸か、足りない頭か、傷だらけの指先か、一歩も踏み出せない足か……いったい、どこにあるの? そして、やり場のない感情ばかりが心に溜まっていく。感情の存在はすぐそばに感じるのに、その居場所は分からない。迷走して、迷走して、私自身の居場所も見失ってしまう。――誰か、刃のないナイフをちょうだい、傷のつかない刃物をちょうだい。誰も血なんて見なくていいから、痛い思いなんてしなくていいから。
ただ、この感情に区切りをつけたいだけなの。
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