空白の運命と渡り鳥
みの湯雑心
プロローグ
「随分遠くまで歩いてる気がするがまだ着かないとはな」
二人分の荷物を背負いながら、金髪の青年は確認するように言った。
「全く、お嬢サマの乙女の勘って奴は信用ならないっていういい教訓を得たぜ」
同じく、二人分の荷物を背負いながら黒髪の青年は金髪の少女を見る。
「はぁ、はぁ、そもそもこんな霧の中、どこに歩いたって変わんないんだから、行きたい所にいくのは当然でしょ」
長い行進に心身ともに参っているのか、顔を上げずに少女は答えた。
「でもこうして霧の中を漂っていると、まるで想区から拒絶されてるみたいだね」
同じく疲労困憊になりつつも、持ち前の明るさを失うことなく、四人組の、一番「特別」な少女は、苦笑しながら言った。
それを聞いた三人は自虐ともいえる複雑な感情を抱きながら沈黙する。
「あわわ、ごめん、今のそういう意味じゃなくて、目的の無い想区には入れないかもしれないっていうフォローのつもりだったんだけど・・・」
少女は慌てて訂正する。
それを捕捉するのはいつも彼だった。
「確かに、何もない平和な想区が、部外者で
「もしかしたら空白の書の持ち主の役割自体が、混沌と化し、崩壊しつつある想区の修正にあるのかもしれないな、おチビもたまには賢い事言うんだな」
「たまにじゃないから!わりと・・・けっこう?・・・ほどほど、位の頻度で言ってるかもしれないから!」
そんな風に言い合う様は、まるで幼い頃より共に過ごした兄妹のように穏やかだった。
「それにしても空白の書かぁ、謎の多い物だけど、「調律の巫女」達は一体どんな人だったのかしらね、きっと彼らについて調べれば、謎は解けるとみた!」
その言葉がきっかけになったのかもしれないし、ならなかったのかもしれない。
だけどいつになく長い道のりの果てに彼らはたどり着いた。
――――「調律の巫女」の想区に。
空白の書と、遥かなる英雄の外伝物語、ここに始まり始まり。
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