不可知を無と結論付けるのは早とちり

夏美:また不可知論へ戻るのかな?

翠:はい。姉様。

夏美:神様や霊魂の存在は科学的に立証できないので議論するのは止めましょう。みたいな理屈でいいのかな?

翠:概ねそうだと思うのですが、不可知論といっても「有るけど証明不可」から「不可知=無」まであります。その考え方にはいくつかあるようですね。

夏美:なるほど。色々あるんだな。

翠:例えば、仏教で無我という言葉があります。これは現代では我=魂が無いと解釈する場合が多いようですが、原始仏教では我=我執とし無我は我執の否定を意味していたようです。執着を捨てる事ですね。仏教が途中で別の解釈をした訳で、これは先ほど説明した不可知論の「有るけど証明不可」を「不可知=無」とした例だと思います。

夏美:なるほどなるほど。と言いたいんだけど、仏教の話をされても良くわかんねぇ。

翠:ここは深く追及はしません。

夏美:ありがたい。CPUが熱暴走するところだった。

翠:いきなり天文へ話題を変えます。

夏美:よし来い!

翠:姉様はダークマターとダークエネルギーって言葉知ってますか?

夏美:ああ知ってる。シスの暗黒教の支配下にある領域と暗黒教の操るエネルギーの事だ。ダークフォースの源だな。ジェダイのフォースと接触すると対消滅を起こすんだ。

翠:姉様、その回答は教育的指導です。某有名SF映画と反物質とダークマターを混同しちゃってますよ。ワザとボケてるんでしょうけど。

夏美:あはははは。俺、こういうキャラになっちゃったんだよ。誰かさんのせいで。

翠:あのど阿呆は後でとっちめてやりましょう。話を進めます。

夏美:よし。

翠:ところで姉様。太陽系の惑星って知ってますか?

夏美:水金地火木土天海冥だな。おっと、冥王星は惑星じゃなくなったんだっけ?

翠:2006年に惑星から準惑星へと分類が変更されましたがここでは問題ありません。水星と冥王星では公転速度がどう違うのか?

夏美:任せろ。速度は平均、単位は全て毎秒だ。水星 47.36km、金星 35.02km、地球 29.78km、火星 24.08km、木星 13.06km、土星 9.65km、天王星 6.81km、海王星 5.44km、冥王星 4.68km、こんな感じ。外へ行くに従って段々遅くなってるんだな。

翠:そうですね。では銀河系の場合はどうでしょうか?太陽の軌道速度は217km/sだと言われています。太陽よりも内側だと早く外だと遅いのか?中央部やバルジを除くと210から240 km/sでした。ほとんど同じなのです。

夏美:お、銀河の回転曲線問題だな。観測された質量ではこの運動は説明できないんで、ダークマターという仮説で誤魔化してるんだ。

翠:誤魔化しているというのは言い過ぎですよ。元々は銀河団の中の銀河の軌道速度を測定したときに質量欠損があると判断され、ダークマターを仮定しないと計算が合わなかったんです。1930年代の話です。その後、ダークマターを裏付ける観測結果が報告され始め、その一つが銀河の回転曲線問題なのです。これは1970年代に報告されています。

夏美:そうだったけな?でも未だに正体は不明なんだろ?

翠:ええそうです。正体不明。謎の物質。ではダークエネルギーとは何か?

夏美:これは、宇宙の加速膨張を説明するためにでっち上げた理論だったかな?

翠:姉様。また無礼な言い方をする。元々は重力の影響で宇宙は収縮すると考えられてました。それがハッブルの法則が発見され宇宙は膨張していることが分かりました。

夏美:ふむふむ。

翠:それでも重力の影響で膨張する速度は減速しているのではないかと考えられてました。ところが。

夏美:ところが?

翠:宇宙の膨張は加速していることが観測から分かりました。

夏美:じゃあ重力を打ち消す他の何かがあるって事だな。

翠:ええ。それはダークマターにちなんでダークエネルギーと名づけられました。1998年の事です。

夏美:重力と反対の作用をする謎のエネルギーでいいんだよな。

翠:ええ、正体不明のエネルギーといわれてます。ちなみに、宇宙の質量及びエネルギーに占めるダークエネルギーの割合は68.3%、ダークマターは26.8%、原子は4.9%らしいです。2013年3月、欧州宇宙機関の発表です。

夏美:ええええ?何だ。わかんねモノばっかじゃねえか。分かってるのは全体の5%弱。なんだよな。

翠:ですです。5%弱。

夏美:もう飽きてきたよ。結論ヨロ。

翠:仏教と天文学を例に挙げましたが、人間の認識とは時代によって変化しそれに従い不可知領域も変化しているのです。

夏美:あ、それはつまり過去認識されなかったものが現在は認識されている。逆に過去認識されていたものが現在は認識されなくなった可能性がある。こういう事ね。

翠:その通り。

夏美:それをテーマに関連付けるとどうなるの?

翠:古より霊界や霊魂は信じられていましたが、現代の認識によりそれを否定するのは早とちりである。です。まあ否定するならダークエネルギーの正体を暴いてからにしてね♡です。はい。

夏美:霊魂の否定をするには科学技術はまだまだ未熟なのかもしれんな。

翠:ちなみに作者は、いわゆる宗教的な霊界観をがっつり信じてます。

夏美:まるで疑ってないね。

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