第3話 魔王インテルの憂鬱
「人族領で異変?」
魔王インテルは部下の報告にクビを傾げる。
「爆発が確認され、その時に観測された魔力量は1200000ハイドということでございます。」
「おいおい。まことか?人間にそんな魔力が存在するはずもなかろう。」
人間は脆弱で鎧袖一触だ。
にも関わらず調子に乗って我が同盟国の同胞を傷つけている。
必ず贖わせる。
「それが、勇者召喚の儀が行われたようです。」
「勇者召喚の儀だと・・・・?」
笑わせる。
自分らで解決出来ないクズどもが異世界の勇者に頼ろうというその性根が。
本当に腐ってる。
と心の中で思いながらもそれは口にしなかった。
「勇者とは何者だ?」
「我が手のスパイからの情報では、獣人らしいのですが、『タカナシユウ』と名乗ったそうです。」
「タカナシユウだと・・・・?」魔王は一瞬はっと表情を変えた。
「何か?」
(・・・・あたしの記憶では・・・・・彼は獣人なんかじゃない。)
それは遠い記憶である。
あの世界には獣人など存在しないのだ。
魔王城・最上部では主であるインテルが黄昏れていた。
彼女には前世の記憶がある。
この世界ではなく、もっと文明が進んだ世界だった。
そこは日本と呼ばれてた国だ。
彼女はそこでごく普通に恋をして、ごく普通に結婚して、ごく普通に子どもを産み育てた。
非常に心残りだったのは幼い子どもを残して交通事故で死んでしまったことだ。
その経験こそが彼女に人族領への本格的な侵攻を躊躇させるものだったのだ。
彼女が人間だった頃幸せだった。
そんな自分に無辜の人間の幸せを奪う資格があるのかと葛藤してきたのである。
異世界の勇者に頼ろうとかいう無能な輩はどれだけ殺しても良心は痛まないが、それ以外の無辜の民草を殺したらはたして残してきた息子に胸を張って誇れるのかと。
二度と会えない・・・・と思っていた。
しかし名前を聞いたときからどうしようもない衝動がこみ上げる。
小鳥遊 優は、あの頃は5歳ぐらいだったと思う。
(会わなければならない。)
そう思ったインテルは配下の魔人を呼ぶ。
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