キチガイ

高岡 望

第1話 オワリノハジマリ

この世界はおかしい。

皆おかしい。皆狂ってる。

いつからこんなことになった?

皆これが普通だと思ってるのか。

絶対おかしい。

今でも夢を見てるのかと思う。

でも折れた右腕の痛みが、これが紛れもない現実だということの何よりもの証明だろう。

痛い。なんなんだあいつ。

いきなりだ。俺は何もしてない。

なのにあいつはいきなり俺の右腕を折ってきやがった。

まるで木の枝でも折るかのように、簡単に。

ありえない方向に曲がる俺の右腕。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

なんとかあいつから逃げてきたけど、ここが見つかるのも時間の問題だろう。

死にたくない。

俺には妻も子供もいるんだ。

俺が死んだらあいつらはどうなる。

子供はまだ一歳なんだぞ。

死ねない。まだ俺は死ねな―――


「みーーつけた。」


やばい見つかった!

殺される!逃げなければ!


……あれ?脚が動かない。

なんでだよ、ビビってんのかよ!

逃げなきゃ殺されるんだぞ!

動けよ俺の脚!

……おいお前、何持ってんだよ……

それ人の脚か…?

………おいおいおいおい

それ………

俺の脚か?

そうか、そりゃ動くわけねぇな…。


だって俺の身体、上半身しかねぇもんな。


死にたくねぇなぁ…。

はぁ、やっぱりこの世界はイカれちまってるよ。

だってよ、今から俺がこいつに殺される光景は周りの奴らからしたらなんだもんな…。


はーー、まじで死にたくな―――


これは街の片隅で起きたオワリのハジマリ。

頭の壊れたキチガイ達の物語の幕開け。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る