弐(2)
わたしは肉体から浮遊したような精神と、窮屈に重く持て余す「女」の肉体を抱えて小学校へ上がりました。
当時のわたしは、自身を「女の子」だと思っていない事に、何の疑問も抱いてはいなかったのです。肉体は確かに「女」でしょう、けれど「女の子」の自覚は何処にも無く、其の状態を至極当然のものと受け留めて、……何者でもない虚ろな器、物語の中に入れば何にも染まれる透明な人形、其れが自分であると、当然に納得していたのです。
背を向けるたび捲られるスカートが煩わしく、彼の子の行いを教師に訴えた事は朧気に記憶に在ります。彼の子が若し、真実「男の子」であったのならば、あれこそわたしが初めて遭った、「女」のわたしへの悪意、好色、欲望、其の類だったのやもしれません。
望むと望むまいと関係無く、生物であるわたしの身体は、漠然とした年月の中で変化していきました。最初は
そのうちに
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