第三十三話:高笑いとため息

「ボア程度のモンスターじゃ、この程度のもの(殺戮)か…。はぁ…」


野良街を俯瞰する黒い影がぼやいている。


「仕方ないよ。今回はお試し期間中だから」


そのぼやきに、やけに明るい声で応えるもう一つの黒い影。


襲撃を受け、復旧作業を進めるノラ街に潜むその二つの影は、つまらなそうに街を見下ろしている。


だいぶ街の火は収まってきたようで、職人スキルを持つ連中を中心に家屋の修繕作業が行われている。


「よっと」


パンパンと尻に付いた汚れを落とし、スッと立ち上がる。


「兎に角、今回はお試しだから。こんなもんさ。さっ、報告報告」


明るい声の黒い影がだるそうなもう一つの影に諭す。


「それに今回は面白いものも見れたしっ」


視線は二人の冒険者を追っている。


「ああ…、あの最後にトドメをさした冒険者か。はぁ…」


「ルースの王も御登場って感じだし、結構面白くなってきたよね」


「どこが…。はぁ…」


「さ、帰って報告よ。あの方の殺意の矛先が私たちに向かないうちに」


スッ。


不気味な笑みを残し、影は一瞬のうちに消えた。

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