社会のデザイン

少し前だけれど、お茶の水女子大が「性自認が女性」の学生も2020年から入学を受け入れる、との記事を目にした。


お茶の水女子大の室伏きみ子学長は「多様性を包摂する」として、学部・大学院の入学者に戸籍上は男性でも性自認が女性である学生を受け入れるとしている。これまでは入学の条件を「女子」としてきたが、受け入れに当たり、出願の要件に「戸籍、または性自認が女子の場合」と明記するそうだ。これまでの入学の問い合わせには、「戸籍上、女性であること」と答えていたそうだ。

また、戸籍が女性で性自認が男性の入学希望者については「これまでも入学後に性自認が男性に変わった学生は在学していた」として、変わらず受け入れる考えを示した。

当該学生がトランスジェンダーかどうか確認できる書類の提出を求める場合もあるが、室伏学長は「自分が女性と自認していて、真摯なご希望なら、それは受け入れ委員会で検討する」と話し、提出が難しい場合は大学で検討するとした。


室伏学長は会見の冒頭で以下のように述べている。

「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在するという国立大学法人としての本学のミッションに基づき判断した。

今回の決定を『多様性を包摂する女子大学と社会』の創出に向けた取り組みと位置づけており、今後、固定的な性別意識にとらわれず、ひとりひとりが人間としてその個性と能力を十分に発揮し、『多様な女性』があらゆる分野に参画できる社会の実現につながっていくことを期待している。

(中略)
それが実現できるのは、女性が旧来の役割意識などの、無意識の偏見、そういったものから解放されて自由に活躍できる女子大学だろうと考えている。

本学はすべての女性たちがその年齢や国籍等に関係なく、個々人の尊厳と権利を保障されて、自身の学びを進化させ、自由に自己の資質能力を開発させることを目指している。その意味からも、性自認が女性であって、真摯に女子大学で学ぶことを希望する人を受け入れるのは自然な流れだろうと思うし、多様性を包摂する社会としても当然のことと考えた」


なお、共学化の予定はなく他にも日本女子・東京女子・津田塾・奈良女子大なども同様の検討を行っているという。


この記事を読んだ時には、「あぁ、ついにここまで来たのか」と思った。「多様な女性」を女子大が受け入れることを決めたのだ。この決定についての学外の反応は様々あるが、学内での議論では概ね好意的であったそうだ。

女子大の存在意義が改めて問われている中での判断に注目が集まるだろう。

この決定が問いかける本質とは、「性別とは何によって規定されるのか」というものであり、「それによって制限・区別されるような社会的機会が存在することは許されるのか」ということではないだろうか。

前者については、お茶の水女子大側は戸籍という社会的生物学的に規定されたものではなく、性自認、あくまで本人の意識に寄り添うような姿勢を示している。そして、後者においてはもっと明確である。「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在するという国立大学法人としての本学のミッションに基づき判断し」、「真摯に女子大学で学ぶことを希望する人を受け入れるのは自然な流れだろうと思うし、多様性を包摂する社会としても当然のことと考えた」結果として受け入れを判断した。


これは単なる一女子大の決定ではなく、私たちの社会のデザインをどうしていくのかという問題でもある。

女性とは、男性とは、そしてそこに規定されない、されたくない人々の性とはいかなるものなのか。

そしてそういった人たちも、等しく社会の中に存在しているのであるなら、やはり「人間」としてあらゆる権利や社会的機会を保障しなければならない。顧みて、これまでの社会はそうした「ユニバーサルデザイン」を持ってきたのだろうか。

私はただのちっぽけなレズビアンにしか過ぎないけれど、改めてそうしたことを考えさせられたのだ。

何が私たちを規定するのか。

社会なのか、私たち自身によるのか…さて、これを読んだあなたはどう答えるだろう。




参考・引用

https://search.yahoo.co.jp/amp/s/m.huffingtonpost.jp/amp/2018/07/09/ochadai-kaiken_a_23478268/%3Fusqp%3Dmq331AQGCAEoATgA

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