ザ・シード[プロトタイプ]
シグマ
第0章 変遷する世界
第1話 始まりの日
それは突然だった。
突如NASAが世界中に大規模な隕石の落下の可能性があると発信したのだ。
落下地点は壊滅的な被害の予測も含めてである。
各国は対応に追われたが、落下場所が南極大陸で非居住区ということ、そしてその影響は一部の地域を除き一般の人には及ばないと発表されたことで落ち着きを取り戻す。
迎撃作戦も考えられたが、小さくなった欠片と言うにはあまりにも大きい一部が及ぼす影響を考えると、南極大陸にそのまま落とす方が安全とされ、そのまま落下させることに決まった。
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南半球の人は隕石が落下してくる様子を直接みることが出来るほどで、肉眼もしくはテレビを通して世界中の人が落下の様子を固唾をのんで見守った。
落下による直接的な影響があった国と人は少ないが、それでも衝撃波による津波が襲い、その対応に各国は追われた。
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ほどなくして、落下現場の調査を進めるべく各国は調査チームを派遣することを決定する。
調査に参加した国々はいわゆる主要国と呼ばれる国で、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合(EU)、ロシア、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンである20ヵ国である。
各国の合同で結成された20人の調査チームは、土地の環境的な困難さに加え、変わり果てた土地を進むルートを確立することは困難を極めながらも、遂に隕石が落下した中心地点に到達する。
そして調査チームは、そこで後に[オリジナル・シード]と呼ばれる種を発見した。
それが、隕石によって運び込まれた物なのか、はたまた元からここにあったものなのかは分からない。
しかし、調査チームの人数に合わせたようにある20個のシードを、各国の調査チームはそれぞれ一つずつ自分の国に持って帰ることになった。
この時はまだ誰もこの種の価値に気付くことは無かった。
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各国が種を持ち帰り、それぞれが種の研究を進めた。
謎の種ということで連日ワイドショーで取り上げられ、新しい情報がもたらされる度に話題に上がるほどだった。
しかし、その研究は困窮を極め、地球上には無い種であること以外は解明することがなかった。
しかしその貴重さゆえに厳重に保管された。
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多くの人が隕石の熱から覚めて、平穏を取り戻したある日、突如として発表された論文に世界中が熱狂を取り戻す。
[オリジナル・シード]の一部を培養し種を育てると、小さな木になり、さらに花を咲かせ種を実らせたのだ。そしてその[コピー・シード]と名付けられた種をモルモットに投与した所、驚きの効果が判明した。
初めはモルモットの動きが速くなったぐらいで、ドーピング効果があるだけなのだと見られていたが、観察を続けていくと、通常では起こり得ない現象が起こった。
モルモットのゲージの中で発火するという事件が何度か続き、監視カメラなどのモニタリング結果から原因を探ると、『モルモットが発火させているのではないか?』という結論に至った。
それは超常現象でいわゆる超能力なのか、魔法と呼ばれる類いとしか定義出来ず、その原理原則や、種の何が作用しているのかは判明しなかったが、世間を賑わすには十分であった。
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その報を受けて、一つしかない種に慎重になっていた各国も国家プロジェクトとして巨額を投じて研究を進めることになった。
『ただ発火をさせるだけで?』と思うかもしれないが、特筆すべきリスクが報告されず、身体が強化され特殊能力を得られるなら、軍事転用で多大な成果を上げられる可能性が高い。
なので各国は取り残されないよう、我先にと研究を進めた。
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コピー・シードからは更にコピーすることは出来ないことが判明し、オリジナル・シードの価値が更に高まったので、南極を再度捜索するも、新たなオリジナル・シードは発見されなかった。
しかし、シードを投与されたモルモットの子供はその能力を引き継ぐことが判明し、能力持ちのモルモットが外交に用いられるようになり、更に研究は加速する。
別々の能力を持ったモルモットを掛け合わせると、これまでに無い能力が発現するも、能力は一つまでしか持てないことも判明した。
こうして研究が着実に進むにつれて、人間への投与が真剣に議論されるも、その特異性から実現はなかなかしなかった。
ある事件が起こるまで......
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シードの話題で世間が賑わい続けるなかでそれは起こった。
[シード能力者]によるテロ事件だ。
一瞬にして数多くのビルを火の海にしたその光景から『シードによる地獄の始まりの日』として歴史に刻まれることになる。
このシードの流出が意図的に行われたのか、それとも偶然なのかは分からない。
事件が解明する前に犯人は自殺をしてしまったのだ。
しかし、この事件で人間に投与することでの有用性が改めて証明されたことは間違いない。
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事態を重くみた国連は、オリジナル・シードを所有する国々による合同の研究機関を設立することを決定した。
当初はオリジナル・シードの集約を目指したが実現せず、一定数量のコピー・シードの集約と管理がなされるに止まり、各国には今後コピー・シードを作製した際の報告の義務が課された。
実質、抜け道が多いこの制度では各国の研究熱を押さえることが出来ず、さらにはテロ事件によって高騰したシードの価値により流出事件が数多く報告された。
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最初の流出事件には及ばないが、[シード能力者]と思われる事件が数多く報告されるようになり、各国はさらに頭を悩ませることになる。
流出しても数に限りのあるシードなので、限定的に収まるはずなのに、何故か多くの能力者が出現したのだ。
そこで極秘裏にシード能力持ちの犯罪者を逮捕および尋問による調査が進められると、人体実験をおこなった形跡が数多く発見され、その実験結果の中に血液を能力者と入れ換えることによって能力を分配することが出来るというものがあった。
リスクは高いが能力者を無限増殖させることが出来る方法が発見されたことにより、世界中の誰がいつ能力者になってもおかしくないと言うことが明らかになったのだ。
トップシークレットとして秘匿され漏れるはずが無い状況だったが、金庫の中の資料が紛失する事件が発生した。
リークされる前に発表しなければ糾弾は避けられないとの判断で、世界中同時にこの事実の公開が成された。
その結果、世界は不安に包まれ能力者に対抗する手段の確立が叫ばれるようになった。
シード能力者の犯罪者を尋問したことは不問とされるほどである。
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[シード能力者]を育成する。
このことが国で正式に可決されたことは歴史的と言ってもよいだろう。
アメリカを皮切りに、中国、EUと続いていき、日本もようやく重い腰を上げて表明するに至った。
身体強化された[シード能力者]を一般の兵士が捉えることは難しく、対抗手段が他にないのでやむを得ないという判断だ。
世論もシード能力者の脅威が身近にある可能性に怯え、後押しする形となった。
力には力という対応策を持たなくてはいけないという、核の傘と同じ理屈である。
そして遂には世界中の国々が協力を表明するに至った。
議論の結果、各国でそれぞれで育成するには様々な問題があるということで、国連による島というにはあまりにも大きい人工島が太平洋上に建築され、そこに研究機関も含めた[シード能力者]育成機関が設立された。
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初めは各国から派遣された軍人に投与された。
投与された全ての人に能力は発現し、身体能力が強化されるも、その後の成長には人により違いが見て取れた。
調べていくと個人による適正と年齢により効果に違いが生まれることが分かった。
そのため各国はシードの投与に耐えることが出来る体であり、十分に若い少年である12歳から15歳、つまり日本でいうところの中学生を対象に血液を集めて適正を調べることになった。
[特別健康診断]と銘をうたれた診断は任意で行われたのだが、話題性と受診によって貰える1万円と、適正があると認められ育成機関に入ることで貰える1億円という謝礼金を目当てにほとんどの人が受診した。
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そして選ばれた学生は共通言語として英語を徹底的に叩き込まれるなど、数ヶ月の特別講座を経たあと国連の育成機関に送られることが正式に決まった。
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