第51話 vsイビル・スレイヤー 2
「……よし!」
イビルはそのまま地面に倒れ込む。勝負はあっただろう。
「勝った……の?」
あまねは勝利を確信し、それまでの緊張の糸が切れたのかくたぁ、とその場で尻餅をついた。
もう体力にも限界が来ていたのだろう。
「……あまねぇ!」
だがそんなあまねに暮斗は大声で呼びかける。
びくり、と体を強張らせた。
しかし暮斗と表情は途端に緩み、しっぽを振る犬のように駆け寄り、胸に飛び込んだ。
「ナイスだあまねえええぇぇぇ! アレがなかったら正直どうなってたか分からん! よくやってくれたあああああ!」
「ちょ、ちょっと離れなさいよ! 苦しいでしょ!」
「好きだぞあまね! お前は命の恩人だ!」
「ぎゃあああああああなに言ってんのよ馬鹿! 恥ずかしいでしょうが! ……というか助けられたのはあたしの方よ。ありがとね」
砕けた態度を見てようやく安心することができたのか、あまねは恐怖を和らげるように暮斗を胸からひっぺがし、今度は自ら胸に飛び込んだ。
背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。彼女の小さな体は、直接触れないとわからないほど小さく震えていた。
「……よくやったよ、お前は」
そんなあまねの頭を優しく撫でた。
こんな修羅場は彼女に経験させるにはあまりに早すぎた。慰めが必要だろう。
「……………………ふざけんじゃねぇぞ」
――そんな空気を裂く、一つの声が上がった。
がらり、と瓦礫を崩して現れたその者はまぎれもないイビル・スレイヤー。あれだけ痛手を受けてもまだ立ち上がってきたのだ。
「……っとにしつこいなお前も」
あまねを胸から引き剥がし、最後に二度頭をぽんぽんと優しく叩くと彼女から離れた。
先ほどのような奇襲作戦はもう二度と使えないだろう。狙われてしまったら今度こそどうにもならない。
それがわかっていたが故の判断だった。
「なにがそこまでお前を突き動かすんだ」
「正義感だよ。世の中を乱す怪人を殺して、殺して、殺し尽くす。悪は絶対許さないマンの意思を継ぐ。それが俺が戦う理由だ。貴様の甘っちょろい理想論など一笑に出来る、完璧な正義だ」
「……確かに怪人は悪だと言われることは多い。行動もお世辞にも正義的な行為だとは言えないこともある。だけどそれにしてもお前過剰すぎる。お前が倒すのは『悪』なんだろ? 怪人=悪だと決めつけるのは早計すぎる。実際俺は怪人に助けられたことだってある」
「…….序列一位は悪は絶対許さないマンだ。それはつまり悪は絶対許さないマンの示す『怪人は全て倒す』という考えが間違っていないということだ。認められていなければ一位になどなれるものか」
「……悪は絶対許さないマンが正義だと? 笑わせんな。悪は絶対許さないマンは所詮復讐に囚われたただの復讐鬼だよ。本名も容姿も年齢も性別も身長も体重も性格もレゾナンスもレゾナイデアも武器も、誰にもなーんにも知られてないけど、
「黙れ! ハグレごときが知ったような口を利くな! ……所詮貴様はヒーロー協会の中でも役に立たないどころか反乱分子にしかなりえないということか。それなら、俺がここできっちり処分してやるよ」
イビルは吐き捨てるように言うと、再びレゾナンスを起動した。
「チッ、ガキが。そんなに殺すのが好きかよ!」
流石の暮斗も苛立ちを隠せないらしく、荒々しい口調で剣を構える。
「痛い目に合わないとわからないみたいだな……!」
「やってみろよハグレ。ズタズタに斬り裂いてやるよ……!」
互いの怒りが火花を散らし、今にも爆発しそうになっていた。
戦いから殺し合いにすら発展しそうなその時、不意に武器からアラートが鳴る。
二人はぴたり、と動きを止めそのアラートに耳を傾けた。
「……あ?」
『作戦終了です。防衛に成功しました。現在戦闘中以外のヒーローは直ちに帰還してください』
それは作戦の終了を告げるアラートだっ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます