第38話「壮烈アンドリュー、イーテストが死地に赴く時……!」~ストーリー構想など~

・ガリオとシーラは天羽院に呼び戻され、玲也達に敗れたことへ壮烈な体罰を受けていた。これに許しを請い叫ぶガリオだが、シーラは秘策があると天羽院に進言する。この策を受け入れる彼だが、ガリオとシーラに対して内心見限る様子も見え始め、実際ゼルガが指揮するレジスタンスにゲノムの情勢は変化しつつあった。天羽院は再度ハインツへゲノムへの帰還を命じる。ハインツはガリオとシーラが敗北したことで天羽院の目論見が変わって自分に縋りつく事態になったのだろうと推測していたが、とある条件を課して撤退してもよいと提案した。その提案とはネクストに敗れて瀕死の重傷を負っているレーブンをハドロイドにしろとの条件であり、この意外な内容に天羽院は少し驚くも、彼はいずれにせよもう使い物にならないレーブンが延命できるようなものだから良いでしょうと承諾。しかし自分の娘をハドロイドにしてまで助けようとするとはそれほど娘を愛しているのかと、天羽院はハインツへ少し皮肉めいた問いをするも、ハインツは娘を愛しているだけでなく、娘が私と共に戦うことを望んでいるから、バグロイヤーの将軍として当然のことだと答えた。かくして鋼鉄軍団はゲノムへの撤退を開始するが……そこに一人のハードウェーザーが乗り込んできた。イーテスト・インフィニティだ。以前戦いを交えたアンドリューに対して、ハインツは敵ながら天晴と称して戦おうと望むも、ガルフォスたちから反対される。あなたにはまだ生きて戦ってもらわなければならない。イーテストは私たち3人が止めてみせると、ベアーシリーズの戦闘データを基に修復・改良された愛機バグレスト、バグロスト、バグネストの3機で出動を決意する。ハインツはディンから送られたベアーシリーズに蓄積されたデータが不十分であり、改良したとはいえイーテストに太刀打ちできるかどうかわからないと将軍として反対。しかし3人が相手はたかが1機で殴り込んできており、万が一自分たちが負けたとしてもこの戦闘データはハインツのバグジェネラルにフィードバックさせるので、今後の戦いへ役に立つと主張。鋼鉄軍団に栄光を……3人はそう宣誓して待ち構えるイーテスト・インフィニティの元へ向かった。


・アンドリューが殴り込みを決心するまで少々過去にさかのぼる。マルチブル・シンクロードを玲也が会得し、またマリアが大型次元跳躍装置をドラグーン・フォートレスへ取り付けることが完了し、あとはゲノムでアンチ・トライアングル・フィールド発生装置が破壊された時に、ドラグーン・フォートレスが大気圏を離脱して、ゲノム解放軍の誘導に従いゲノムへと飛ぶ。とうとうバグロイヤーと最後の戦いが近づいているのだ。作戦の決行は12月24日の朝6時。あと30時間だ……。決戦に向けて玲也達もハードウェーザーの最終調整を行うのだが、アンドリューは玲也、シャル、才人に最後の総仕上げとして、世界各国のハードウェーザーとの模擬戦をこなすように命じた。プレイヤーの模擬戦は基本本気同士でのぶつかり合い。中にはディエストやダブルストのような強豪も存在するが、ゲノムへ決戦を挑む者として彼らを乗り越えていかなければならない。玲也のマルチブル・シンクロードによる並行操縦を完璧なものに仕上げるだけでなく、ヴィータスト、スフィンストとの連携もより極める必要があるのがアンドリューの狙いだ。才人がアンドリューはその間何をやるのか、コンバージョンはイーテストにも対応しているから磨く必要があるのではと問う。すると彼がおめぇの話は一理あるけど、それよりやらなきゃいけねぇ事を一つ済ませときてぇとの事。もうアンドリューに時間がない……玲也は不安を内心感じていた。


・そしてアンドリューのやるべきこととは、鋼鉄軍団の本拠地へ殴り込む事だった。七大将軍で鋼鉄軍団だけいまだ健在。七大将軍は窮地に追いやられているが、それが故に何をしでかすかわからない。またアンドリューにとってハインツは戦士だけでなく指揮官として際立つ男であり、正直七大将軍で一番恐ろしい奴だとの事、ドラグーン・フォートレス発進時に奇襲を仕掛けてくるかもしれない、それより前に俺が先制して叩きのめしてやるとの覚悟だった。これにブレーン博士が一人では危険だと反対するも、アンドリューは俺とリタはもう後が長くない、この決戦でもスタメンから外されてもおかしくねぇがその前にできることはやっときてぇとの事。俺とリタでもそのくらいのことは出来るとの姿勢だった。エスニック将軍はアンドリューの作戦を承諾するも、必ずドラグーン・フォートレスへ帰ってくれと頼む。君は玲也君たちを導き見守るにはなくてはならない人だからと……。アンドリューは帰ってくるつもりですよと約束した。この話を聞いた玲也はアンドリューへ自分も行かせてくださいと頼むも、この戦いはゲノムでの決戦と比べたら大したことねぇ、その戦いにお前を割くほどでもねぇと拒む。けれどもリタの件を考えたら危険に代わりないはずだとアンドリューを止めようとするも、それは言わねぇ約束だろと窘める。それでも不安をあらわにしている彼に対して、アンドリューは玲也にとってマックスに続いて自分まで死んだらどうしようか不安になってるだろと指摘すれば図星の様子だった。すると玲也の額に彼はデコピンをお見舞いして、そこまで心配してもらう程俺達は落ちちゃいねぇと窘める。


・それから個室で二人は今までを振り返る。玲也に対して正直まさかここまで成長することがとは思ってもいなかったと笑いながらアンドリューは過去を振り返れば、玲也は少し顔を赤くしながらも、アンドリューさんにここで出会っていなかったら自分はここまで強くなれたかわからない。あの時本気でぶつかってきたから、プレイヤーとして戦うことの厳しさを知ることもできた、そして自分が敗れてもアンドリューさんは手を差し伸べて自分を教え導き鍛えてくれた。貴方がいたからこそ自分はゼルダに勝ってマルチブル・シンクロードも会得したようなものだと、自分にとって父がゲーマーとしての師なら、アンドリューさんはプレイヤーとしての師だと今までの教えに玲也は感謝の気持ちを伝える。するとアンドリューは俺を追い越してもまだ師匠と呼ぶのか?と敢えておどけて玲也を戸惑わせる。その様子を見ながら、いっとくが「あくまで今は」追い越されたが、これからはどうなるかわかんねぇぜ?と釘を刺す。その気になりゃあまたおめぇを追い越してやる、たとえその道で勝てないとなっても別の道でおめぇらより先に行ってやると……要は自分の限界を勝手に決めちまったらそれまでだ。との話である。シャルも才人もここまでよくついてきているし、その気になればもっともっと強くなれる。それは玲也にも当てはまることだし、俺にだって当てはまる、ゼルガだって多分そうだと説いて、最後に玲也が俺を師と仰ぐなら俺もお前を弟子と呼んだっていい。だが同時に好敵手(とも)だ……!との激励に玲也も同意を示す。出動するアンドリューへ玲也は絶対帰ってきてくださいと頼み、アンドリューも人の心配するくれぇならもっと腕磨け!と笑いながら返した。


・そして残されたバグレラ関係をイーテスト・インフィニティはグレーテスト・エッジ、プラズマ・スライサーを駆使しながら軽々と退けていく。そしてリタがいつも以上にノッっている様子にアンドリューが気づくと、彼女はもしあたいが途中でくたばった時の後をウィンに任せてきたと語る。どうやらリタは自分に何かあれば、残された自分の体でよければウィンにくれてやると約束したのだ。彼女は望まずして自分の体を失ってしまい、妹の仇を討っても戦うためのハドロイドの体で姿も変わることなく力尽きていくだけなのを考えるとあまりにも酷な気もしたのだ。あいつはあたいと違って根から戦いを好む女じゃないとリタの弁。


・そもそもリタは元々とある貴族の娘として厳しいしきたりの中で育ち、将来を約束されていた。だが、激動の時代の中で古い風習にしがみついている家に嫌気がさして家出した過去があった。そして彼女は形骸化した概念を破壊したいとばかりに、己の武の道を究めて鬱憤を晴らさんとばかりストリート・ファイトで生計を立てていた。だがバグロイヤーの襲来を前にあまりにも自分が非力だったと知り、それらを超える力を得たいとの事でハドロイドの身を選んだという。そして次元を超えて地球へ送られた時に、当時空軍に所属していたアンドリューがフライト中に彼女と出会ったという。正直最初軍人として形式ばった男ではないかと、リタは彼を軽視していたが彼もまた親を知らずスラム街で育ち生きるために手段を選ばなかった。そんな彼はアメリカ屈指のゲーマーとして裏社会でも名前が知られていたらしいが、秀斗に敗れてその力をもっと正しい事に使えるはずだと指摘されて、有り余った力を社会の為に使おうと空軍への道を歩んだという……。アンドリューは熱い男だと自分が惹かれる所もあった。正直彼の事を心から愛したこともあった。バグロイヤーの襲撃で殺された恋人と重なる所もあったのだから……けれどもアンドリューはそれを言ったら俺の死んだ同僚もおめぇに似ていた。俺はおめぇと古い傷をなめあう為にコンビを組んでいるのではないと諭した。それは今も変わらない。ただ二人とも戦いを好む者として、その力を平和の為に向けている想いは同じだと……。


・そして目の前にバグレスト、バグロスト、バグネストの3機が迫った。レスト・ハンマーで間合いを取りながらスナイパーキャノンによる狙撃で攻めるバグレスト、ロスト・ショットで足を止めて、サークルシュナイダーで攻撃を受け止めながらビームランチャーをお見舞いしようとするバグロスト、そしてネスト・ナックルシュートで牽制しながらネスト・ハーケンとネスト・サンダーを駆使するバグネスト。みな3機の切り札とそれを駆使するための攻撃手段を絡めているような戦いだった。アンドリューは元のパイロットは悪くねぇかもしれないが、ハードウェーザーを中途半端にコピーした代物を使いあぐねているようだと評する。よりによって玲也の3機をコピーしているのが猶更、あいつが見たら嘆く、というかあいつに代わって師匠の俺が叩きのめしてやらぁと燃えていた。3機がイーテストを取り囲みレスト・フレアー、ビームランチャー、ネスト・サンダーを一斉に放った時、アンドリューが飛び上がって回避。最もバグネストがすかさず空中で追撃を仕掛け、ネスト・ナックルシュートを放った。だがこの時を狙ってグレーテスト・デュランダルを思いっきりバグネストの両腕に突き刺した。これにより動きが止まったバグネストへ後転しながらグレーテスト・エッジをお見舞いして縦一文字にバグネストを切り裂いて沈黙させた。これにミケルが動揺しながらスナイパーキャノンを自分にめがけて放つと、イーテストはバグネストを彼に向けて投げつけて盾代わりとした上で、すかさず接近してグレーテスト・ナックルを顔面にお見舞いする。その後バイトクローでバグレストがイーテストの動きを封じてレスト・フレアーを放とうとするも、グレーテスト・マグナムの連射が先に決まり彼もまた爆破四散した。


・部下二人を失いハインツは震えて自ら出動しようとするも、ガルフォスは早く撤退をと彼へ叫んで制止して、バグロストの巨体とサークルシュナイダーで後方からイーテストを押しつぶして切り裂かんと、さらに指からのロスト・ショットがイーテストの背中を貫かんとする。グレーテスト・キャノンもロスト・ブリザードで凍結してしまう。これにアンドリューは多少骨があると認めながらも、リタがここでおめぇは死んで良いのかと突っ込めば、勿論願い下げだ……!と二人が吠えた。プラズマ・スライサーを手にして後ろを振り向くと同時にキャノン砲と腕を切り落とし、グレーテスト・デュランダルで十文字にバグロストを粉砕するのだった。


「まさかおめぇもか……こう考えるとまぁ、本当限界はわかんねぇよなぁ……」


・戦いの後アンドリューはリタのタグが光輝いている事に気づいた。玲也と同じマルチブル・シンクロードを会得した事は、まるで自分にまだ死ぬべきではない運命を示していると彼は実感した。まだ戦えるのなら玲也達の戦いは俺も一緒に行かなければと固く誓う彼であった。

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