第37話「渡すか俺のニア!ウィンダストへのリターン・マッチ」~ストーリー構想など~

・ティービストがニアとガリオ達の元へ向かう中。レクターはニアの事情からしてお前が助けなければ彼女の心は救われないだろうと玲也に説いた。玲也もまたその覚悟であり、ガリオとの生身での決戦になるかもしれないと……しかしレクターは何故そこまで自分に力を貸してくれるのかと玲也が問うと、彼はお前がゼルガを破った男だとの事もあり、あの男から期待されている事もあるが、俺もあの男を断ることが出来ない身だと語る。あの男は自分にとって身近な存在ながら自分を超える男であり、俺はあの男の影として支える宿命なのだと……そして玲也は彼が以前会った事があるような口ぶりをしていた事から合った覚えがあったかと確認するも、そこでレクターは作戦を実行する時だとクアント・レーザービットをニア達が捕らわれている洞穴付近に向けて攻撃。これによりガリオ達が騒然としている隙に玲也がティービストから降りて急いでニアの元に向かった。


・レーザービットの攻撃で騒然としている中、マリアが隙をついて逆にトループを捉えた。ニアは銃を向けていた者のやはり彼女を撃つことは出来ず、自分の名を呼んで叫ぶ玲也の声を聴くとガリオは素早く銃をニアから奪い取り玲也に向かって発砲する――だが、玲也は毒針を仕込ませていた将棋の駒を投げつけて毒針を跳ね返し、すぐさまガリオの顔を思いっきりぶん殴って怯ませてから、ニアの身柄を確保する。玲也が来たことにニアは驚きを隠せない様子でもあったが、彼はお前とはソリが合わない事もあるとしても、俺はそこまで薄情な人間ではないと返すと彼女は安心したように微笑む。この二人の様子に対してガリオは玲也が自分のオリジナルだとして憎悪をあらわにする。自分とシーラは羽鳥玲也のクローンとして、天羽院が作り出した存在であり俺たちが玲也を始末する事で俺たちはオリジナルとして天羽院に認められるのだと……そしてニアに対して彼女もまたクローンだと知ればお前より俺のパートナーに相応しいだろうと思ったから奪い取ってやろうとしたと胸の内を明かす。ニアはあんな同じクローン同士で傷をなめあうような負け犬のあいつに誰が従うつもりか!と屈していない様子に玲也は安心をしつつ、ガリオに対して握り拳を震わせながらふざけるな!とキレる。正直お前がクローンとの事実だけに対して、自分は別にお前に怒りをぶつける理由もない。だがお前がクローンとのコンプレックスで、オリジナルを一方的に敵とみなして、ただクローンだけでニアを無理やり引き込もうとすることが許せないとの事だった。正直ニアもクローンとの出自にショックを受けていたかもしれないが、ガリオと傷をなめあう事を良しとしなかったと知って正直嬉しかったと彼は打ち明ける。お前はクローンであろうとなかろうとニアに変わりはない。ファでなくとも、お前はニアならそれで良いはずだと玲也はニアに縛られたロープを解いた。


・その後ガリオに対してもお前が自分のクローンとの事に固執しなくても、ガリオという与えられた名前があるのならば、この“羽鳥玲也“ではなく”ガリオ・ベルサーチャー“として生きていく事だって出来るはずだと玲也は彼にも説得する。最もガリオは天羽院がお前を倒さなければ俺を認めようとしないと反論するも、その天羽院が全てにおいて正しいとお前は言えるのか!?とさらに説教は続く。それこそお前は自我を持たない天羽院の人形に過ぎないのだぞ、お前がそう成り下がる点に関してはオリジナルの自分としてもつらい事だと彼は述べる。そしてニアは目の前の母に捨てられて今もこうして相手にしてもらえなくても、弱音を吐くこともなく立派にニア・レスティとして生きていると、親に認められない事で悩むくらいなら、自分は自分だと強く持って生きてみたらどうだと……。玲也はニアをニアとして見ていることに変わりはない――彼の本心を知るとニアのタグが光を帯びてくる。ガリオはお前こそ父を探して戦っているのではないかと疑問を突き付けるも、確かに自分の父が偉大なゲーマーであり、今も尊敬していることに変わりはない、だが俺は父に会いに、助けに行くために戦っているのではない、父を乗り越えていくために戦っている……!とその点で根本的にガリオと違うと啖呵を切った。


・そのさなかトループが脱出してニアを密かに仕留めようとするのだが、彼は乗り込んできたレクターによって崖から海原へと叩き落された。レクターが彼に向ってサーベルを振りかざそうとするも、レクターの振るう鞭に弾かれる。そして玲也に対してよくやったとニアの輝くタグを見ながらねぎらいの言葉をかける。ゼルガを破った男は技や頭も切れるかもしれないが、その根底に不撓不屈の信念が滾っていたと、マルチブル・シンクロードを会得したことはその心があってこそ3人ともお前を信頼したからにあると……ニアはいつの間にかマルチブル・シンクロードを会得していた事に対してなぜか少し照れていたのだが……。


・しかし海原からウィンダストが出現した。シーラがいつの間にか電装を起こしていたのだ。さらにガリオの指示通り彼女は自分だけでなくニアもその手に捕まえてコクピットに閉じ込めてしまう。玲也に対してニアを人質にとればお前は何もできないだろうと嘲笑しながら撤退しようとする。しかしティービストが再度出現し、レクターの指示通りクアント・シザーフェンサーで彼女の胸部に亀裂を生じさせる。彼に促されて玲也はその行動の意味を察して、彼女にそこから早く飛べ!そして電装しろ!!と玲也は叫んだ。これに彼女が今一つ理解しきれていなかったが、俺のニアなら飛べる、お前も俺の事を言えないような無鉄砲だろう!と続いて聞こえた内容から、思い切ってガリオの手から離れて飛び出す。去り際に彼に対して「あんたは無理やり力ずくであたしを奪おうとしたけど……あいつは心で引き寄せてくるのよ」と言い残し。彼女が大空へ身を任せるとともに彼女からブレストのフレームが電装される。そして玲也の思念誘導により海原にてブレストは体勢を立て直すも、自力での電装は彼女に負荷をかけるものであり、思念誘導だけで動かすのは危険だと玲也はすぐさまブレストに乗り込もうとする。その間にティービストがビットを展開してブレストと玲也達を守ろうとする。だがウィンダストの電次元兵器にはそのバリアーが破れてしまうだろう。電次元プラズマブレードでウィンダストは切りかかろうとするが、ティービストのシザーフェンサーがプラズマブレードの柄を受け止める。だが同時にウィンダストの電次元マグマフィンガーがウィンダストを貫いてしまう……玲也が乗り込んだブレストがすぐさまカウンターランサーでウィンダストの右腕を切り落とさんとする。何とも関節部を突き刺した事で右腕の機能が停止するも、ティービストは炎上しながら静かに海へと落ちていく。レクターから今のお前ならやれるとの言葉を残されて……。


・ティービストの仇を取る……そのためには電次元兵器を封じることだと玲也はゼルガの戦法を思い出しながら、3つの電次元兵器を封じることを選んだ。電次元フロストランチャーが無防備だとカウンター・ダガーを投擲してランチャーそのものを破壊。これにガリオが逆上するように電次元プラズマブレードの刃――いわば電磁エネルギーが鞭のようにしなると、カウンター・ガードサークルを投擲して電磁エネルギーの軌道をそらしたすきに、素早く手にしてガードサークルの刃でサーベルの柄を切断する。しかし左手の電次元マグマフィンガーがブレストを掴み上げて胴体を溶かそうとしている……この左手を封じることが出来れば……苦しむ中で玲也はゼルガの戦法を思い出し、電次元ジャンプで彼の左肩に向かって飛び移り、すかさず電次元フレアーを掃射して左腕が静かに本体から崩れ落ちるように海原へと落ちた。実質攻撃手段が失われたものであり、ガリオはこの状況を信じることが出来なかった。それでも戦わんとする彼だが、シーラから玲也を仕留めることが出来ないまま散ることは少なからず私は悲しいと冷静な様子ながら説得をかわし、ゼルガはやむを得ず退くのだった。


・玲也とニアはティービストの沈んだ場所へと急いだ。そこには事切れたブルーナの姿と仮面を外しレクターではなく、マックスとして彼女の手を取りながら涙する彼がいた。レクターの正体はゼルガの兄マックスだったと玲也は驚きを示すが、ニアは海から這い上がってきたトループの存在に気づいてマックスへ逃げて!と叫ぼうとするも、間に合わずトループの凶弾にマックスは倒れた。これでティービストを仕留めることが出来た。俺はガリオも成し遂げなかったハドロイドを倒したぞとトループは狂乱しながら二人の遺体を確認しようとするも、マックスは最期の力を振り絞り鞭から引き抜いた短剣でトループの首を掻っ切り逆に返り討ちにするのだった。


・しかしマックスは既に殆ど力がない。弟を既にこのマルチブル・シンクロードを会得しているが、彼に勝った玲也が同じ能力を会得したのならば、ゼルガもこの先好敵手として喜ぶだろうと安らかな表情で言い残し、戦士としてやれることはやって散ることが出来たと、ここにいないゼルガへ後を託しながら事切れていった。玲也は貴方もゼルガに勝る劣らず素晴らしい人だった。貴方の力で会得したマルチブル・シンクロードを駆使して自分は貴方の弟と共に戦うことを涙ながらに約束する。一方マリアはこれだから失敗作は困ると冷淡な事を言い放ち玲也の怒りを買うも、彼女はその失敗作は自分が作ったものであり、自分も人の事を言えないのかもしれないと自虐する。マックスだけではなく玲也もニアも私の予想を超える規格外な存在であり、自分がそれを頑なに今まで恐れていたのかもしれないと……私もお前たちと同じだとの事を今まで認めることが出来なかったかもしれないと、マリアはニアへ謝りながら手を広げた。これにニアが戸惑うも玲也は彼女の背中をおして母の胸の元に飛び込んだ。するとニアは馬鹿、馬鹿と母の胸をポカポカ叩きながらもマリアをママと呼んで泣いた。マリアはやれやれとの表情を浮かべながらも久しぶりに母らしい行動をとる。玲也が二人の様子を遠くから見つめて少し安心していた矢先に、捜索に出ていたヴィータストの姿が見えた。これでマルチブル・シンクロードを会得した。残すは電次元への決戦だと玲也は決意を新たにする。

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