第32話「嵐吹く決闘!武装将軍ディンの花道」~ストーリー構想など~

・レーブンの抜け駆けに対してハインツは単に兵力を消耗させるものにすぎなかったと苦言する。これに彼女はこの状況を打破するにはハドロイドを仕留めるしかないではないかと反論するが、七大将軍は現在戦力の立て直しが必要だと彼は指摘した。その為現在ディンの擁する武装軍団の増援が配備されることになるが、その増援が電装マシン戦隊に攻撃されることがないように、陽動作戦をディンは展開する。その方法とは彼は持てる限りの兵力を駆使してインドネシア諸島の占領に成功しており、インドネシアの解放条件として決闘を電装マシン戦隊に申し出るという奇抜なものであった。この決闘の隙にゲノムから自分たちの本部隊の増援を降下させるものだが、さらにダメ押しとして、太陽系側が負傷兵と民間人を地球へ運ぼうとしている作戦を利用する事にした


・ちょうどディンから羽鳥玲也を相手にした決闘の申し出がドラグーン・フォートレスに届いた。この決闘は罠かどうか才人やシャルは怪しむも、インドネシアの人々がバグウェポンの編隊に人質に取られており迂闊なことは出来ないのではとウィンは意見する。そして玲也がネクストから戻ってきた。インドネシアの偵察をトランスクロスとグレーテスト・サークルを利用して行ったのだが、決闘と指定されたニューギニア島付近を偵察しても、特にこれといった罠が仕掛けられているわけでもなく、対ハードウェーザーを想定した者もないとの事。さらに、太陽系側が負傷兵と民間人を運ぶ艦が降下してくるとの事だが、もし約束に反するなら、その艦を破壊する事もいとわないとまで突き付てくる。本当に1対1の決闘をディンは考えているのだろうか。アンドリューは彼を敵ながら天晴な奴だと一応評する。最悪の事態を想定する必要は勿論あるが、ここは受ける方針で話を進めることにした。


・そしてバグロイヤー側だがグナートはディンの決闘について反対していた。彼は七大将軍屈指の技術者であり、今まで燻っていた自分に道を与えてくれた恩師にもなる人物としてここで死なれては困ると、冷静な彼らしからぬ情を示す。ディンは自分は元々ゲノム側の技術者だったが、自分の考案する兵器のスペックが高すぎるがゆえに乗り手を選ぶ、やがて現場からはスペックばかりを重視して実用性を考えていないと敬遠されるようになり、自分がゲノムに居場所がない事から、トレントス地方へ亡命し、バグロイヤーの旗揚げに技術者として参加した過去があったという。最も自分が開発したバグウェポンを期待通りの性能を発揮する乗り手たちはいなかった。それはやがて自分への人間不信へ繋がっていき、いつしか予想どおりの性能を発揮する無人兵器だけの製造を行っていたと……。


・その中でお前とシンシアは自分の教えを受けて成長した教え子であるとディンはグナートに語る。最もシンシアは自分の弟子であり続けようとしたが、彼女はパイロットとしての素質も悪くないがゆえに、お前の元へ敢えて預けたという。自分の無人兵器主体の環境では活かしづらい人材との事もあったが、グナートとシンシアは自分の弟子として単なる模倣で終わってほしくはない思いがあったのだ。この二人への心遣いを語りながらディンは今更自分が人間に恋しくなったのだろうかとも自虐する。


・だが現在七大将軍の戦いは優勢とはいえず、それどころか天羽院が既にバグロイヤーの実権を掌握しており、自分たちを邪魔者として地球で死なせるつもりではないかとの疑惑があることを突き付けるディン。これにグナートも察していたような表情を浮かべるが、レーブンはいうまでもなく、ハインツもこの戦いから逃げるようなことをしない男だろうと彼は語る。グナートに対してもわかっていてもお前はそれで納得しないだろうと指摘すれば彼は少し申し訳そうに頷く。つまり七大将軍でこの戦いに対して反対なのは自分だけだが、もうバグロイヤーは武人も技術者も居場所はなく、あの政治家のような天羽院が実権を握っているようで帰る場所はないだろうとの事。自分は技術者だが心はあの政治家より他の七大将軍と同じ武人かもしれない、この期に及んで人を信じようと思えるのは自分でも何ともいえないとの事だった。


・そして決闘の時刻……玲也はブレストで出撃する事を選んだ。嵐吹き荒れる中でニューギニアを前にバグウェポン・バグマスターが待ち受けている。このバグマスターにはディンが搭乗しており、長い間無人兵器を駆使して無味乾燥な戦いを繰り広げていたが、この1対1の決闘の場で自分がパイロットとして乗り込んで出撃するとは考えていなかったと自嘲しながらも武人としての血が滾っていることを感じていた


「ハインツ、レーブン、グナート!お前たちがそれでもまだ戦い続ける意思に変わりがないのならば、このわしがお前たちの為の捨て石になろうではないか……!だがわしはただでは死なぬ、七大将軍の端くれとして、この決闘に将軍としてすべてを賭けてみせよう……!」

「……玲也、こいつ本気であたしたちに1対1で」

「確かに七大将軍にも貴方のような方がいることは嬉しいが……!!」


・ブレストがカウンター・ガードサークルを回転させながら突っ込んできた。しかしバグマスターのシュナイダーが受け止めた上で、右足のシュナイダーがブレストの腹部を突き付ける。これによろけるブレストだったが、そのままキラーシザースをバグマスターの腹部に突き付けるも、バグマスターの腹部からバグフレアーが解放され、高熱を前にキラーシザースは溶解してブレストが慌てて拘束を解除する。今度はシュナイダーを両手にしてバグマスターが突っ込んでかかると、ブレストがカウンター・ハンマーをぶん投げて彼を突き飛ばさんとするも、命中寸前にバグマスターはジャンプして飛び上がりシュナイダーの刃でカウンター・ワイヤーの上に乗って切断せずに空中で体勢を変える芸当を見せつける。そこでビームライフルを展開してブレストの右肩を落としてみせる。さらにビームライフルをサーベルに展開させてそのままブレストの頭部を貫く。


・しかしこの時ブレストはすかさず残された左手でカウンター・ダガーを投擲してバグマスターの左腕を突き刺す。さらに左ひざからカウンター・ジャベリンを腹部に突き付け、膝の上で倒れる彼に対してカウンター・ガードサークルをチェーンソーの要領で背中からバグマスターを切り刻むも、残された右腕でブレストの頭部を掻っ切り、突き刺さったビームライフルを引っこ抜く。これにバイトクローでバグマスターの体を掴んで後方へと叩きつけるも、ブレストの首は既に落ちている状態だった


「ディンとか言ったが貴方は確かに強い、正直このハードウェーザーを相手にここまで追い詰めてくるなら、ハードウェーザー同士の戦いなら俺が負けているかもしれない……」


・玲也が弱気になったかと思えばその後思いっきり笑い出した。これにディンだけでなく、ニアですら戸惑うのだが、彼との戦いで玲也は手強いだけでなく楽しいとの感情もあると意外なことを言い出す。これにディンは遊びで戦っているのではない事くらい分かるだろうと説教しようとするが、生憎自分のゲームは命がけで今まで競って戦ってきたと言い返す。


「父さんは俺が越えなければいけない相手として強い……が同時に厳しくも熱く優しい人として、俺の目標でもある……ゼルガは俺が本気で憎んだこともある相手だったが強い……そしてあの戦いの中で俺とゼルガは好敵手として分かり合うことが出来た……あなたも俺にとっては、今……!!」


・玲也は叫んだ。あなたのような強いだけでなく自分を楽しませてくれる相手として敬意を持ちたいと。そして1対1の決闘を申し出る勇気のある貴方はここで死んで良い人ではない、俺はゼルガのように貴方とも手を取りたいと説得する。しかしゼルガは所詮武人としても中途半端であり、技術者として中途半端な老いぼれには何もできず、この決闘が老いぼれのできる精一杯の事だと彼は聞く耳を持たなお。そしてその頃クローズボックスが大気圏内に降下する事に成功したとの知らせを受け、ゼルガはビームライフルを発砲しながら突撃を仕掛けてくる。腹部から展開されるバグフレアーはカウンター・ジャベリンを受けて損傷しており、発射してどうなるかわからないような状況だった。「自分の限界を勝手に決めてどうなるという……!」玲也は握り拳を握りながら、「せめてすぐ楽にしてやることが礼儀なのか」と葛藤しつつバグマスターへとびかかり、電次元フレアーを遂に発動。これを受けたか同時にバグフレアーを放った際の機体が持ちこたえられなかったのか、目の前でバグマスターは爆破四散。ディンはあとは託したと3人の名前を叫びながら散っていく……。


・ディンが命にかえてバグロイヤーへ送り届けたバグウェポン・ベアーシリーズはその後グナート、ハインツ、レーブンに3分割されて配備されることが決まった、しかしグナートは二人へ兵力をこちらに割いてほしいと頼んだ。これに不平等だとレーブンは反対するが、ハインツは以前バグリーズを借りたこともあるとの理由、それと別に今のお前は戦わなければならない思いに駆られているだろうとの事からだった。グナートはハインツの配慮に礼を述べ、ディンの仇を討つ意味もあり深海軍団は総力をかけて進軍する覚悟だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る