第25話「怪奇!パリを焦がす憎しみの波動」~ストーリー構想など~

・ドラグーン・フォートレスは大気圏を突入したデュアル・メメント・モリと合流していた。元々ゼルガの機体だったがデータとして組み込まれるようになり、支援機として現在はパッション隊の小型輸送機として改良されており、ベリーとパインが助っ人として送られてきた。彼女らの話によると太陽系の守りはゼルガが単身で引き受けているとの事で、玲也は自分たちが今手の届かないところでゼルガも必死に戦っているのだと改めて思わされる。そして自分が今アンドリューに代わってドラグーン・フォートレスを守らなければいけないと……。


・そして現在このドラグーン・フォートレスが地球防衛のための遊撃部隊として本格的に動き出そうとする話で動いていた。理由は玲也が3種類のハードウェーザーを持っている事で長時間の運用に耐えうることと、既に彼の実績から遊撃部隊長を務めるのも問題ないとの事であった。そして実際遊撃部隊の最初の仕事としてフランスへ向かう事になっていた。バグロイヤーの七大将軍は現在防衛の手が最も手薄だとされているアフリカへの侵攻を進めており、ヨーロッパにもその手を伸ばそうとしているとの事。フェニックスが新入りの面々を率いて現在応戦しており、ドラグーンが不測の事態を想定しての後詰めとの役目だ。そこでシャルは久々にフランスへ戻れることをやはり楽しみにしていた。養父母の為に自分の晴れ姿を見せたいとの彼女にエクスが揶揄えばやはり口論になるのだが、玲也もこの戦いは人に見せびらかすものではないと諭す。この指摘にシャルは確かにそうと謝るが、自分が披露したいのは決してそれだけのものではないと新たなデータを見せた。


・そのデータとはヴィータストとスフィンストが合体するシステムであり、マーゼストというハードウェーザーとしてパワーアップさせる事だった。これは前回の戦いで遊撃隊だけで戦わないといけない状況、特に玲也を欠いて戦うことも今後ありうるかもしれない事で2機だけでは対応しきれない事態に陥るかもしれない。元々支援機同士の2機だが合体させればエネルギーの消耗は激しいが一時的な突破口となりうる火力を得られる。この瞬間的な爆発力を優先したマーゼストについて、玲也は一理あり、緊急時だけでなく、大規模な火力による先制攻撃で優位に渡り合えるかもしれない。エネルギーの消耗についてはこのマーゼストの後に各機とのコンバージョンによる連携へつなげて補うことが出来ると、マーゼストへのコンバージョン計画に賛同した。だがこのコンバージョンでの懸念点は合体コマンドの入力が困難なことである。各機とのコンバージョンはベースとなる機体のバリエーションとして合体コマンドはそこまで複雑なものでなかったが、2機同士が合体して別のハードウェーザーとさせる事は高度なコマンド入力を余儀なくされる。果たして才人がこれを入力できるかであり、実際の所彼はともかく、シャルや玲也にしても難しいコマンド入力が問われる為、今後への改善策が問われるものだった。

・このコンバージョン計画について、ドイツチームの協力が必要だと玲也が考えていた頃、ドラグーン・フォートレスがフランスのパリへと到着した。シャルは養父母のオレアンとエレナと久々に会い、互いに元気そうでやっているのを喜びあっている。オレアンはシャルから玲也の事を聞かされると、彼女の評判通りだと玲也を評する。彼はシャルをプレイヤーとして戦いに巻き込んだことを詫びるが、オレアンは別にシャルが心からプレイヤーとしての道を望んでいる事として君が気に病む必要はないと快く笑っており、エレナもまた同じ考えだった。それからオレアンは玲也達がバグロイヤーの侵攻から戦っていることについて、決して力だけでなく心ある者と協力して戦っていることはシャルから聞いているとの前置きから、降りかかる火のちてに「粉は払わなければいけないが、守り救う者として心を見失ってはならないと説く。敵であろうとも心ある者へ手を取り合い、救うべきものへ手を差し伸べなければならないと……オレアンが刑事として罪を憎んで人を憎まずを貫いてきた。シャルに対してもそれは同じだったと彼は彼女の方を振り向けば、少しうつむきながら照れていた。


・それからエスニックが折角フランスに帰ってきたのだからと気を利かせてその日の午後は休暇とした。早い話玲也とシャルの良い雰囲気を後押しする訳で、他の面々にはそれなりに仕事を与えていたが、エクスの姿だけ何故かなかった。それはさておき玲也はシャルに案内されながらフランスの観光をそこそこ楽しんでいた。シャルへオレアンが良い人でお前がそうなのが凄い分かる気がすると称賛すれば、シャルが思いっきりにやけながら笑っていた。この戦いの中で電次元の人間が全員悪い訳ではなく、今まで何度も分かり合い共に戦った人たちがいる。今もこうして太陽系で双方が力を合わせてバグロイヤーに立ち向かっている。二人が空を見上げた時は少し曇りがかかっている様子だった。


・しかしシャルを狙って何者かが凶弾を放った。二人ともども突き飛ばされる形で何とか危機を回避。突き飛ばした相手はエクスであり、どうやら彼女が二人の仲を嫉妬して後をつけていたことが功を奏したのだ。最も彼女は玲也が狙われているつもりだと思って彼を救おうとして結果的に二人とも救ったに過ぎないと相変わらずシャルへ突っかかるのだが。それから元々有事に備えて二人を密かに尾行していたウィンが狙撃犯を捕まえた。その狙撃犯はシャルと然程年齢の変わらないアリサ・ローゼルという少女だった。シャルは彼女について見覚えがないのだが、その彼女は私の父バーンは刑事であり、とあるテロ組織を追跡していたさなかで返り討ちにされたとの事……そのテロ組織こそスチーブ・カセット、つまりシャルの父が率いていた組織だ。彼女の実の父はシャルの実の両親に殺されたようなものであり、それにより母の病気の治療費を稼ぐために、自分はマフィアの一員として汚れた仕事をしなければならず、母が自分の努力も報われず病死したとの事。その彼女が父を殺した犯人の娘だったシャルが今こうして幸せに過ごしており、電装マシン戦隊の一員だとの事へ強い憤りを感じ、シャルを始末せんとこの時を狙って行動を起こしたのだ。


・アリサから明かされる壮絶な過去にシャルは戸惑いを隠せず言葉を失う。刑事の娘である自分が生き地獄を味わい、犯罪者の娘だったシャルが何故こう大手を振っていられるかとのさらにアリサが彼女を追い詰めると、玲也が辞めろと声を荒げる。お前が両親を失った事には同情するし、償えることがあるならばするが、自分だけが可哀そうだと思うなと……実際大切な家族や仲間を失いながらも、過ちを犯しながらも、憎しみを抱きながらも今こうしてその悲しみや辛さを乗り越えてきた者たちがいることを俺もシャルも知っていると玲也は諭す。実際の所俺はお前がシャルを憎むように、ウィンに憎まれていた時期がある、それも本当に妹のポーをこの手で殺めてしまったと少し悔し気な表情をしながらも、今はウィンが俺を許してくれている事も明かす。ウィンがまだ完全には許しきれていないからその話はやめてほしいと苦笑するのだが……いずれにせよシャルをここで死なせるわけにはいかないと、穏便に話を済ませるようにしたいからドラグーン・フォートレスまで彼女を連行しようとする玲也達。しかしアリサはその時大声で電次元の人間が自分に暴行を加えていると叫び、現地の人々は玲也達がバグロイヤー側の人間ではと誤解し襲い掛かってくる。この混乱の末にアリサは逃亡し、玲也達もシャルが暴徒たちを前に「自分は憎まれている身」だと正気ではない状態を案じて逃げることを選んだ。


・ドラグーン・フォートレスへ引き返した玲也達だが、シャルは自分は犯罪者の娘とのレッテルを張られるのはまだしも、実際自分の両親によって不幸に追い込まれた相手がいた事から立ち直れない状態が続いていた。彼女の様子を見ても、イチは自分もバグロイヤー側として行動していた事で同じように相手から恨まれてもおかしくないと不安を口にすると、才人は確かに恨む相手もいるかもしれねぇけど信じてくれる相手だっているはずだと彼を安心させる。自分がバグロイヤーに家族を殺されたことに対してそこまで家族への想いがあったわけではないからかもしれないと自虐しつつ、姉を殺されてもゲノムを恨まなかったのは天羽院が犯人だと分かった事と別に、玲也たちの言う通りゲノムの人間が悪い訳ではないと知ったかもしれないと……。エクスはシャルの両親が情けないと苦言しようとすると、才人がまずいと察して彼女を別の場所へと移す。ただその後ニアはエクスと同じ意見なのは癪だけどとシャルは両親のツケを支払わされているものではないか、シャルが可哀そうだと……リンはシャルに対してそのようなことを指摘するのは酷だと窘めるも、ニアはその気持ちはわからなくもないけども、自分は親に捨てられただけで親への愛を受けたことも、親へ虐げられたこともない。本当の親がどういうものか理解していないのかもしれないと、リンに対して申し訳ないと思いつつもシャルへは実際どうなのか確かめたい気持ちがあったのだ。


・シャルは幼い頃から両親にコンピューター関係の事を叩きこまれたことは事実だが、自分に手をあげた覚えがなく自分がプログラミングやハッキングを上手くできた時に心から両親は誉めてくれていた。その後両親が悪い事をしていると知っても、その時は倫理観よりも両親に褒められたい気持ちの方が勝っていた。その後今の自分でも今の養父母から受けた優しさがあって今の自分がいる。けれどもたとえ悪い事の為に教えられたとしても自分のテクニックは両親の愛があってこそ身につけられたものだと、実の両親の事を忘れていないし決して恨んでいないと涙ながらに彼女は語る。そんな彼女の様子にニアは彼女へ辛いことを聞いて悪かったと謝りながら、けれどもあたしは理解しきれなくても玲也なら何とかしてくれると励ます。内心ニアは親とはそういうものだろうかと漠然とした思いも抱きながら……。


・その頃オレアンがアリサを逮捕するように警察を総動員していたが、彼女の事情も察するものはあると罪を償わせるようにしたいと考えており、玲也もただで許してもらうようにするのは流石に無理であり、自分にもシャルにも出来ることがあるなら協力したいとのスタンスだった。だがその折オレアンの無線から巨大ロボットに煽動されるように暴徒たちが次々とドラグーン・フォートレスへ向かっているとの報せが入った……この奇怪な事件は一体……だがその機体は生身の景観へも容赦なく衝撃波を放って弾き飛ばしていく。そしてドラグーン・フォートレスに暴徒たちが集まって殴り込まんとする。相手が生身だけに手荒な方法を取ることは出来ない。そして目の前の機体がシャルをこちらに渡せと要求するが、その声の主こそアリサだった。


・なぜアリサが……と玲也達の疑問に答えるようにセントクロスからアリサのシャルを憎む心を利用させてもらったと。彼女が率いる超常軍団は少数精鋭として知られるが、その理由はバグエスパーのパイロットが彼女の手で改造された超能力者であり、先天的な例を除いて彼女の部隊は素質のある子供でなければ改造手術に耐えられない事もあった。彼女は手始めに地球人の子供を拉致して自分の手ごまへ改造して救済させてあげようというとんでもないことを言い出した。それにアリサの強い憎悪の感情が超能力を放たせており、バグエスパー・バグラファールを操るだけでなく、彼女の憎悪によるエネルギー波が電次元側を憎む人々の心を刺激してドラグーン・フォートレスを襲う暴徒として操っていたのだ……

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