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「す、すみませんっ、ありがとうございました」

 人の波に上手く流されながらいくつか目の路地で掴んでいた腕を離した。頭を下げたのはフリルの付いたブラウスが可愛らしい女の子だ。

「いや、こっちこそいきなり腕掴んじゃってごめんね。連れ出して来て大丈夫だった?」

「は、はいっ」

 女の子は下げていた頭を勢いよく上げて言った。

「凄く困っていたので本当に助かりました!! ありがとうございますっ!!」

 ・・・良かった。

 こりゃしつこいナンパにあっているなと確信したから、人混みに紛れて女の子をその場から連れ出していた。だって女の子の顔が本当に困っているように見えたから。とは言え、万が一カップルだったらやベーことしたと思っていたからマジで良かった。あとで男が殴りに来ても文句は言えないし・・・セーフ。

「本当にしつこいナンパで。友達と待ち合わせしていたら急に話しかけて来て。とりあえずその場を離れたくて歩いたら付いてくるし、でもこれ以上遠くへ行ったら友達と会えなくなっちゃうし、どうしようかって思っていたんですけど・・・お兄さんに連れ去ってもらえて本当に良かった」

 その笑顔は女性、と言うよりは少女って感じの可憐さだった。こんなに可愛けりゃナンパの一つや二つ、されても仕方ない。だって皆に自慢したいくらいの美少女だもの。

「でも俺のことは大丈夫なの?」

 ナンパされて嫌な思いをしていたはずだろうに、さらに見知らぬ男に腕を掴まれて連れて来られたのだから。

「や、大丈夫です」

 あんまりにもあっさり答えられた。

「え、なんで」

「だって悪い顔してないんだもん」

 ・・・ふぅ。

 まぁそりゃぁ下心があって連れ去った訳じゃないし、悪い顔をしている訳じゃないけど。そうだからって誰にもついて行っちゃダメだぞ? って俺が言うのも何だけど。

「あー、待ち合わせってこの辺りなの?」

「はい、このお店で」

「・・・君、いくつ?」

待ち合わせ場所は有名な飲み屋だった。ぜひ二軒目に、と自分の店を伝えたのは何も下心があったわけじゃないんです。

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