　ゼリーにピュレムースにと、口触りはやさしくとろふわっと胃にやさしいが、植物質の寒天ではなく、動物質のゼラチンを使っているので満足感がある。

「フルコース風だとすると、次はお肉料理かな」

「そうですね、口直しは一般的にはソルベなので、それだとさすがにサンドイッチのフィリングには向いてませんよね」

「ん……、でも、オリオンさんだったら、何か工夫しそう」

「確かに、奇をてらうわけではないけれど驚きのある、オリオンさんが工夫したソルベのサンドイッチ食べてみたいかも」

「ソルベサンド、気になる」

「そうとは決まってないけれど、ですね」

　私とツキヨノさんは顔を見合わせて笑った。

「あ、もしかすると、タマゴが付き出しのアミューズで、ガスパチョのゼリー寄せはピンチョス風に盛り付ければオードブル、ホタテのピュレババロアは冷静ポタージュ風スープ。そうしたら、次は、お魚料理、ポワソンかも」

「わぁ、ゴージャス！」

　私は思わず声をあげた。

　気軽なスナックのサンドイッチが、フィリング一つでこんなに豪華な料理に変身してしまうとは、本当に、オリオンさんの発想には驚かされる。

　それに、こんな風に、居合わせた人と話がはずむというのにも。

「お魚はこの流れだと、白身魚のポアレ？」

「口直しのソルベはスルーで、お肉料理のアントレは冷めても美味しいコールドチキンかもしれませんね」

「コールドチキンは、どこの国の料理になるのかしら」

「ええ、っと、コールドチキン、コールドミート類は、わりとどこにもあるような気がする。となると、アントレには出てこないかな」

「サラダとチーズはイタリアンかもしれないので、アントレはドイツ? 」

「そうですね、ドイツ料理、まだ出てませんもんね」

「エスニック系はいかが」

「エスニック料理はスパイスが強いから、今回のフィリングには入ってないかもしれませんね」

「ハーブ類の香りは、草の香りだから、そんなに爆発的なにおいではないものね、とくにフレッシュハーブは」

「コリアンダーの香りは強いですけど」

「そっか、コリアンダーも、わりとあちこちの国で、香菜、パクチーとけっこうアクセントにたっぷり使うんでした」

　延々と会話は続いていきそうだった。

　このまま、いくらでも、話せそうだった。

「では、そろそろ、取り分けたいと思います」

「はい、お願いします」

　私は、表面が乾かないように被せておいたキッチンペーパーをとると、フィリングをなるべく見ないようにして皿に移した。

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