きみを離さないよ

月波結

第1話 着信アリ

 彼のスマホの着信を見てしまったのは、彼の部屋にいるときだった。ほら、あの「彼がトイレに行ってる間に……」みたいな? いやいや、わたしはそんなことしないぞと思いつつ、人間、あったら気になりますよね? あの、チャリーンとした音。

「明日の約束、覚えてるよね?」

 約束……? 明日は一緒に映画を見る予定だよね。

「未読かー。まぁ、いいや。あとで連絡してよ」


 かーなーりー、嫌な気持ちになったのは言うまでもない。だって、明日は記念日。なんのって、付き合って一年の。何、他の女と連絡取って約束してんのよ!


「あー、ごめんごめん。……何かあった?」

「別に……」

 背中からふわっと抱きしめられて、そういう優しいところにほだされるわたしもわたし。

あかりがげんきないと心配だよ」

「大丈夫だよ」

「泊まっていける?」

 こくん、とうなずく。女なんて、好きな男の前ではこんなものだ。


 お風呂のあとは酒盛りだった。がくはハイテンションで、わたしが「偽物」と呼ぶ発泡酒を排除して、「本物」だけテーブルに広げてくれた。

「やっぱ泡がちがうよね~、プレミアム」

「ビール好きだよな、灯」

 何度目かの乾杯。

 一口ごとに酔っているわたしに、歯止めがかかるわけがない。生来、隠し事は大の苦手。

「あのさー!」

「うん? ちゃんと、飲んでるよ」

 わたしは絡み酒なのに、この人はとことん酔わない。


「あのさー! さっきLINE入ってましたけど!」

「おお、ありがとう。気がつかなかったよ」

 いや、その場で見られても……。

「あー、連絡しないと。ちょっと、待ってね」

 機械にも話しかけるその懐の深さ(?)。

「えーと……ん? 変換がなかなか……」

「貸してみなよ」

「え!? だめ。これはだめ」

 そんな、怯えたメガネかけたハムスターみたいな顔をしてもダメなんだよ!

「チャリーン」とまたもや着信音が鳴り、岳はスマホに向かう。

「おおおー! 思った通り、さすが西条さん!」

 サイジョウ……聞いたことないし。あーもー、だめ。何も解決しないまま、寝ちゃうなんて……。

「灯ー、寝る時はベッドまで移動してよ」

「んー」

「まったく仕方ないんだから」

 飲んだあとは引きずられる。これ、定番

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