第2話 神か?お前なのか?

「何をいってるんだよ初見。人類は今ここに沢山いるじゃねぇか。俺も人類だし、お前も……多分人類だろ?」

 隣でアイスコーヒーを飲みながら失礼なことを言っているのは、中間白紙なかましろかみ。同じ中野第二新科学研究所で働くNo.3。金髪頭にいつもどこかに寝癖をつけている。どこかおちゃらけた雰囲気で、いつも初見に適当な口を利く、しかしNo.3と呼ばれるだけの人物であり、初見にも負けず劣らずの実績を上げてきている。

「いや、人類は知り尽くした。よって人類は滅亡した、Q.E.D.」

「なに言ってるかわからない。もっと分かりやすく証明してくれ」

「生きることはすなわち知ること、すべてを知り尽くした私たちは生きる糧を失ってしまった。生きる糧のない人類に道などない。だから私たちは滅亡する」

「ほんとにすべて知り尽くしたかなんて誰にもわからないだろ?天野一が宣言したことだって誰も信じちゃいねぇ、お前以外はな」

「私は考えうる全ての事象は証明され、私は全てを知った。だから彼が言っていたことは本当だ」

 人類代表だといわんばかりの初見に白紙は呆れて言う。

「全て知ったとして誰がそれを証明するんだ?神か?それともお前なのか?」

「前者だ」

「は?」

 突然のことに白紙は驚く。初見は無神論者だと思っていた。オカルトも何も信じず、すべて論理で考える初見が神というオカルト中のオカルトについて言ったのだ。

「神は居た。神は人類が全て知り尽くしたことを認めた。今朝のことだ、夢に現れ言ってきたのだ。おめでとうと」

 白紙は初見が真剣な表情で伝えてきたことに驚いた。こんな顔で冗談を言うやつではないことを知っている。しかし初見の言葉は、到底信じることはできない。

「神は今日、世界中に伝えるんだそうだ。全てを知り尽くしたこと。人類が次にすべきことを」

 気怠そうな顔をしながら初見は続ける。

「全てを知り尽くした私たちに神は何をさせるつもりなんだ?」

 彼女の頭を心配しながら白紙は思った。万が一本当に神がいてすべて知り尽くしたことを認めたら。生きる意義を失った人類は何をすべきなのか。

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