0/純真 ②

 それもボクがうっかりあの物語に手を加えてしまったからなのだけれど。あはは。


 ん? いやいや、ボクはそこまで悪くないよ? ボクが手を出したのは、彼らの物語が加速させるという部分だけだ。

 あの二人はどう足掻いても、いずれあの結末を迎えたと思うよ。そもそもの始まりが間違いだったんだ。間違った世界設定。どうしようもない配役ミス。歯車が噛み合わなかったプロット。あの二人の物語は、そういうものだ。


 彼らのことを知ったときに、ボクは思ったんだよ。ああ、早く終わらせてあげないといけない――とね。

 人であれ化物であれ――死に際を見失ってしまっては物語は正しい完結を迎えることはできない。ボクのようにね。


 ボクは世界の物語から弾かれた後も惨めたらしく彷徨っている亡霊だけど、だからこそこの世界に生きる人達の物語をきちんと終わらせる手伝いをしたいのさ。それが変異血種が燻っている物語なら、尚更だ。


 変異血種という存在が定義されたことで、この世界にボクという存在が固定されてもう百年近く経つけど、最近は特に面白い物語がそこら中に転がっている。アハハ、ボクとしては嬉しい限りなんだが、この世界にとっては迷惑極まりないかもしれないね。


 それでも――この世界で〝勇者〟なんてものは存在できないんだよ。そんなもの、魔法という奇跡を起こせる世界にしか存在しない。

 この世界には魔法なんてない。魔法のように見えるほどに発達した科学はあるけどね。


 人間として突然変異を起こしたとしても、世界自体が変異を起こさないと無理なんだ。もしくは――世界そのものに対する突然変異を起こした存在が現れるか。

 人工的に突然変異を起こしたところで、その存在では絶対に世界のシステムには勝てないんだよ。

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