0/純然 ③

 だけれど、彼女がそうだった。


 本来なら、存在してはいけない。

 しかし事実として、存在している。 


 純然たる――変異血種ミュータント


 この世界に偶然生まれ落ちた、純粋なバグ。

 彼女がこの世界から未だに弾き出されていないのは、まさしく奇跡と言っていいだろう。


 彼女はまさしくヒトだ。種として見るのならね。


 けれど同時に――人ではない。

 人と言うにはあまりにも――かけ離れている。


 彼女のことを知ったときは驚いたよ。

 ってね。


 今はまだ未完成だが、あと十年もすれば完成形に近くなるだろう。

 その時にどのような完成形になるのかは――ボクにもわからない。


 人の頂点に立つ者になるのか。

 獣の本性を際限なく発揮するのか。

 はたまた、ボクの予想すらも超越する存在になっているのか――。



 ボクはそれが見たい。

 この世界に否定されて然るべき存在でありながら、自身は世界を否定しない変異血種。

 こんなにも、心躍る存在に出会ったのは人生で二度目だよ。


 だからボクは――彼女に神になってほしいのさ。

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